番外編 高木君の誕生日プレゼント3
クッキーが焼き上がり、部屋の中は優しい甘い匂いに包まれた。
ブラウニーも出し、ケーキも用意した。
高木君はコーヒー豆を挽く準備をしている。
なんだか、すごく幸せ。
私がにこにこしていると、高木君が「ん?」とこっちを向いた。
「武蔵?どの豆がいい?」
「高木君の誕生日だから高木君が選んで?」
「ん。でも、コーヒーは、武蔵に買ったから。俺、クッキーも、エプロンも貰ったし」
「じゃあ、甘い物と一緒だから少し苦いのがいいかなあ。なんだろうね?また色々飲んじゃおうか?コーヒー好きな人はそんな飲み方しないかな」
「好きに飲めばいいんじゃないか?じゃあ、まだ、飲んでないコーヒーにしよう」
「うん」
高木君がゴリゴリと豆を挽く。
お湯を豆に落としているとコーヒーのいい匂いがしだした。
「ね、いい匂いしだした」
「うん、早くケーキも食べたいな」
高木君のしっぽはずっと揺れてるんだろうな、と思いながら私は思わず高木君の頭を撫でた。
「おわ」
「あ、ごめん、危なかったね」
コーヒーを淹れてる高木君がちょっと驚いてこっちをむいた。
「いや、もう淹れ終わったから。カップに移すだけ。そしたらまた撫でて」
高木君は撫でられるの好きだな。
「ふふふ。高木君誕生日、おめでとう」
私が撫でながら高木君に言うと、高木君は撫でやすい様に頭を少し下げた。
「有難う。あー。俺、幸せ。武蔵、大好き。ケーキも食べよ。武蔵はミルフィーユだけでいいの?」
「うん。あのね、ぽろぽろ零れたらごめんね。ミルフィーユって食べるの難しいの。だから外では食べにくいから、いつも家で食べる事にしてるの。パイ生地って零れやすくて。外で食べてる時は食べやすいケーキを選ぶんだ」
「おー。そういう事考えるんだ。成程なー。俺も、こぼすかも。ごめん。俺はいつも食べたい物だけ選ぶな。今日は武蔵がチョコレートのクッキーがあるって言ったから、チョコ以外選んだんだ」
私達はお皿にケーキを置いた。
手を二人で合わせて食べだす。
「武蔵少し食う?」
高木君はいつも分けたがる。でも私の頂戴とは言わない。
「うん、ゼリーの一口貰っていい?先に取っていいかな?」
「ん」
高木君はケーキを取りやすい様にしてくれる。
「フルーツ沢山だね。ゼリーがキラキラしてお洒落。下はタルト生地なのかな?美味しいね」
「ん。俺、果物好きなのかな。結構、果物乗ってるケーキ食うかも。あ、剥いたり切ったりしなくていいからケーキのは食べるのかな。自分じゃ果物買った事ないな」
私は頷く。
「なんか分かる。桃のケーキが出ると私も買っちゃう。桃って皮むいたら手汚れるしね、でも桃、好きだな。私みかんは買っちゃうけど、あまり買わないようにしてる。一杯食べすぎちゃうから」
「一杯食べたらいいのに。みかんの季節になったら、俺買ってくるよ。武蔵が一杯食べてるのみたい」
「ふふ。私餌付けされてるみたいだね」
「うん、したい」
高木君はいつも素直に頷く。
私がケーキを食べていると、高木君はケーキをもぐもぐと飲み込みこっちを見た。
「はい、武蔵、あーん」
高木君はクッキーを一枚持つと私の前に差し出した。
私はポンと赤くなったけど、高木君はにこにこしてクッキーを持っている。
「?」
私は目が丸くなった。
私が困っても高木君はにこにこしてるし、手はずっと出したままだから高木君が差し出したクッキーを勢いよくパクっと食べて、ちらっ高木君を見た。
「武蔵可愛い、美味しい?」
高木君は溶けそうな顔で私を見て、私はもぐもぐしながらこくりと頷いた。
「もっと食べる?」
そう言うと、高木君はあーんと言って私の前に差し出した。
私はえいっと思い切り食べたら、高木君の指を噛んでしまった。
私の口からポロリとクッキーはこぼれたけど、私は急いで高木君の指を見た。
「ご、ごめん。痛かった?噛んじゃった・・・」
高木君はじっと指を見て、「武蔵なら噛まれていい」と言って指をペロリと舐めると、私が落としたクッキーをパクリと食べた。
「ごめんね?」
私がもう一度言うと、高木君はちょっと悪い顔をしていて、「今度は噛まないでね?」と言った
私がおそるおそる高木君を見るとまた、あーん、と言うから思わず口を開けるとまた、クッキーが入って来た。
高木君は全然チワワじゃなくて、ジャーマンシェパードでもなくて、小悪魔ってこんな感じじゃないかなと、私は津田さんがおすすめで見せてくれた小悪魔エプロンを思い出しながら考えてた。
高木君から耳元で、「武蔵、今日は有難う。来年も、その先もずっと一緒に祝いたい。武蔵大好き」って言われたけど、私の頭は煙が出ていた。




