番外編 優しい香りに包まれて
ゆっくり番外編も投稿していきます。
高木君とお付き合いして三ヵ月が経った。
私達は話し合いを沢山して、お互いの知らない所をパズルのように埋めていくのを私は楽しく思っていた。
高木君は優しくて心配性な事。
甘いものが結構好きな事。
ジャーマンシェパードってだけではなくて高木君の髪も固い事を知った。
そして今日は、器用なことも知った。
会社の津田さんがくれた、ビーズで作れる手作りキットを私の部屋で見つけ、「作らないの?」と聞かれ、「作れなかったの」と答えると、「やってみていい?」と言って、高木君は作ってくれた。
私が何度やっても、ビーズはピンっと弾いてビーズの糸から飛んで行ってしまうのに、大きな手でビーズをすいすい入れていく。
説明書を見ながら黙々と作っていく姿を見ながら私はお菓子を作った。
クッキーが焼き上がると、高木君も「出来たー!」と言って、可愛い指輪が出来上がった。
「武蔵、手えだして」と言われ右手を差し出すと、高木君はピキッと固まり、色々悩んで薬指にはめた。
「ちょっと大きいか」と言いながらまたビーズを抜いて調整を何回か繰り返し。
「ほい」と言って作ってくれた。
「すごいねー。高木君、器用なんだね」
「うん。そうかな?でも、プラモデルとか作ったりしたからそれでかな。結構楽しいんだな」
私が淹れたコーヒーを飲みながら高木君は美味い、と言ってクッキーを食べた。
「武蔵、お菓子焼けるんだ。凄いな。俺、作り立て食べたの始めて。焼き立てって違うんだな」
私は自分もコーヒーを飲みながら指輪を眺めた。
「うん。おばあちゃんがね、作ってくれって言ったのが始まりでね。料理は苦手なんだけど、お菓子は分量通りだから。お母さんが、料理はセンス。お菓子は科学って言ってたの。その通りと思う」
「クッキー。美味いよ」
そう言いながら高木君はクッキーを綺麗に食べていく。
「お菓子の焼ける匂いっていいな。部屋も美味そうになる」
「そうだね。なんか優しい匂いに包まれるね。高木君、作ってくれてありがとう」
「ん」
高木君の前のクッキーは綺麗に無くなった。
すごい。
私は明日会社に持って行こうと分けていた分を高木君に勧めた。
「高木くん、足りないならまだあるけど食べる?」
「いいの?ごめん。俺、食いすぎかな」
私は高木君の前にクッキーを出しながら笑った。
「いいよ。食べてくれた方が嬉しいから。それに高木君大きいもの。私と同じ量しか食べなかったらびっくりしちゃう。他にも好きなお菓子ある?シフォンケーキとかパウンドケーキとかなら作れるよ。シュークリームはちょっと苦手かな。プリンも作れるよ」
「うわ、すげー。全部食いたい。今度また作って。俺、材料買ってくるから」
高木君は真面目だな。
「うん、じゃあ、一緒に材料も買いに行こうね。その時手芸屋さんも行かない?津田さん、この指輪、手芸屋さんで見つけたって言ってたから。高木君にまた作って欲しいな」
私が言うと、高木君は顔を赤くして、
「武蔵、今度左手予約していい?」と言った。
「うん。いいよ。左手の方が仕事中も付けれるかな。右手はよく使うから」
私がコーヒー飲む?と聞きながら言うと、
「いや、えっと、すぐにじゃないけど、左手の薬指。予約したい」
高木君はまたちょっとチワワになりそうになっていた。
あ、これは恥ずかしい時の高木君だな。
私は首を傾げ、左手を眺めた。
左手・・・。薬指・・・。
は。
私の顔もぽんっと赤くなった。
「いや、あの、今すぐじゃないけど。でも俺はそういう気持ちで一緒にいるから」
高木君は真面目な顔で私の顔を見た。
高木君の顔は赤くなってるけど、きっと私の顔も負けない位赤いと思う。
「あの、勿論、ビーズじゃなくて、その時はちゃんとしたものを買いに一緒に行きたいし。あ、その前にちゃんと挨拶も行きたいし。うん、でも、武蔵に作るのは俺がいいし」
「武蔵が好きなブランドとかあるなら店でもどこでも見に行くし。ちゃんと俺、金貯めとくから。あ、使う暇なくてちゃんと貯金あるし。すぐに行きたいならいつでもいいんだけど。いや、急かしてる訳じゃなくて」
「俺は武蔵がしてくれるなら何でもいいんだけど」と、一気に高木君は言うとコーヒーを飲んだ。
「うん。有難う。私も高木君がくれるなら何でも嬉しいかな。でも、一緒に選びたいな。だって一度きりの事でしょう?」と、私が言うと、高木君は、
「うん。一度。絶対一度。一度しかない」と、コクコク首を振った。
その後は、クッキーの香りだけのせいじゃなくて、私の部屋は優しい気持ちに包まれたんだけど。
高木君と次のお出かけの話し合いをしたのだけれど、お互い何色が好きかを聞いたりして、私達はまたパズルのピースを一つ埋めていったのだった。
今後もゆっくり番外編を投稿する予定ですので、二人を見守って下さい。
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