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爆弾に吹っ飛ばされた私の着地の仕方  作者: サトウアラレ
番外編

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番外編 高木君の悩み2 高木君視点 

わりと早い時間に居酒屋を出た後、俺は二人と別れ考え事をしながら歩いて帰った。


武蔵に聞いてみろ、かあ・・・。


なんて聞いたらいいのかな。


(俺、消防に勤めているけど、武蔵は俺と家族になっても大丈夫?)


(え、無理)


うわあ、どうしよう。落ち込むどころの話じゃない。返事次第で地面にめり込むぞ。


(武蔵、家族の中に消防隊に勤めている奴がいるのはどうかな?)


(うーん、心配だから、ちょっと・・・)


ああ、駄目な予想しかつかない。


あーでもない、こーでもない、と歩いていたら、武蔵から電話が掛かって来た。



「もしもし?高木君?」


「ああ、どうした」


「ううん。新しいカフェが出来たから、今度一緒に行こうかと思ったのと、あれ?、今、外?」


「ああ、先輩と外で飯食ってた。かおるこさんとも会った」


「え?そうなんだ」


俺は近くの公園に入り、ベンチに座った。


「今、電話大丈夫だった?」


「ああ、今、駅近くの公園で一人だから」


「本当?うーん、高木君時間あるなら少し会えるかな?」


「ああ。じゃあ、武蔵ん所まで行く。明日は休みだから」


「大丈夫?気をつけて来てね」


俺は電話を切ると、武蔵の家までダッシュで行った。こういう所が早瀬から犬って言われるのかな。でも、武蔵から呼ばれたら一秒でも早く会いたい。



***



ダッシュで武蔵の家のベルを鳴らすと、武蔵がすぐに出迎えてくれた。


「いらっしゃい、高木君」


「おー、おじゃまします」


武蔵の家に入ると、甘い匂いが迎えてくれた。


「夜に大丈夫だった?明日、鈴木さんの誕生日なの。それで鈴木さんからのリクエストでフィナンシェを焼いたの。沢山作ったから、良かったら高木君もどうかなって思ったんだけど、急にごめんね」


俺の定位置になった場所に手を洗って座ると、そこには美味そうな焼き菓子が置いてあった。


「おー、美味そう。鈴木さんのおかげで俺も食べれるな。コレ全部食っていいの?」


「うん、召し上がれ」


俺はコーヒーを選ぶ武蔵を見ながら焼き菓子を一つ摘まむと口に入れた。


「美味い」


「良かった」


にこりと笑う武蔵が可愛い。



「コーヒーも淹れるね。ちょっと待って」


「ん」


俺はじっと武蔵を見て、ああ、幸せだなと思った。余計な事聞いて、気まずくなるのは嫌だな。でも、かおるこさんも先輩もちゃんと聞けと言っていたな。


ゴリゴリゴリ。


武蔵がコーヒーを引く音が聞こえる。


いい匂いだな。


コポコポコポ。


お湯を落としてコーヒーのいい匂いがする。



「なあ、ちょっと聞いて欲しいんだけど」


「なあに?」


武蔵がコーヒーを淹れ終わってカップを俺の前に置いてくれたタイミングで俺は聞いた。


「あのさ、武蔵は消防隊の人間が家族にいるのは嫌か?」


武蔵は黙って俺を見る。


「俺と家族になるのは嫌かな?」


「うーん、ああ、成程」


武蔵は俺の眼をまっすぐ見て頷いた。ああ、怖いな。


「えっとね。嫌じゃない。でも心配。心配をするのは辛い。でも、嫌じゃない。高木君は私が嫌かと思って不安なのね?」


「うん」


「高木君が家族になるのは嬉しい。うーん、変な事聞いていいかな?」


「うん」


俺は一生懸命頷く。


「あのね、私、結婚式に行ったりして、自分の結婚の事考えたりしたの。その時に大体、女の人の方が苗字変わるじゃない?私も多分、そうなんだろうなって思った時に、今までの自分の苗字が無くなる怖さみたいな感じがしたの。距離的に家を出るとかじゃなくて、戸籍から自分が出るのね。その時になんだか怖さみたいなものを感じたのね。で、それでもこの人と一緒になりたいって思った人と結婚するんだろうな、って思ったの」


「うん」


「でもね、相手はどうなんだろう?って思ったの。相手は苗字が変わるわけでもないし、自分の家と繋がりが切れないよね?迎える訳だから。勿論私の両親も今迄通りなんだけど、なんて言うのかな。今迄の家族から物理的な距離だけじゃなくて私は出ていくんだよね。だから、私は苗字変えてもいいって思ってくれるような人と結婚したいと思った。変えなくてもいいんだよ?でも、そんな風に私の気持ちを考えてくれる人がいいなって思ったの。だから高木君が不安に思ったのも分かる。私は高木君がどんな職業でも、高木君が胸張って仕事しているなら尊敬するし、応援するし、心配する」


「うん、俺、苗字変えていい」


「あれ?高木君、ちゃんと考えなきゃ駄目だよ。騙されちゃうよ」


「うん、武蔵になら騙されて良いし。俺が幸せならそれは騙されてない」


俺は武蔵の肩に頭を置いた。


武蔵はよしよしと頭を撫でてくれる。


「なんか、ごめんね。重たい話な上に細かい話で。馬鹿みたいな事かも知れないけど結婚の手続きとか、私、仕事でしてるとね女の人の変更手続きが多いんだよね。で、結構大変なの。地味に。話を聞くと免許とか、銀行とか保険とか他にも手続きが一つずつあるんだ。それを女がやって当然のように思ってる男の人達も見てて、たまに男の人が変更手続きで持ってくると馬鹿にしたように言う男の人がいてね。ちょっとモヤモヤしちゃったの。ごめんね」


「ううん。いい。武蔵が将来を考えているだけで、俺幸せ。武蔵、好きだ」


「うん、私は高木になっていいんだよ。でも、相手も武蔵になる覚悟がある人がいいなって思った」


「いいよ、俺、武蔵で。強そうだし。俺んところ男ばっかり三人兄弟だし、いいと思う」


「うん、その時は私がしっかり高木君を下さいって親御さんに頭下げに行くよ。絶対幸せにしますってお願いしに行く。高木君の人生貰うって覚悟で私もちゃんと頭を下げるよ。そう思うと、男の人もそうやって覚悟決めて挨拶に行くのかな。じゃあ、やっぱりどっちがとか、無いんだよね。でも、お互いの立場に立てる人がいいな」


「武蔵、恰好良いな。俺、貰って欲しい。でも俺が武蔵を幸せにしたい。俺は武蔵が笑ってくれるように頑張る」


「ううん、格好良くないよ。面倒な性格だなって思うよ。でも、高木君がそう思ってくれるだけでいいよ。まだすぐに結論は出さなくていいよ。しっかり考えてくれるだけで嬉しいの。当たり前のようにされたくないなって言う、我儘かな。聞いてくれて有難う。高木君は優しいね」


「俺は武蔵がいればいい。あー。俺、幸せ」


「私も」


俺はしばらく武蔵に頭をよしよし、と撫でられて二人でその後少し冷めたコーヒーを飲んだんだけど、あれ?プロポーズはオッケーって事だよな?あれ?俺がされたの?と一人でニヤニヤが止まらなかった。







今後もゆっくり番外編を投稿致します。


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