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9 意外と綺麗だったパンドラ城

次の日志麻ちゃんが健人けんと君と一緒に迎えに来てくれた。


久しぶりに見た志麻ちゃんの弟の健人君は大きくなっていて、「大きくなったねー」というと、


「はるさん、俺もう21」と言われた。


ばあちゃんから、


「すぐ帰ってきんしゃい、次は男、連れてき。年下でも年上でもいい男ならなんでもよか。なんならいい女でもよかたい」と言われ、母親から準備された総菜や日用品を車に積み込んだ。


ばあちゃんに、「またね」と言って、こっそりおこずかいを渡した。


ばあちゃんはニヤリと笑って、「今度倍にして返しちゃる」と言うとぎゅーっと抱き着いてきた。


ぽんぽん、とばあちゃんを抱きしめて志麻ちゃんと私が車に乗ると、ばあちゃんは、


「うちも、今日は出かけるけね、はるさんまたね。志麻ちゃんもけんちゃんもまたきなっせ」と言って手を振った。


志麻ちゃんからは「むっちゃんのばあちゃん最高よね」と言われ、「うん」と返した。


ばあちゃんは、共働きの両親に代わって私の面倒をよく見てくれた。

幼稚園の送り迎えから、小学校の授業参観はほとんどばあちゃんだった。


昨日、ばあちゃんとすごした事を志麻ちゃんに話しながら、ばあちゃんがイケメン好きな話しをした。ばあちゃんのイケメンのタイプはヒュー・ジャック〇ンと話すと、志麻ちゃんは、


「おー、いいねー。私も好きー」と言った。


写真で見る限り、死んだじーちゃんはイケメンではない(ヒュー・ジャック〇ンには少しも似ていない)が、ばあちゃんと死んだじーちゃんは大恋愛の末結婚したらしい。


私が産まれる前にじーちゃんは亡くなってるので、ばあちゃんからの一方通行の話しにはなるが本当だと思う。仏壇に毎日花を飾るばあちゃんは、いつもじーちゃんに何か話しをしている。


そんなばあちゃんは台風みたいで、太陽みたいで無敵だ。


志麻ちゃん達と、ばあちゃんに聞いたばあちゃん武勇伝を話していたらあっという間にアパートに着いた。


健人君の運転で45分程だった。アパートから病院まではバスと徒歩で15分程。割と近い。今後通院の事を考えると、やっぱり実家よりアパートの方が都合がいいし、会社も近い。


健人君が荷物を下すの手伝ってくれて、私は久しぶりの我が部屋(パンドラ城)のカギを開けた。部屋は籠った空気でもわっとしたが思ったよりも綺麗だった。母親がやっぱり掃除したのだろう。恥ずかしいけど、素直に感謝をする。


健人君はこの後バイトとの事でお礼を言うと、すぐに帰って行った。お礼を何か渡そうとわちゃわちゃしていたら、志麻ちゃんから、「もうやってるからいい」と言われた。



「さて、とりあえず、空気入れ替えて、部屋のチェックして、掃除するから。むっちゃんは邪魔にならない所でなんかしてて」



志麻ちゃんからそう言われ、私はそそくさとベットの上に乗り、仕事の資料や、保険の資料を並べると、「宜しくお願いします」と言って退避した。シーツは取られ、布団も干すと言われたので、マットレスの上に大人しく座っている。


志麻ちゃんは手際がいい。ぱぱぱと片づけて、何がどこにあるか、書き出してくれる。写真撮ったりして分かりやすくしてくれたりする。片付けアドバイザーなのかな?いや、天使だった。


ただ、志麻ちゃんより一つだけ私の方が出来るのがお菓子作りだ。今はこの腕で、役にはたたないが。腕が治ったら志麻ちゃんの好きなお菓子を焼こう。本当私はポンコツだ。


そんなことを考えつつ、会社の仕事のスケジュールを組んだり、リモートワークの方がいいのか考えたりしていた。松葉杖でそれなりに動けるが、どれくらい動けるか一度会社まで試しに行った方がいいかな、と考えたりした。


腕のギブスが取れる方が先で、足はもう少しかかるようだ。足が蒸れて切ない。臭くなってないかな、と匂いを嗅ぎたくなったが我慢した。


そうこうしていると、あっという間に昼になり、二人で母親が持たせてくれた総菜を食べた。明日の朝の分まで余裕であるので明日二人で近所のスーパーに行くことにし、今日は片付けと掃除に専念をする。


志麻ちゃんは、ついでとばかりに、シンクの水垢、換気扇の掃除、トイレ、風呂、玄関やベランダの掃除までしていく。


洗濯が終わった後は、洗濯槽の掃除までしていた。


「どうせ、その腕じゃ、しばらくちゃんと掃除出来ないんだから、出来るときにやっといたがいいでしょ」


と言われ、「志麻ちゃん。好き」と言ったらデコピンされた。


夕方になり、しっかり綺麗になった部屋で、志麻ちゃんに頭もガシガシ洗ってもらってすっきりした私はご機嫌であった。二人で母親からの総菜ご飯を並べて置き、麦茶で乾杯をし、もしゃもしゃと食べだした。


お惣菜は沢山あり、タッパのままお互いつついて食べた。おにぎりと稲荷はばあちゃんが作ってくれていた。


すごい塩辛いおにぎりに当たり、志麻ちゃんから笑われて一口食べさせたら、志麻ちゃんも急いでお茶を飲んでいた。塩辛いおにぎりは一つだけで、ばあちゃんがわざと作った気がする。ニヤリと笑うばあちゃんが目に浮かんだ。


和やかにご飯を食べてたら志麻ちゃんがこっちをじっと見た。



「で、高木の事だけど」



唐突に志麻ちゃんがしゃべりだす。私は来たと思い、ごくん、と口に入っていたおかずを飲み込み志麻ちゃんを見た。









この作品を見つけて読んでくれてありがとうございます。m(__)m☆☆☆彡


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