表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
爆弾に吹っ飛ばされた私の着地の仕方  作者: サトウアラレ
2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/55

12 私は着地後立ち上がる

これで2章完結です。


番外編が3話続きます。

は~~~~。


私はお風呂の中で、ゆっくり深呼吸すると、ぶくぶくと、沈んだ。



(ああ。断っちゃった。あーあ)



そう思ったが、でも、付き合って、一緒にいるのを苦痛に思ったり、思われたり、お金貸してって言われて、踏み倒されたり。知らない所で悪口言われたりしたくなかった。



(高木君は、踏み倒し男とは違うとわかってるんだけどな。そんなことしないことも分かってるんだけどな。でも、浮かんだ時点でダメだよね。それに、本当に大事に思ってくれてた。いい加減な気持ちで付き合っちゃ失礼だよ)



でも。



(私バカだな~。でも、私には高木君はもったいないなー)



ゆっくりお湯から顔を出し、のぼせる前にお風呂から上がった。


志麻ちゃんには、今日のこと連絡した。黙って話を聞いてくれたけど、呆れてたかも。

自分でも不器用だなあ、と思う。



(踏み倒し男の時はこんなに悩まず、付き合ったのにな。だからダメだったのかな)



高木君とのメッセージのやり取りや、ご飯、楽しかったな。


大丈夫。元に戻るだけ。


だって、高校卒業してから、連絡取ってなかったし。



(思い出はやっぱり思い出のままが良かったのかな)



今まで通りに戻るだけ。ちゃんと蓋をする。


うん、大丈夫。


私は冷蔵庫から麦茶を出して、ごくごく飲んだ。



(音楽、かけようかな。ロックとかいいかも)と思って携帯を触ると、高木君から、連絡が来た。



びっくりして、携帯を落としそうになったけど、電話にでた。



「もしもし?」


「あ、武蔵、今日はごめん。あのさ、今ちょっといいか?」


「あ、うん、なんか私もごめん」



私は急いで床に正座した。心臓がドキドキする。もう、連絡は来ないと思っていた。



「いや、あのさ、今日言った気持ちは嘘じゃないし、本当なんだけど、でも、付き合わなくていい。だけど、今まで通り、友達でいてくれないか。メッセージも送りたいし。飯も行きたい」


「え」


「いや、俺、武蔵と今まで通りでいたい。この関係が壊れるのは嫌だ。頼む。だから、今後も連絡しあえる友達でいよう。武蔵が困る事はしない。ただ、武蔵が困った時は連絡欲しいし、助けたい」


「あ」


「付き合ってとか言わないから。武蔵と俺は友達だ」



携帯を持ってる手が震える。



「うん」


「武蔵」


「うん」


「今まで通り、連絡していいか?飯も食いにさそっていいか?」



高木君の声が優しい。



「うん」


「よかった。今日はごめん。でも、武蔵の事は大事だから。あー、電話とってくれてありがとう。これからもよろしくな。今日の中華、美味かった。また行こうな」



ホッとした高木君の声に、私は鼻がツンっとなる。



「あの、高木君」


「ん?」


「ありがとう」



声が震えそうになった。



「いや、いいから。またメッセージ送る。今度は豆挽くコーヒー飲み行こうぜ」と言われ、うん、と言って電話を切った。


私は正座した足を崩し、ずるずると床に寝転んだ。

よかった。よかった。よかった。



(何がよかった?)



心臓がドキドキする。


寝転んで顔を手で覆った。涙が出た。



(なんで泣くの?)



もう高木君から連絡ないと、思ってたのに。


元に戻るだけで大丈夫と思ってたのに。



(ああ)



振られた時も泣いたけど、あの時とはちょっと違う。


高木君は優しい。私は、この優しさに甘えていいのかな。

私は携帯を握りしめて高木君に有難うともう一度思った。


暫く床に寝転んで、ずるずるとベッドに移動し、志麻ちゃんにメッセージを送った。


高木くんから連絡が来て、友達に戻ったこと。連絡取りあう事。また、ご飯に行くこと等送った。


最後に、もう連絡はないと思ってたから、連絡来てびっくりしたけど、でも、嬉しかったことを送った。


志麻ちゃんからは餌の前にお座りしている犬のスタンプが来た。


なんだろ。でも、志麻ちゃんにも有難う、とメッセージを送った。


志麻ちゃんからは亀が転がって甲羅が下になって、ジタバタしているスタンプが来た。


よく分からないけど。今の私なのかな?


私はロシアンブルーの猫のスタンプを送った。


送りながら、イチョウの並木を高木君と歩いたことを思い出したけど、それは高校生の私達じゃなかった。


不器用な私かもしれないけど、優しい人に囲まれて幸せだ。

私はもう一度、ありがとう、と志麻ちゃんにメッセージを送ると携帯を閉じた。


私の歩みはゆっくりかもしれない。でも、もう止まるのは止めよう。


私を待ってくれたり、手を差し伸べてくれる人がいる。


今まで何度も着地に失敗した。でも寝転がってばかりいるのは止めだ。過去の事はもういい。


宙だって飛んだんだ。いい加減吹っ切らないと。


未来はきっと明るい。


そうだ、大丈夫。きっといいことがある。美味しいコーヒーだってきっと待ってる。



「よし。寝ますか」と言って私は布団をかぶった。



お風呂から上がった時、高木君への好きだと言う気持ちは高校時代の未練だと思っていた。


好きだった。と。



でも。



今、違う事にやっと気づいた。



(私は高木君が好きなんだ)





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ