拳龍ファン
〇勝彦の部屋
「拳龍ファン?」
ピンク色で龍のデザインをした拳龍マスクを被り、
フリフリのスカートに可愛らしいお姫様のロリータファッションをした紅が言った。
「もちろん筋金入りの拳龍ファン」
赤と黒色を使った龍のデザインをした拳龍マスクを被った勝彦が興奮した様に言った。
「拳」
紅が右手をグーにして前に出した。
「龍」
紅の拳に手の平を被せた。
『お~~~~~~~~~~~~拳龍』
二人同時に大きな声で言い最後の拳龍の所で、
真ん中3本の指を折りたたんで親指と小指をお互いに付けた拳龍ポーズをして言った。
「やぱっり拳龍ファンなら出来て当たり前よね」
「当然。
拳龍が仲間と一緒にやるポーズだから、
覚えてるに決まっているよ」
二人と笑顔になった。
「周りにプロレスファンがいないから
凄く嬉しい(^〇^)♪♪」
「ボクも嬉しいよ」
『イエーーイ』
拳龍ポーズをした二人。
「ねぇ。せっかくだから技を掛けさせて」
「え? 良いけど、何の技?」
「もちろん。足4の字」
関節技の1つで技を掛けた時に、相手の両足が「4」に見える様に交差する事から名づけられた。
「おお(^^)!! てっきり拳龍の技と思ったけど、
拳龍のライバル、武清の必殺技を選択するとは意外」
「拳龍様を苦しめた技を1度やって見たかったの」
「なるほど。なるほど。良いですよ」
勝彦は仰向けになった。
紅は( ̄▽ ̄)ニヤリと笑った。
まず、紅は正面に立って勝彦の左足を持ち、
反回転しながら自分の左足をまたぐ(紅は左足を持って後ろを向いている状態)。
次に勝彦の左足を数字の4になる様に曲げて、
勝彦の右膝の上に置き、紅の右足首が勝彦の右太ももの下に移動してロック出来る様にしながら倒れる。(上から見ると数字の4になってる)
そして、最後は紅の左足を勝彦の膝に乗っている足に引っ掛けてロックする。
すると
「イタタタ。ギブギブ」
足に激痛が走って手を叩いてギブアップの合図を送った。
「え~~( ̄3 ̄)。
これだけじゃつまらないから抜け出してよ」
つまらなそうな顔で言った。
「はぁい?」
苦悶の表情で言った。
「か弱い女性の技から抜け出すのって、
やっぱり無理よね?」
紅は( ̄▽ ̄)ニヤリと笑って挑発した。
「そこまで言うなら男の意地をみせてやる!!」
勝彦は気合を入れて右に回転をしようと力を入れた。
すると、紅が両手で畳を叩いた。
「ぬおおおおおおお!!」
振動で足がしまり悶絶する勝彦。
「ギブ?ギブ?( ̄▽ ̄)?」
嬉しそうに悪魔の微笑みをする紅。
「ノー。ノー。絶対返してやる」
プルプル顔を震わせながら意地になって右に回転しようとする勝彦。
そうはさせない紅も力を込めた。
「痛いーーーーーーーーーー」
最終的に勝彦が勝ち、右に180°回転して、
お互い足を絡ませた状態でうつ伏せになった。
足4の字と言うのは、
うつ伏せになると今度は掛けた方が痛くなる。
つまり、紅の足に激痛が発生した。
「参った?」
勝彦は勝ち誇った様に言った。
「ギブギブギブギブギブ」
「仕方ない。
ボクに勝とうとするから・・・・イタタタタ」
勝彦が足を緩めた隙に、紅の目がキラーンと光り、
左に回転して最初の状態に戻った。
「ずるいよ。ギブって言ったじゃないか?」
・・・
「私は参ったとは言ってない」
「何だよその屁理屈は・・・イタタタ」
「どう? 降参する?」
勝ち誇る紅。
「イタタタ!! ? !!!!!!!!」
勝彦は何かに気づいた。
「何?参った?」
嬉しそうに言う紅。
「パ~ンツが見えてよ♪♪」
鼻を伸ばして、にや~っと笑う勝彦。
「キャーー。バカバカバカ。この変態。見るな」
紅は顔が真っ赤になりヒラヒラのスカートを両手で隠した後に、キッと勝彦を睨んだ。
「隙ありーーー!!」
勝彦は右に180°回転してお互いうつ伏せの状態になった。
「痛いーーーーーー!! 何ズルしてんのよ」
「キミが最初に仕掛けたんじゃないか。
( ̄▽ ̄)フフフ」
勝彦はしてやったりの顔で笑った。
「絶対に返してやる~」
「そうは行くか~」
・・・・・・・1時間後
「はぁ。はぁ。はぁ」
二人の攻防は1時間以上つづいて、お互い痛い足に手を当てて肩で息をしていた。
「やるな」
「そっちこそ」
二人は嬉しそうに言った。
「何んか、技を掛けるの慣れてない?」
・・・
「昔、アイツとプロレスごっこをやっていたからね」
「奇遇だね。
・・・
ボクもアイツとプロレスごっこをやっていたんだ」
「へぇ~。同じ境遇なんだ。私達気が合うね」
「そうだね」
「拳」
紅が右手をグーにして前に出した。
「龍」
紅の拳に手の平を被せた。
『お~~~~~~~~~~~~拳龍』
二人同時に大きな声で言い最後の拳龍の所で、
拳龍ポーズをして言った。
『ハハハハハ』
二人で大笑いをした。
「ねぇねぇ。今度は卍固めをやらせてよ」
「また渋い技をチョイスをするな~」
「良いでしょ。良いでしょ」
「仕方ないな~」
「やった~~~~(^〇^)/」
二人はプロレス技の掛け合いをし始めた。
「にゃあー(行けーーー!!)。
にゃごー(そこだーーー!!)」
ダンボルの中に入っていた黒ネコの金剛はひょっこり顔を出して、二人の様子を見て撮影しなくて言いの?
と思いながらも、プロレス観戦している様に二人の攻防に興奮した様子で首を左右に動かしながら熱い応援をしていた。
〇公園
「何?用って?」
アナウンサーのナオは不機嫌そうに待っていた。
「俺と結婚して欲しい」
雄二は片膝をついて赤いバラを見せた。
「イヤ」
「え?なぜ?」
思いも寄らない言葉に唖然とした。
「決まっているでしょ。
あなたが浮気していたの知ってる」
「いや。それは昔の話だって」
「は? 3回やっておいて良く言うわ」
腕組みをして怖い表情のナオ。
「ナオ。そんなに怒るなよ。
結婚すれば浮気はしないからさ~」
立ち上がってナオの耳とで甘い声で言った。
「無理」
ドンと雄二を突き飛ばした。
「どうしてもか?」
「ええ。だって私。大金持ちの息子と結婚するの」
「え?」
持っていたバラの花束を落としてしまった。
「アナウンサーとして有名になれば、
結婚する相手もレベルUPしないとダメでしょ?
それに、未だにバイト生活してる男と結婚なんて
将来が不安過ぎて無理」
「ナオ。考え直せよ」
雄二がナオの肩に手を置いたが振り払った。
「いや。私はこれから幸せになるから邪魔しないで」
ナオはバラの花束を踏みつけて去って行った。
「ナオーーーーーーー」
膝から崩れ落ちた雄二。
大雨が突然振り出した。
「くそおおおおおおおーーーーーーーーーーー!!」
びしょ濡れになり、天に向って吠えた。
〇天王家(母の美智子とヒナタ)
「いやいや。あれはファーストキスじゃない。
そうだ。そうだ。あれは事故よ。事故。
・・・・・
もうキス魔と合う機会もないから。大丈夫大丈夫」
唇に手を触れながら、バスでキスをされたシーンを思い出していた。
「あ。いけない。焦げちゃった」
ハムエッグを作っていたがベーコンが少し焦げてしまって、ペロッと舌を出して反省するヒナタ。
「ママーーーー。ママーーーーー。
起きてご飯よ」
「頭が痛タタタタタ」
パジャマ姿の母である美智子が頭を抑えながらリビングにやって来た。
「もう。また飲みすぎたんでしょ」
「そんな大きい声で言わないの。アタタタ。
でも、今日はいつもより早いけど?」
テーブルに料理を並べた。
「今日から店長をやるって言ったでしょ」
パクパク高速で食べるヒナタ。
「ああ。専務のバカ息子が店長の赤字店ね」
「そう。早く行って状況把握しないと。
あ!!。もうこんな時間。早く行かないと。
会社を遅れずに行くのよ。
しっかり戸締りもして行くのよ」
高速で食べ終わった後に食器を洗っていた。
「はいはい」
頭を押さえながら言った。
「返事は一回」
「はーーーーーい。
ホント、ヒナタは小言が多い小姑みたいね」
返事をした後、小声でぼやいた。
「何か言った?」
頬を膨らせて怖い表情のヒナタ。
「何も言ってませ~ん」
「それじゃ。行ってくるから」
カバンを持ってバタバタと出て行った。
「ふぁ~~~~。まだ時間があるから寝よう。
ぐ~~~~ZZZZZ」
テーブルの上でスヤスヤと寝てしまった。
〇豪華な家(アゲサゲ家の長女の和美と夫の貞男)
和美は不安になって夫の浮気を調査するために、
ネットで調べたチェック項目を作った。
①出張や会社の飲み会が増えた。
「これは〇。
特に会社の付き合いと言って飲むケースが増えたし、
出張が増えた。
まだ1つ目。これはどこの家庭でもある事」
まだまだ余裕の和美。
貞男から初めて貰ったプレゼントの古びた犬ぬいぐるみ(通称ポチ)の頭をよしよしと撫でた。
②車の助手席の位置が少し違う
「これは×ね。
私が乗る時は位置を変えた事が無いから。
ただ~。いつも、ちょっと深めなのよね・・・・
まぁ~気のせいね(^▽^)」
ポチを両手に抱いて気持ちを落ち着かせた。
③車の掃除をする事が多い
「これは〇。
前は全く掃除しなくて私がしてたけど、
最近、掃除をしだす様になった・・・・
私がガミガミ言った効果よ。
きっと、私のおかげ。私のおかげよねポチ」
ポチの首をウンウンと手で頷かせて、
笑顔で語りかけた。
④帰宅後すぐに風呂に入る
「これは×。食事をしてから食べるから。
ただ・・・、
出張先とか飲み会に行ったら風呂に直ぐ入るけど
まさかね。アハハハハ」
ポチの頭と両足を引っ張って、引きつる笑いをした。
⑤携帯電話を持ち歩く
「これは〇。
なーんか。いつもチョコチョコと見ているし、
風呂場にも持って行ってるのよね。
な~んか、すっご~く。怪しいんですけど。
・ ・ ・ ・ ・ ・
さ・だ・お、さ・だ・お」
笑いながらポチの頭にドッス、ドッスと右ストレートで何回も叩き込んだ。
「う~ん。う~ん。これだけじゃ解らない。
ただ、怪しいのは怪しい」
クタクタのポチを机にポイッと投げた。
「やっぱり携帯を見て見ないと解らない。
ただ、どうやって携帯を見たら良いんだろ?
携帯にロックも掛かって見えないから解らない。
よし!! ネットで調べてみよう!!」
【バレ無い様に こっそり 携帯を見る方法】
キーワードを打ってノートパソコンで猛烈なスピードで調べ始めた。
〇レストラン両外店
「はぁ。昨日は眠れなかった。ナオの言ってた通り、
バイト辞めてサラリーマンでもするか」
雄二は肩を落としてトボトボと歩いてバイト先に行った。
「ちわっす」
ドアを開けて店内に入った。
「ん? どうしたんだ?」
店員達が集まって話をしていた。
「どうしたんだ?」
「ああ。雄二さん」
バイト先の後輩で金髪の黒一が言った。
「新しい店長が来て色々指示してるんです」
・・
「え?また新しい店長が来たのか?」
驚いた様子の雄二。
「それが、ガミガミうるさいんですでよ」
「フーン」
(どうせ。辞めるし俺には関係ないか)
後ろ姿の女性が店員に指示を出していた。
「あ。店長。お話したい事がありまして」
雄二が店長に話かけた。
「なーに」
くるりと店長が振り返った。
「あ~~~~キ、キ、キス魔∑(〇_〇;)」
「やあ!! メガネちゃん(^〇^)♪♪♪」
二人の反応は全く対照的に違っていた。
ヒナタは驚いた様子で動揺していたのに対して、
雄二は嬉しそうに(^▽^)ニコニコし始めた。
もう二度と会わないと思っていた二人が出会ってしまった。