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「魔王は一体どこにいる」  作者: ジョンG
5/28

5.中立の国

『中立の国』


巨大な港を持つその国は海の向こう側の文化と交流する玄関口だった


多くの商船が停泊し、その中には海賊船も含まれる


陸側からも魔物を寄せ付けないように城塞となっており、その中に暮らす人々は安全に暮らすことができた


盗賊「おい!見えてきたぞ」


騎士「潮の香りがする」


盗賊「そうだな…あそこは陸と海の貿易の中心だ…食事も美味いぞ」


騎士「おぉ!それは僧侶も喜ぶ」


盗賊「まずは商人ギルドで荷物を降ろさないとな」


騎士「例の荷物は?」


盗賊「アレは俺が後で直接輸送船まで持っていく…お前たちは先に宿屋で休め」


騎士「ふかふかのベッドで久しぶりにゆっくり横になりたいよ」


盗賊「まぁそうも言ってられんがな…海賊船が停船してればすぐに仕事だ」


騎士「海賊船も港に停泊するんだ」


盗賊「中立の国では一切の戦闘を禁じられてるから入港できる」


騎士「じゃあ割と安全か」


盗賊「表向きはな?」


騎士「どういうこと?」


盗賊「裏では謀略の嵐だ…エルフ、ドラゴン、トロールの密売、裏切り、暗殺何でもありだ」


騎士「トロールまで密売を…」


盗賊「だが魔物たちを捕まえて何をやっているのかは分かっていない」


騎士「そんなこと今まで知らなかった」


盗賊「商人はその秘密を探ろうとしてんのよ…他言するなよ?」


騎士「分かってる」




『商人ギルド』


盗賊「商隊に加わった傭兵はご苦労!日が暮れる前に給金を貰って解散してくれ」


僧侶「わーいお小遣い貰ったーウフフ」


騎士「意外と良い儲けになるね」


商人「お疲れ様!無事に荷物運び終えてホッとしたよ…今日は宿屋でゆっくり休むと良い」


騎士「そうさせてもらう」


商人「僕はこれから情報収集さ…動きがあったら連絡する」


騎士「分かった」


商人「今の選ばれた勇者の行方も情報集めてみる」


魔女「わらわも連れて行って貰えんか?愛しき人を思うと休んではおれんのじゃ」


商人「それは僕もありがたい…護衛にもなるしね」


騎士「じゃあ…宿屋で待ってるよ」




『宿屋』


僧侶「あーーー疲れたーーー」ドターー


騎士「ずっと馬車に揺られているのも苦痛だね」


僧侶「騎士と二人でいるのもすごく久しぶりな感じーウフフ」


騎士「そうだったね…今日はゆっくり休もう」


僧侶「わたしね?商隊にいる間ずっと考えてたことがあるの」


騎士「なんだい?」


僧侶「この世界はね?元の世界の四、五年前でしょ?」


騎士「実感ないけどね」


僧侶「元の私たちもこの世界にいるはずだから…会ってみたいなーなんてね」


騎士「そうだね…何か変わるのかもしれないね」


僧侶「でも何となく会うこともできないのかな?とか…」


騎士「僕は昔自分に会ったことはないから、何をしても会えないのかもしれない」


僧侶「うん…そう考えると何かを変えるために会いに行きたくなっちゃう」


騎士「今起こってること全部が過去のことだったなんて…なんか信じられないな」


僧侶「うん」


騎士「僕の目的は魔王を探して倒すことだったけど…見失ってしまいそうだよ」


僧侶「本物の勇者も探さないとね」


騎士「だから僧侶にはずっと付いてきてほしい…見失わないように」


僧侶「うん付いていくよ~」


騎士「よし、明日のことは明日考えよう」


僧侶「は~い」




『窓際で…』


僧侶「ねぇねぇ何してるの?」


騎士「街の音を聞いてるんだ…あと匂いもね」


僧侶「何か聞こえるの?」


騎士「ガヤガヤ騒がしい音…匂いも色々な匂いが混ざっててよく分からないよ」


僧侶「わたしも一緒に聴いてて良い?ウフフ」


騎士「良いよ…こっちにおいで」


僧侶「音で大体何があるか分かる?」


騎士「よく分かるよ…でもね、騒がしくて風の音とか聞こえなくなるんだ」


僧侶「だからエルフは人間の町が嫌いなのかなぁ?」


騎士「そうかもね…ほら、あちこちで言い争いの声が聞こえる」


僧侶「本当だーあっちで揉め事…こっちで揉め事」


騎士「エルフは僕たち人間よりも耳が良いから揉め事ばかり聞こえるのはうんざりなんじゃないかな?」


僧侶「エルフを見習わないとね」


騎士「そうだね」



『数日後』


ドンドンと扉を叩く音


盗賊「おい!居るか?」


騎士「盗賊かい?今カギ開けるよ」


ガチャリ


騎士「何か情報入手したのかな?」


盗賊「あぁ海賊船が入港した…今晩作戦を実行する」


騎士「エルフの娘と勇者の行方は?」


盗賊「海賊船は二、三日停泊するからその間に積み込まれるはずだ…勇者の情報はまだだ」


騎士「そうか…まずエルフの娘を助けたいな」


盗賊「わかってる…だから僧侶にも少し協力してもらう」


僧侶「え!?私が?どうやって?」


盗賊「魔女と僧侶二人で酒場で働いてもらう」


僧侶「どういうこと?」


盗賊「海賊たちが酒盛りを始めたら睡眠薬を盛ってほしいんだ…海賊船に戻るまでの時間を稼いでほしい」


騎士「それは魔女と僧侶が危なくないかい?」


盗賊「大丈夫だ…そこは抜かりないから安心しろ」


僧侶「なんかワクワクしてきたーウフフ」


騎士「僧侶…絶対お酒は飲んだらダメだよ」


僧侶「えええええええ?つまんなーーーい」


騎士「君はね、お酒を飲むと裸になる悪いクセがあるんだ」


盗賊「ま、まぁ何とかなる…僧侶は今から一緒に酒場に行くぞ」


騎士「……」(なんか心配だなぁ…)


盗賊「騎士は夜になったら酒場に来てくれ…それまでは待機だ」


騎士「わかった」


僧侶「ワクテカ ワクテカ♪」僧侶はノリノリだった



『酒場』


マスター「いらっしゃいませー」


騎士「席、空いてるかな?」


マスター「カウンターで良いかい?」


騎士「あぁ」


マスター「今日はお店一杯で悪いね…何飲むんだい?」


騎士「マスターに任せるよ」


マスター「じゃあエール酒で…今日は待ち合わせか何かかい?」


騎士「まぁそんなところだよ」


店の奥から賑やかな声が聞こえてきた


(おう!ねーちゃん可愛いなぁウハハ)


(可愛い?可愛い?もっと言って?ウフフ)


(おらぁ海の男だぜぇぇガハハ)


(これ!さわるでない)


(うぉーべっぴんやなぁ?今晩どうや?ガハハ)


騎士は賑やかな酒場の雰囲気に少し気後れしながらカウンターの一角で静かにエール酒を飲んでいた


しばらくして、盗賊が遅れてやってきた


盗賊「よう!待ったか?」


騎士「今来たところだよ」


盗賊「あの二人、上手くやってるな」


騎士「……」(大丈夫かな…)


盗賊「直に海賊の頭がやってくる…入ってきたらすれ違って店を出るぞ」


騎士「分かった」


奥のテーブルからは酒盛りの声がますます大きくなり、笑い声と酔っ払った男たちの叫び声が響いていた


(いいじゃねぇか…少し触らせろよ)


(だめーートランプで勝ったら触らせてあ・げ・る)


(うおおおおおおおお燃えてきたあああああ)


(でも勝負するのはこっちの子ねーーウフフ)


その時、重々しい足音とともに、海賊の頭らしき人物が酒場に入って来た


マスター「いらっしゃいませー」


海賊「よう!久しぶりだな!」


盗賊(来た!行くぞ)…盗賊は騎士に耳打ちした


騎士「マスター、お代はここに置いておくよ」ジャラ


マスター「まいど!!」


盗賊「悪いな…通るぜ?」…盗賊は海賊の頭から何かをスった


騎士「あ、すいません。通ります」


マスター「またのお越しを」


盗賊「上手く行ったな?フフ船長室の鍵だ」


騎士「さすが…」


盗賊「このまま船着場まで行くぞ…付いて来い」



夜の闇に紛れて走る


耳を澄ませることが多くなったせいか


暗闇で見えなくても不思議と何があるか分かる


夜目が利くというのは耳が利くのと同じなのかな




『海賊船』


その船は中型のキャラック船だった


海賊旗は見えないように隠してあるから他の商船と大した変わりはない


盗賊(見張りは二人だ…近づいて片付ける…来い!)ヒソ


練習した隠密で接近し一気に片づける…ゴスン!!ゴスン!!


声を発することなく二人の見張りは崩れ落ちた


盗賊(海賊船に乗れ!)


騎士(誰もいないようだね)


盗賊(俺は船長室で海図を盗んでくる…お前は積荷の状況を見てきてくれ)


盗賊(十分後に後方のデッキに来い)


騎士わかった



船内は静かで、足音が木の甲板に響く


今日はいつもより感覚が研ぎ澄まされている感じがする


次の行動を考える余裕もある…こんなに冷静になれているのは多分


僕は本気になっている…





『積荷室』


そこには木箱が無数に積まれていた


騎士(よし、誰もいない)


騎士(何の荷物なのか…)


騎士(エルフの娘はどこだ?)


騎士(待てよ…震えた息遣いが聞こえる)


エルフのはぁ…はぁ…


騎士(いる!どこだ?)


エルフの娘(あの檻の中か?)


エルフの娘(だ、だれかいるの?)…か細い声で彼女は言った


騎士(エルフの娘!!)…僕は駆け寄った


エルフの娘(た、助けに来てくれたの?)


騎士(心配した…怪我はないか?)


エルフの娘(うぅぅぅうぅぅぅう…こ、こわかった)


騎士(今、助けてやる)


エルフのたすけ…て…うぅぅぅぅ…大粒の涙を零している


ガチャガチャ


騎士(鍵が掛かってる)


エルフの娘(ここから…出して…お願い)


騎士(鍵を探してくる)


エルフの娘(い、行かないで…置いて行かないで…お願い)


騎士(落ち着いて…手を握って)…彼女の手を握った


エルフの娘(怖かった…)


騎士………気高いエルフが怯えてる


エルフの娘(私を置いて行かないで…)…ブルブルと震えている


騎士(必ず助けに戻る!)


エルフの娘(イヤ!お願い!!助けて…)



『後方デッキ』


盗賊(遅いぞ!騎士)


騎士(エルフの娘を見つけたんだ)


盗賊そうか…


騎士(檻の鍵がない…船長室の鍵と一緒になってないかな?)


盗賊(いや…鍵は一つしかない)


騎士(鍵を探さないと…)


盗賊(仕方がねえ…俺が開錠してみる)


騎士(頼むよ…行こう!こっちだ)




『積荷室』


エルフのシクシク…シクシク…


騎士(エルフの娘!迎えに来たよ)


エルフの娘「キシャー!!フー!!フー!!」…エルフの娘は盗賊の顔を見るなり奇声を上げた


騎士(落ち着いて!!盗賊は味方だ)


エルフのはぁ…はぁ…


騎士(大丈夫だ…手を握って)


盗賊(無理もねえ…この子は俺の顔を見ているからな)


エルフの娘(助けて…)…手を握り返す力もないようだ


騎士(盗賊!開錠を頼む)


盗賊(待ってろ…)盗賊はロックピックを取り出し解錠を試みた


騎士(エルフの娘…このクロークを羽織って)ファサ


盗賊(僧侶たちが上手く時間を稼いでくれてると良いが…)


騎士(どうしてそんなに焦っているんだい?)


盗賊(船長室の鍵を酒場にいる船長のポケットに戻さないといけねぇ訳よ)


騎士そうか…


盗賊(くそ!中々開かねぇ…)カチャカチャ


騎士(エルフの娘?立てそうかい?)


盗賊(無理だ…抵抗できないように薬を打たれてる…お前が背負っていけ)


騎士……---陵辱の限りだった訳か---


盗賊(よし!開いた)ガチャン!


騎士(エルフの娘…おいで)…彼女を背中に乗せた


盗賊(少し作戦を変更する!海賊船に火を付ける)


騎士わかった…---エルフの娘が居なくなったのを偽装か---


盗賊(そこら辺の荷物に火を点けろ)…盗賊は持っていた油を撒き火を点けた


騎士(エルフの娘…しっかりつかまってて)…背中で震えているのが分かる


エルフのぅぅぅぅ…ブルブル


騎士(目を瞑ってていい)---火が苦手だったか---


盗賊(よし!行くぞ!お前はそのまま宿屋に行け!俺は酒場に戻る)


騎士わかった…ありがとう




『裏街道』


騎士「エルフの娘…寒くないかい?」


エルフの娘「……」


騎士「早く宿屋に帰って暖まろう」


エルフの娘「……」


騎士「もう大丈夫だよ」


エルフの娘「……」


夜の静かな裏街道を走り抜けながらエルフの娘の沈黙が心に重くのしかかる


(なんて細い体なんだ…)


(掴まる腕から怯えた心が伝わってくる)


(気高いエルフが背中にしがみついている)


(申し訳なくて言葉にできない)


月明かりが薄暗い道を照らし、海の生ぬるい風が吹き抜けていった




『酒場』


バタン!!勢いよく扉が開く


マスター「いらっしゃ…」


盗賊「た、大変だ!!港が燃えている!!」


(わたし可愛い?ウフフーみんなもう寝ちゃうのー?ひっく)


(ぐがががががーぐがががががが…むにゃ)


(もう勝負はやめたいんじゃが…)


(まだだぁぁ!!まだ触ってない!!)


マスター「ど、どうされました?」


盗賊「み、港で船が燃えてるんだ!!ここにいる人たちの船じゃないのか?」


海賊「なんだとぉ!!おい!!お前らぁ起きろ!!」


盗賊「早く消火に行かないと大変なことになる!」


海賊「お前らぁ起きんかぁ!!」…海賊の頭は寝ている者たちに蹴りを入れている


盗賊「俺ぁ人集めてくる…マスターも人を集めてくれ!」


海賊「おぅ悪いな…お前らぁ行くぞ!!」


盗賊「そこの女二人も一緒に来てくれ!!」


僧侶「はーい…ひっく」


魔女「では行くかのぅ…」ノソリ


盗賊(二人は宿屋に戻ってくれ)盗賊は二人に耳打ちした


そう言って盗賊は海賊たちを引き連れ船の消火に向かった




『宿屋』


コンコン


騎士「誰だい?」


僧侶「わたひーウフフ」


騎士「今開ける」カチャリ


僧侶「飲んじゃったーふぁーむにゃ」僧侶は部屋に入るなり横になった


騎士「早く入って」


魔女「おぉエルフの娘を助けてきたのか…良かったのぅ」


エルフの娘「……」エルフの娘は震えている


騎士「魔女…今日はエルフの娘と一緒にいてやって欲しい」


エルフの娘「魔女様…うぅぅぅぅぅ」


魔女「そうか辱めを受けたのじゃの?…おいで…もう大丈夫じゃ」


エルフの娘「うぅぅぅぅぅ」エルフの娘は大粒の涙を零した


魔女「何も言わんで良い…良い子じゃ…戻って来れて良かったのぅ」


騎士「それじゃあ僕と僧侶は向こうの部屋に行くよ」


僧侶「ぐががが…すぴー…ぐががが…すぴー」…僧侶は呑気なもんだ…


騎士「よっこらせっと…エルフの娘の着替えは後で持ってくるよ」


魔女「着替えは部屋の外に置いておくれ…今日はもうドアのノックはせんようにな」


騎士「わかった…じゃあ魔女…頼むね」


エルフの娘が無事で騎士はほっとしたが、彼女にまだ恐怖と悲しみが残っているのが気掛かりだった


(僕が傍にいない方が彼女の自尊心を守る術だと思った)


(そう…エルフは気高い生き物だから)


(人間に弱いところなんか見せたくない筈なんだ)


(これは僕が君にできる会話の一つ)


(君を尊重する)




『翌日』


トントン…静かに扉をノックした


騎士「僕だよ…開けてもらっていいかい?」


カチャリと解錠する音…


騎士「魔女…エルフの娘はどうだい?」


魔女「だいぶ落ち着いたがの…しばらくはショックが抜けんじゃろう」


騎士「うん…エルフの娘…何か欲しいものはないかい?」


エルフの娘「……」


魔女「極度の人間嫌いになってしもうたようじゃな…そっとしておいておやり」


騎士「エルフは確か清潔なものしか身に付けなかったよね?新しい着る物を買ってくるよ」


魔女「そうじゃのう…木の芽や果物も採ってきておくれ…森への感謝も忘れるな?」


騎士「感謝ってどうすればいいのかな?」


魔女「たくさん取りすぎてはイカン…少しずつ摘めばよい」


騎士「わかった…夕方には戻るからゆっくりしてて」




『少し外れの森』


日が差し込む森の中、騎士と僧侶は静かに歩きながら果物や木の芽を探していた


鳥のさえずりが心地よく、風が木々の間を通り抜ける


騎士「僧侶!ちゃんと付いて来てる?」


僧侶「ちゃんと後ろにいるよーウフフ」


騎士「木の実見つけたら教えてね」


僧侶「なかなか見つからないね?」


騎士「木の芽は結構あるんだけどね」


僧侶「エルフってさーお肉とか食べないのかなぁ?」


騎士「少しは食べるらしいけど生きた肉だけっていう話だよ」


僧侶「そうなんだー…そういえば気球にいる間も何も食べてなかったね」


騎士「あ!アレはリンゴかな?」


僧侶「おおーやっと見つかったね」


騎士「よし!一個だけ持って帰ろう」


僧侶「リンゴさんに感謝しないとねー」


騎士「じゃあ…次は着替えを見に行こう」


僧侶「わたしが選ぶーー♪」


騎士「植物製の清潔なやつを選んでね」


僧侶「え?どうして?」


騎士「エルフは匂いとか気にするらしい」


僧侶「匂い?」


騎士「うん染料の匂いとかも嗅ぎ分けるから無色がいいかな」


僧侶「なんかめんどくさいねー」


騎士「でもそれがエルフの自尊心にもなってると思う」


僧侶「そっかー繊細なんだねエルフって」


騎士「人間よりもずっと賢くて繊細なんだってさ」


僧侶「ねぇ…わたしっておバカさんかなぁ?」


騎士「どうして?」


僧侶「昨日海賊さんに『お前バカか?』って何回も言われたの」


騎士「ええと…まぁ大丈夫だよ」


僧侶「ねぇ…今言葉に詰まってない?」


騎士「つ、詰まってないよ」


僧侶「なんか詰まってるーでもまぁいっかーウフフ」





『街道』


石造りの道…石造りの建物…そして見上げるような石造りの城


この街道は城へ向かって続く道で、その両脇に店が立ち並ぶ


騎士「中立の国はお店が多いね」


僧侶「見て歩くのたっのしーーいウフフ」


騎士「なるほど商売の中心地かぁ…」


僧侶「お城の隣にある建物は何かなぁ?」


騎士「図書館らしいよ」


僧侶「へぇー興味ないカモー」


騎士「ハハそう言うと思ったよ」


僧侶「船着場にはいろんな形のお船があるんだね」


騎士「そうだね…どれが海賊船か見分けがつかないね」


僧侶「ねぇねぇこれだけたくさんの石ってさぁどこから持ってくるのかなぁ?」


騎士「石?…建物のことかい?」


僧侶「うん」


騎士「んー人が運ぶんじゃなくて船で運ぶんじゃないかな?」


僧侶「船で運ぶのかーちょっと納得ーウフフ」


騎士「ほら砂漠の町は石造りの建物はなかったよね?…きっと船で運べないからだよ」


僧侶「船ってすごいねー」


騎士「そうだね…いろんなものを運ぶんだろうね」



---そう…人も荷物も…夢とか希望とか…そういうもの全部運ぶんだと思うよ---




『宿屋 魔女の部屋』



騎士「戻ったよ」


魔女「早かったのう」


騎士「ほら…着替えと食事を持ってきたよ」


僧侶「私も入っていい?ウフフ」


騎士「僕は向こうの部屋に行ってるから…じゃあね」



---少しは元気出るかな---




『数日後_酒場』


盗賊「よう!騎士!!探したぜ?」


騎士「あぁ盗賊か」


盗賊「二人でお楽しみ中悪いんだが邪魔するぜ」


僧侶「ウフフ~みんなで楽しく飲もう~なんてね~」グビ


盗賊「おう!マスター一杯頼む」


騎士「それで何か分かったことが?」


盗賊「いやな?例の海図のことなんだが…あまり期待した航路はなかったようだ」


騎士「期待した?」


盗賊「あぁ…商人は裏航路があると読んでたみたいだがな」


騎士「んーよくわかんないな」


盗賊「始まりの国と海賊の癒着は前から分かってたんだが…積荷の運搬先がよく分からん訳よ」


騎士「それで裏航路があると?」


盗賊「海図に記されてたのは普通の航路と幽霊船の出現場所しかなかった」


騎士「幽霊船ねぇ…」


盗賊「まぁ海賊も幽霊船には関わりたくないんだろう」


騎士「それでこれからの予定は?」


盗賊「おうそうだ…勇者の情報も少し入った」


騎士「おぉ!!」


盗賊「三ヶ月前までここにいたらしい…終わりの国へ向かったそうだ」


僧侶「なんか近づいてるね?魔女に報告しなきゃ…ウフフ」


盗賊「五日後に商船が終わりの国に出航するからみんなでそれに乗る」


騎士「商人の目的は?」


盗賊「この間のドラゴンが何のために運ばれたのか調査したいらしい」


騎士「そうか…みんな利害が一致してるわけか」


僧侶「でもエルフの娘はどうするの?」


騎士「本当は森へ返してあげたいけど…一人で帰すのは危険だなぁ」


盗賊「しばらくは同行するのが安全ではあるんだが…」


騎士「魔女に相談してみるよ」


盗賊「それがいい」


僧侶「終わりの国ってどんな所?」


盗賊「まぁ軍事国家だな…ここよりは住みにくい」


騎士「確か魔王軍と戦争中だとか?」


盗賊「うむ…魔物の襲撃をよく受けているらしいが目の当たりにしたことはない」


僧侶「危なくないの?」


盗賊「今まで何度も行ってるが危険な目には遭って無え」


騎士「ドラゴンの子がどうなっているか…か」



---ドラゴンの子もエルフの娘と同じように怯えていた---


---確かにどうなって居るのか気になるな---




『宿屋』


宿屋に戻り魔女に勇者の行方について情報が入った事を伝えた


魔女「おおおおおぉぉ…それはまことか?愛しき人に近づいておる…」


騎士「五日後に船で終わりの国へ向かう」


エルフの娘「……」エルフの娘はうつむいている


騎士「それでエルフの娘…本当は君を森へ帰してあげたいんだけど」


エルフの娘「……」


騎士「君を一人にはしたくないんだ…その…しばらくは一緒に来てもらえないか?」


僧侶「私からもお願~い」


騎士「もう君を危ない目には遭わせたくない…一緒の方が安全だし」


エルフの娘「……」


騎士「必ず森へ返してあげる…これは約束だ」


エルフの娘「私は…」


騎士「うん…」


エルフの娘「魔女様の愛の行方を確かめる…」


僧侶「やったぁ♪」


騎士「おぉありがとう!!」


魔女「エルフの娘や…わらわのために本当にすまんのう…」


エルフの娘「人間の愛が…本当はどんなものなのか確かめたい」


騎士「そうだ!!すぐ近くに小さな森があるんだ…明日少し外に出てみないか?」


エルフの娘「……」エルフの娘は窓の向こうを眺めた


僧侶「いこ~いこ~明日良い天気になると良いね~ウフフ」




『翌日 小さな森』


鳥たちがさえずり仲間を呼んでいた


僧侶「ねぇ見て見て~森の中にいるエルフの娘ってさ~すごく綺麗~」


騎士「そうだね」


僧侶「天使みたいだね…でもなんかもの悲しそう」


魔女「森の声を聞いているのじゃよ…鳥や蜜蜂たちは噂を運んでくるでのう…」


僧侶「わたしも聞いてみたいな~」


魔女「耳を澄ませば聞こえてくるぞよ?」


僧侶「何て言ってるのー?」


魔女「何か騒いでおるな…わらわにはそれくらいのことしか分からん」


僧侶「すご~い鳥たちがエルフの娘を囲んでる~」


騎士「鳥たちもエルフの娘の心を分かって居る様だよ…あれは励ましているんだ」


魔女「そのようじゃのう…」


僧侶「ねぇ帰りにさぁ…道沿いの教会に寄っていってみようよ?」


騎士「あぁ良いよ…行ってみようか」



---エルフの娘は空気を使って会話をしてこなくなった---


---心を閉ざしてしまったかな---





『教会』


どこにでもある教会だった


僧侶は教会に所縁がある…なぜならそこで生まれ育ったからだ


司祭「生けとし生けるものみな神の子…わが教会にどんな御用かな?」


僧侶「司祭様…お祈りに来ました~」


僧侶は教会の中央に立ち、両手を合わせて祈りを捧げた


"私が幸せでありますように


"私の悩み苦しみがなくなりますように


"私の願いごとが叶えられますように


"私に悟りの光が現れますように


"私の親しい人々が幸せでありますように


"私の親しい人々の悩み苦しみがなくなりますように


"私の親しい人々の願いごとが叶えられますように


"私の親しい人々に悟りの光が現れますように


"生きとし生けるものが幸せでありますように


"生きとし生けるものの悩み苦しみがなくなりますように


"生きとし生けるものの願いごとが叶えられますように


"生きとし生けるものに悟りの光が現れますように


司祭「慈悲の祈りは心を癒す力…迷える者は祈りを捧げ心を癒して行くと良い」


司祭「その癒しこそ諸々の罪を清め祓う術であると心得よ」


僧侶「は~い」


エルフの娘「……」


エルフの娘は黙って祈りを見守っていた




『宿屋』


魔女「んん??テーブルに一輪の花が活けてあるが…」


魔女「エルフの娘が活けたんか?」


エルフの娘「違う…」


魔女「誰が活けてくれたのかのう?」


エルフの娘「……」エルフの娘は花を見つめた


魔女「この花の花言葉は『いたわり』じゃ」


魔女「騎士がそれほど気が利くとは思えんが…まあ誰でも良いが気が利くのう…」


エルフの娘「……」エルフの娘は黙ってその花を食べ始めた


魔女「むむ!!それを食するのかえ?」


エルフの娘「……」パク モグ ただ食している


魔女はこう思った


この花の送り主は恐らく騎士じゃろう


大事に持つのは自尊心に傷が付く故に食する…なんとも奥ゆかしい


これもエルフの表現の一つじゃな…行為を自分の中に受け入れたのじゃ




『数日後_商船』


その商船はスクーナーと呼ばれる高速船だった


浅瀬を航海できるため沿岸部の商船に用いられることが多い


僧侶「わ~いお船だぁ♪」


盗賊「さぁ乗った乗ったぁ!」


商人「この船は僕たち以外は乗ってないからくつろいでもらっていいよ」


騎士「エルフの娘…大丈夫かい?魔女から手を離さないでね」


エルフの娘「……」言われた通り魔女から離れないでいる


商人「あと五分で出発するよ」


騎士「盗賊!?もし海賊船に襲われたらどうなる?」


盗賊「ヌハハそれは心配ない…海賊船よりもこの船は早い」


商人「そうだよ…まぁその分甲板も狭いし荷物も少ないんだけどね」


僧侶「ねぇ?終わりの国まではどれくらいで着くの?」


商人「七日くらいかな…まぁゆっくりしてもらっていいよ」


僧侶「あ!気球も積んでるんだ…小さいけど…」


盗賊「まぁね…逃げ道はいつも用意するようにしてるんだ」


騎士「逃げ道って…」


盗賊「万が一だよ…ハハ心配しなくてもいい」


盗賊「さぁ!!碇を上げるぞ!」


僧侶「出発!!しんこーーう!」ビシ




『商船 1日目』


騎士「ん??何だこれ?」


盗賊「んん?そりゃ貝殻だ」


騎士「それは分かってる…いつの間に僕の荷物に入ってるんだろう…」ハテ?


盗賊「耳に当ててみろ…海の音が聞こえるぞ」


騎士「海の音?」


耳に当てて聞いてみた


確かに遠くから海の深淵が聞こえる気がする


なんだこの感じ…


海じゃないな…空間の向こう側が聞こえる感じだ


分かった…これは耳を澄ませて聞いてくれっていうメッセージだ


エルフの娘を目で追った…そっぽを向いてる


このメッセージにどう答えれば良いんだろう…




『商船 2日目』


盗賊「おい騎士!!また貝殻の音聴いてるのか?」


騎士「あ…あぁ…どうして海の音が聞こえるのか考えてたんだ」


盗賊「ヌハハお前は馬鹿か?海の音がするってのは迷信だ…そりゃ貝殻の中に響く自分の音だ」


騎士「自分の音?」


盗賊「貝殻から連想するのは海だろ?だから海の音と言われてる」


騎士「そうだったんだ…」


盗賊「暇ならたまには船の操作を手伝え!」


騎士「あ…うん」


盗賊「俺の他に働けるのはお前しかいないんだ!」


騎士「わかったよ」


自分の音か…そうか…深淵から連想するのは恐怖だ…


僕からはそういう音が出ているのか…


エルフの娘に恐怖を与えてしまってるんだ


どうすれば音を変えられるんだろう…





『商船 3日目』


商人「…ということだよ」


騎士「じゃあ今まで運んだ物を組み立てたとすると?」


商人「始まりの国は巨大な拘束具、終わりの国は大砲、機械の国は恐らくロボット」


騎士「戦争のため…かな?魔王軍との」


商人「それが少し変なんだ…終わりの国は魔王軍と戦争中と言われているけど…」


騎士「けど?」


商人「それを見たという人が極端に少ない…というかいない」


騎士「勇者たちが食い止めているとか?」


商人「その勇者たちも帰ってきた人がいない…おかしいと思わないかい?」


騎士「確かに…」


商人「だから僕は本当はどうなのか知りたいんだ」


騎士「魔王城に行けば分かる…か」


商人「でもその前に知りたいのがドラゴンのことだよ…確かにドラゴンは終わりの国へ送られてる」


騎士「謎ばかりだね」


商人「同じように捕えられたエルフたちもどうなってるのかが分からない」


騎士「エルフたちは始まりの国に送られてるんだっけ?」


商人「全部を把握してるわけじゃないけど…多分そうだと思う」


僧侶「ねぇねぇ!!船の下に何かいるーー!!」


盗賊「なぬ!?」ドタドタ


騎士「え!?何だろう…」


盗賊「おいおいおいおいおい…くそデカイ影が下にいるぞ!!」


商人「クラーケン!!これはまずいかも…」


盗賊「俺ぁ気球の準備をしてくる!!」


魔女「慌てんでもよい…エルフの娘が落ち着いておる」


商人「海賊船が良くクラーケンに襲われてるって…もしかして…」


僧侶「船の下を行ったり来たりしてるーー」ソワソワ


騎士「この船を襲う気は…ない…のか?」


商人「魔女の言う通り少し様子を見よう」


確かに…感覚の鋭いエルフの娘は落ち着いてる


商人「ふぅぅぅ去っていった…これはやっぱり…」…商人はブツブツ独り言を始めた


僧侶「あ~また始まった~ブツブツた~いむ!ウフフ」


盗賊「まぁ何もなくてよかったな…ヒヤッとしたぜ」


騎士「エルフの娘すごいな…クラーケンの心も読めるのかい?」


エルフの娘「……」…そっぽを向いている


魔女「エルフの娘だけではなくクラーケンもエルフの心を読んでると思うがのう」


商人「そうか!!だから始まりの国は自国の船じゃなく海賊船で運搬しているんだ!!」


盗賊「商人!うるさいから向こうで考え事してくれ!」


商人「わ、わかった…すこし考えてくる」


騎士「ハハ…なんかいつもの雰囲気だねアハハ」





『夜』


月の光が海面に反射し、静かな夜の海に幻想的な輝きをもたらしていた


エルフの娘はデッキに立ち、遠くを見つめている


魔女「エルフの娘や…また黄昏ておるのか?今日は月が綺麗じゃのう」


魔女「慈悲の祈りは心を癒す力じゃ…月に祈るのもよかろう」


魔女「祈りは魔法にも通じておるで…魔の才を開花させるやも知れぬ」


魔女「主は心に傷を負ってしまったじゃろうで…祈りで心を癒すがよかろう」


魔女「主なら既に分かっていると思うが…主を心配し想う者もいるのじゃぞ?」


魔女「今宵の月がすべて洗い流してくれると良いな…」


魔女「どうか心が癒えると良いのう」ノソノソ


心を洗ってくれるかのような波の音が


優しく船を包んでいた


ザブン ユラ~リ





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