番外編 待てが上手な高木君
時系列的には前の話のすぐ後位です。
今日は高木君と買い物に来た。
二人で雑貨屋さんを回ったり、輸入食料店に行ったりカフェに行ったりして、コーヒー豆を見る予定だ。コーヒーミルや、コーヒー豆を入れる容器も見る予定で、高木君が全部プレゼントしてくれるらしい。
物によっては結構高いと思うんだけど、いいのかな。高木君は嬉しそうに選んでいるからまあいいか、と、思う。
それに、高木君の誕生日には一緒にコーヒーを飲む予定だし、二人で飲む物を探すのだからいいよね、と私は割り切った。
「武蔵、どんな豆がいいか決めた?」
高木君は色々な豆を見ながら私に聞いてきた。
「ううーん。酸っぱいよりも深い感じが好きなのかなあ。あんまり渋いのは苦手かな、結局飲みやすい、おすすめなんかいつも買っちゃうんだよね。高木君はどれかいいのあった?」
「いやー。俺、この間友達のマサトと豆見に来たけど、結局分からなかった。何種類か買う?」
「マサト君って、志麻ちゃんの友達かな?聞いた事ある名前だね。マサト君、コーヒー詳しいの?」
高木君は慌てて首を振った。
「いや、マサトは詳しくない。二人で見てただけだから。あいつのコーヒーの知識はなんか違うんだ。だから聞かなくていい」
あら、聞いてみようって思ったの分かっちゃったのね。こうやって、最近、高木君に私の行動がバレてる気がする。
お付き合いってこういう事なのか。
「うーん。普通のブレンドと、ブルーマウンテンと買う?ブルーマウンテン飲んでみたいな。高いから飲んだ事ないの」
「おー。じゃあ、それにしようぜ。もう一種類位買わない?飲み比べしたいかな。店の人に聞いて酸っぱくないおすすめ買うか?」
「うん、じゃあそうしよ。量はあまり買わないで少ない量にしようね、高木君、カフェオレ好きならそれ用を買う?一つはそうしようか」
店員さんのおすすめの豆を高木君が買ってくれて、それからミルも買い、豆の入れ物も買って貰った。
やっぱりちょっと高くなっちゃった。
「高木くん、色々買ってくれて有難う。ミルもずっと使えるし、嬉しいよ。早速、うち来てコーヒー飲んでみる?誕生日じゃないけど、いいかな?まだ時間大丈夫?」
「おー、買ったばかりの豆のが美味いんじゃないか。誕生日の豆はまた買えばいいよ。じゃあ行こうかな」
アパートに来て、二人で豆を挽いていると、いい香りが部屋に広がった。
「お菓子の香りの時も思ったけど、コーヒーの香りも部屋が美味そうになるな」
「本当。コーヒーも優しい香りだね」
ゴリゴリと優しい音がして香りが広がり、コポコポとゆっくり豆にお湯を落としていく。
「いい香りだねー」
「おー」
私は昨日焼いたパウンドケーキを持ってきた。
「良かったらこれも食べて、お茶にしよう?」
と言って切り分けると、喜んでくれた。ほっこりとした時間が過ぎる。
「なー。武蔵って犬好きなの?」
高木君が私のジャーマンシェパードのポーチを見つけてしまった。
「えっとね、犬は好きだよ。でも、それは高木君に似てるって志麻ちゃんに言ったら志麻ちゃんがくれたの」
「え、俺似てるかな?」
私はバカな事言ってるのが、恥ずかしくなる。改めて言うと、ふざけた事よね。高木君怒っちゃうかな。
「前にね、高木君に私、動物に何に似てる?って聞いた事あるんだけど覚えてる?」
「うん。覚えてる」
高木君記憶力いいのね。
「それってね、高木君はジャーマンシェパードに似てるって私が志麻ちゃんに言って、志麻ちゃんから私がポメラニアンに似てるって言われたからなの。私は志麻ちゃんは猫に似てるって思うんだけど。高木君はどうかなーって思った事なの」
「ああ。成程。ポメラニアンってどんなの?俺、こんな感じかな」
「うん、ジャーマンシェパードって大きくて強そうでしょう?でも優しいし、賢い子が多いみたい。警察犬に多いでしょう?きっととてもいい子なんだと思う」
「俺、ジャーマンシェパード好きになりそう。あ、コレか。ポメラニアン。見た事ある。ああ、成程。なんか早瀬が言うの、分かるな。うん、武蔵はジャーマンシェパードよりポメラニアンだな」
私は携帯を操作して猫も見せる。
「志麻ちゃん、このロシアンブルーに似てるって思ったの。綺麗な所と凛としてる所、似てないかな?志麻ちゃんにハンカチプレゼントしたんだ」
「ああ。なんか分かるな。ひっかかれそうだな」
志麻ちゃんはひっかかないよと言ってケーキを食べた。
「そっか、成程な。ケーキ美味い。お代わりいい?」
高木君は沢山食べるのに食べ方が綺麗だな。
「よく芸能人の誰に似てるー、とか、何系とか、その人の事を言ったりするでしょう?でも意外と動物とかも雰囲気でるのかな」
「うちの仕事場、このグレート・デーンとか、多いかもな。あ、でも、柴犬っぽい人もいるな。ああ。成程、人間観察しそうになるな」
わたしは、ケーキをまた高木君に切り分けた。
「コーヒー、違うの淹れてみる?なんかごめんね、高木君嫌な思いしない?バカな事話してたの」
「うん?いや、いいよ、何かなとは思ったけど、嫌な感じの例えじゃないし」
「そう?でも、気を付けよ。高木君もこれ、もう、秘密にしてね」
私が言うと、高木君は笑って、「はは、初めての秘密だな、次のコーヒーは何?」と聞いた。
「今から淹れるから次は何の豆か当ててね?ちょっと待ってて」
と、私が言うと、高木君は私の手を握って
「武蔵、俺、待て上手だよ。上手に待ったら褒めて」と言ってペロっと私の手を舐めた。
その後、私は上手にコーヒーを淹れれなかったのだけど、しょうがないと思う。




