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8 意外と短かった私の脚

退院日は予定通りになった。


通院予約もし、リハビリの手続きもした。父親が荷物を持ち、先生や看護師さん達に挨拶をして病院を出た。


久しぶりの実家は、ただいま、というより、おじゃましますという感じがして、私のパンドラの箱の部屋がもう私の城なんだな、と思った。玄関開けるとばあちゃんが仁王立ちをしていた。



「遅かったやないね。はるさんおかえり」



「ばあちゃんただいま」



ばあちゃんに挨拶をして、私は家にあがった。



「じーさんに線香あげんしゃい。じーさんも心配しとらっしゃったやろ」



と、言われ、線香をあげ、チーンと鳴らして手を合わせた。


母親は仕事で、父親も午後から仕事に行くとの事で、私は物置になりつつある自分の部屋でのんびりすることにした。


まあ、ゆっくりできればよかったのだが、私の部屋にばあちゃんがいる。普段、ばあちゃんは地域のコミュニティーセンターに出かけたり、温泉に行ったり(町の巡回バスで行く)、友人のダンスを見に行ったり(ハワイアンダンスや、おばあちゃんたちのヒップホップ)短歌や俳句を聞きに行ったりもして毎日出かけている。でも今日は私が退院するからか、家にいた。



ばあちゃんにもすごく心配かけたので、ばあちゃんが私の部屋に入ってきても文句は言えない。


そしてばあちゃんはずっとしゃべっている。私はばあちゃんと二人の時間をすごした。



「嫁入り前なのに、ケガしてくさ、大丈夫なんね。はるさん、誰が貰ってくれる人はおらんとね?志麻ちゃんが、よー電話してくれよったごたああるけど、はるさんもいい年なんやけ、男の二人や三人、つれてこんね。志麻ちゃんは彼氏がおるち、この前いいよったが。年上の、イケメンっち聞いたが結婚せんのかね」



「ほー。連れてくる男の数多くない?」



「だいたい、はるさん、なんしよったと。爆弾抱えて走ってからくさ。はるさん、あんぽんたんやが。抱えて走るんは、体の大きい人にまかせればよかとよ。爆弾よりもさ、はよ、ひ孫の顔みせちゃらんね。爆弾もっとーより、ひ孫がよかよ。それよりたい、近くに他の男の人はおらんかったんね。はるさんより足がはやかろーもん。はるさんが五歩出す間に、男やったら一歩やろ。田中さんとこの孫さんは190センチもあるげなよ。アメフトばしようち、言いよった。田中さんの孫さんが走ってから、ぽーんと爆弾ほったらよかったかね」



「いや、普通に投げたらいけんやろ。爆発するんやない。田中さんの孫さん、大きいけど、危ないやろ。それに私、そこまで足短くないよ」



「いいや、はるさんはきよしさん似やけんね。足は短かかろ。絡まる心配なか。サダさんちの犬が足が短い犬やったが、あんなかんじたい。よー似てらっしゃとーよ。それよりくさ、はるさん、風呂とか、入れるとね、足やら腕やらおおごとなっとっが。うちが洗っちゃろうか」



「サダさんちの犬はダックスフンドよね、可愛いけどさ。あそこまで足短くないやろ。私似てる?喜んでいいのかな。父さんもそこまで足短くないよ。母さんが長いんよ。サダさんちより、せめて佐々木さんちのマルチーズにしてよ。お風呂はねー、ビニールかぶせて濡れないようにして、シャワーを浴びるよ。大丈夫よ」



「佐々木さんとこのシェリーはこの間子供産んだとよ。はるさん、シェリーに負けとうばい。3匹生まれて、貰い手がもう決まったっち言いよったが。はるさんどうするとね、シェリーの子供にも負けるばい。はるさんも、はよ産みなっせ」



「おー、シェリーやるね、ママになったんや。子犬、可愛いやろーねー。ていうか、私、シェリーの子供にも負けるの?まあ、まだ子供、産む予定はないけど」



「うちが、産めたらいいんやけどね。ちょっと無理ごたあるけね。じーさんもはよ、はるさんの子供見たかろ。男でも、女でも、どっちでもええが。でも、女のが育てやすかろか。男は体が弱いけねえ。まあ、はるさんの子供ならどっちでもよかよ。ちょこんとついっとってもついてなくても、かわらんたい」



「おー。ばあちゃんが産んだら、今さらおじさんかおばさん出来るのびっくりするわー」



ばあちゃんが持ってきたお茶を飲みながらばあちゃんと話す。


一度ばあちゃんは私の部屋を出て、リンゴを持って来た。



「はるさん、食べなっせ」と言ってばあちゃんが剥く。



二人でシャクシャク食べながらドラマを見る。


うん、平和だ。


ばあちゃんとその日一日ダラダラすごした。昼ご飯を食べてからは、また一緒に海外の刑事ドラマをみた。



「この人、死にっしゃるんやない?」



バンっ銃で撃たれて刑事が倒れた。



「そっ。ほら、やっぱり、死にっしゃった。どーするとかねー。おおごとやが」



犯人が刑事に捕まるシーンで、ばあちゃんは目をキラキラさせた。



「はるさん。こげなイケメン近くにおらんとね。ハローとか言ってくさ、つれてきんしゃい」



「うち、この人がいいがあ。男前やねえ。ほら、はるさん、この人にしとき」



ばあちゃんの海外ドラマの感想聞きながら、一緒に一気に2話見たところで、ばあちゃんは日課の散歩に行った。


志麻ちゃんには無事に退院し、実家に着いたとメッセージを送った。


あれから志麻ちゃんからのメッセージは来てなかった。私も高木君のことは気になるけど、時間が経つと少し落ち着いた。志麻ちゃんの言う通り、私は気にしすぎかも。


ただ、当時、本当に怖かった思い出がまだ、消化できてないんだろう。いつか、すっきりするのかな。



この作品を見つけて読んでくれてありがとうございます。m(__)m☆☆☆彡


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