キスをしてしまった
〇バスの中
キスをしてしまった二人。
ヒナタはバーンと雄二を突き放した。
「わ、私のファーストキスを返して下さい」
震える手で唇を触りながら言った。
「ごめんね。キミの大事なファーストキスを奪って」
雄二は神妙な顔をしてヒナタのおでこにそっとキスをした。
「な、な、な、な、何をするですか、あなたは~。
こ、こ、このキス魔ーーーーーーーーーーーー!!」
目を大きく見開いてビックリした表情のヒナタ。
「怒った顔も可愛いね。まだ相手してあげたいけど、
これからプロポーズの用事があるからまたね。
あ、そうだ。メガネは外した方が可愛いよ」
携帯とバラの花束を持ちウィンクをしてバスを降りた。
「もう~。なんですか~あの男は。
なんなですか~~~~~~~本当に!!」
頬を膨らまして困惑した表様で唇に手を触れながら言った。
〇アゲサゲ家の2階にある長男勝彦の部屋
「何とか元相方のテルマをギャフンと言わせたい。
つまり、ボクが有名になるしかないんだけど、
どうしたら良いんだろう?」
畳みに座って腕組みをしながら考え込む勝彦。
「ピンのネタを考えて賞レースに出る?
いやいや。ボクのネタは正直、面白くない。
面白くなてくても有名になる方法は・・・・
そんな簡単にあったら誰も苦労しないもんな~。
( ̄3 ̄)ふぅ~」
勝彦は寝転んだ。
「にゃあ~」
黒ネコの金剛が勝彦の所をスタスタと横切り、
お気に入りのダンボールの中に入っていった。
「金剛は気楽で良いよな~
・・・そうだ(^〇^)!!」
むくっと起き上がってノートパソコンの電源を入れた。
「金剛の様子を撮って動画にUPすれば
バズるかもしれない。猫の映像をみたい層はいるし、
可愛い様子や色々な猫の面白い実験をやれば行けそう。
他にも動画を作ったら音楽がいるから、
無料の音楽サイトから貰ってくるか?
いやいや。どうせなら楽曲を提供して貰って、
ボクが歌ったのを売れば儲かるんじゃない?
それをBGMみたいな感じで金剛の可愛い
映像と一緒に流せば宣伝になって、
気に入った人が買ってくれるかもしれない。
いや~アイディアがどんどん沸いてくる。
ニャハハハハ(^〇^)/ 金剛最高!!」
自分の名前を呼ばれてダンボルの中から、
ひょっこり顔を出す黒猫の金剛だったが、
興味を失って寝てしまった。
「よし。じゃ。
無料で提供している音楽サイトの中から、
良い曲を探しますか」
サイトにある曲をどんどん聴いていった。
〇紅が所属するダーク事務所
ドアをノックして紅が中に入って来た。
「およびですか?社長」
「紅ちゃん。
何であんなしょうも無い約束をしたの?」
大きな胸元が開いた色っぽい服を着た社長のタダ子が怒った表情で言った。
「話題を作ってアルバムの売上に貢献するためです」
「あら。そう。そこまで考えたのね。
てっきり、
勢いで言ったんじゃないかと思ったけど」
ギロリと鋭い視線で見た。
「ま、まさか。そんな事はありません」
動揺する紅(゜д゜;) 。
「でも、1か月以内に彼氏を作る方法は考えてるの?」
「はい。考えてます」
「そう。だったら、この件は紅ちゃんに任すわ」
「ありがとうごいます。社長」
「紅ちゃん。社長じゃなくて、
ママと言って良いのよ」
穏やかに言うタダ子。
「いえ。社長の方が言い易いので」
「そう。今度の曲と歌詞よ」
不機嫌な顔で音曲が入ったUSBと歌詞の紙をテーブルの上に乱暴に置いた。
「何で私の曲で勝負してくれないんですか?」
タダ子に近づいて睨みつける様に机をバンと叩いた。
「そんなの決まっているでしょ。
・ ・ ・ ・
売・れ・な・いから」
タダ子が更に顔近づいてニヤリと笑った。
「私はロボットじゃない」
「いいえ。
あなたは私の考えた通りに動くロボットよ」
「そんなのやだ。私の曲で勝負させて下い」
「それは無理ね。
公平に評価して紅ちゃんの歌唱力やビジュアルは天下一品。
でも、曲や歌詞ははっきり言ってダメ。
それは自分で自覚してるんじゃなかったの?」
タダ子の厳しい言葉が紅の胸に刺さる。
「でも、私の曲を皆に聞かせたいんです」
「ダメ。私が作り上げた紅ちゃんのイメージが壊れるからダメでしょ」
諭すように言うタダ子。
紅が怒った表情でドンと大きく机を叩いて
くるりと背を向けて歩いて行った。
・・・・・
「私の本当の母親だったら、
私の願いを叶えたくれたはず」
ドアをバタンと大きな音で閉めた。
「ふざけないで。いつまで言ってるんだ。このガキ。
私を誰だと思ってる。日本人初3回アメリカのアカデミー賞を受賞した日本一の女優タダ子だ」
机にあった花瓶をドアにぶつけて、怒りに満ちた表様で言った。
〇紅の部屋
「良いよ。私の歌が出せないなら、
名前を変れて曲を作れば良い話。
さてさて私が作った曲は何位かな?」
拳龍選手の写真が沢山貼ってあるノートパソコンで検索をし始めた。
「あ~~~あ。
今回は自信があったのに5493位か」
ガックリ肩を落とす紅。
「うん? 珍しい。メールが来てる」
メールのアイコンをクリックして読んだ。
「フムフム。
私の曲を気に入ったので売り出したいのね。
おお。いいんじゃん(^〇^)。
しかも、歌詞を作っている所を撮影したいので、
一緒に考えて欲しいだって」
「OK」
と返信した。
「順位は悪かったけど、
私の曲を評価してくれる人がいて素直に嬉しい~(^^)/」
「おおっと早速、返信が着た」
メールのアイコンをクリックした。
「フムフム。ここに行けば良いのね。
よし。行こう」
「OK」
と返信しそうになった時、手が止まった。
「あ!! まずい!! 私が紅だとばれる。
そうなれば意味がない。
でも、一緒に考えて売り出したいしな~。
バレない様に変装すれば良いけど、
アクシデントでばれるリスクもあるしな~。
どうしようかな~
・・・・そうだ恋占いみたいにこれで決めよう」
机の上に置いてあった小さいサイズのオカキが入った袋を手に取った。
「よし。おかきが出たら行かない。
ピーナッツが出たら行く。
よし。始めるぞ~!!」
「行く」
ピーナッツを取り出して食べた。
「行かない」
オカキを取り出して食べた。
「行く。行かない。行く。よしラストだ」
袋から1つずつ取り出した。
「・・・行かない」
ラストはオカキだった。
「いやいやいや。そんなはのはダメ。もう1回」
首を左右に振って、もう1回別の小袋を取った。
「絶対行く。行かない。絶対行く。行かない」
別の小袋から一つずつ取った。
「絶対行く。・・・・・・・行かない」
また、最後はおかきだった。
がっくりうな垂れた。
「いや絶対くるはずだ」
家の棚から両手に一杯抱えた大量の小袋を机に置いて、
また始め出した。
・・・・・・5分後
「行く、行かない、行く、行かない」
「( ̄△ ̄)ムキーーーーもう1一度!!」
ゴミ箱が小袋でパンパンになった。
・・・・・・1時間後
「行く、行かない、行く、行かない」
「行く、行かない、行く、行かない」
「行く、行かない、行く、行かない」
45Lのゴミ袋が一杯になった。
・・・・・・5時間後
「( ̄▽ ̄)へへへ。行く。
( ̄△ ̄)ムキキ。行かない。
( ̄▽ ̄)へへへ。行く。
( ̄△ ̄)ムキキ。行かないーーーーーーーーい!!」
情緒不安定な状態で、
オカキとビーナッツを取りながら独り言を言っていた。
しかも、45Lのゴミ袋が10袋になっていた。
「はぁはぁはぁ。こ、これで最後」
「行く、行かない、行く、行かない」
最後の小袋を震える手で空けて食べ始めた。
「こいこいこい。キターーーー( ̄▽ ̄)/」
最後の1つに願いを叶えながら取ると、
ビーナッツだったので大喜びした。
「これで行くの決定~(^〇^)♪♪」
背伸びをして達成感に満たされた良い顔をする紅。
「何だかお腹が少し空いてきたから、
少ないけど、ピザ20人前食~~~~べよう」
手馴れた様子で複数の店からネットで注文した。
「よし完了。待っている間に変装する
服をき~~~め~よう(^▽^)♪♪♪」
洋服タンスの中から衣装を取り出して、
鼻歌を歌いながら選び始めた。
〇豪華な家(アゲサゲ家の長女の和美と夫の貞男)
「あなた。次の国会員選挙もそろそろありそうね」
サングラスのイヤリングをしたアゲサゲ家の長女の和美が嬉しそうに言った。
「ああ。そうだな」
県知事の貞男がソファーに座りながら新聞を読みコーヒーを飲んでいた。
・・・
「今回も私の力で国会議員にしてみせるわ」
「頼もしい俺の軍師だ」
貞男は立ち上がり和美に向って笑顔を見せてポンポンと頭を撫でた。
「任せて」
和美は高級スーツの上着を貞男に着せてカバンを渡して、玄関まで行った。
「じゃ。行ってくるよ」
「行ってらっしゃい(^〇^)♪♪」
二人はキスをして貞男は家を出て行った。
「さぁ。選挙に向けて戦略を練りますか」
気合を入れてPCに向おうとした時に、
気になる物を見つけて足を止めた。
「何これ?」
さっきまで貞男が座っていたソファーの所に、
茶色の長い髪を見つけて手に取った。
「私のじゃない。どうゆう事?
もしかして浮気?」
「いやいや。そんはずわない。そんはずわ」
口では否定しながらも急いでクローゼットに行って、
貞男のスーツのポケットを確かめた。
でも、何も出て来なかった。
「考えすぎよね。私ったら」
自分に言い聞かせ様としたが、
もう一度、茶色の髪を手に取って携帯で写真を撮り、
透明な袋に入れた。
そして、何かを決意した表情でノートPCを立ち上げて浮気のチェックをしてみる事にした。
〇勝彦の部屋
「そろそろ来る頃だな。何だか緊張する」
部屋の中を行ったり来たりしてソワソワする勝彦。
「どんな人が来るだろ?
気難しい人だったら嫌だな~」
緊張した面持ちだった。
「ピンポーン」
「お。来たみたいだ。
最後に身だしなみを整えて・・・・・しまった。
ひょえ~~~~~。
ボクの顔は皆に怖がられるんだった(゜д゜)!!」
鏡で見て気づき右往左往し始めた。
「どうする?このままで行くか?
いやいや。絶対ビックリして帰ってしまう。
じゃ~どうする?」
「ピンポーン」
「は~い。少々お待ち下さい」
大きな声で言った。
「どうする? どうする?
何かごまかせる物。何かごまかせる物」
辺りをキョロキョロして探した。
「にゃ~」
「うるさいって? ごめんな金剛・・・・・
あ!!! それがあった」
黒ネコの金剛がある物に座っているのに気づいた。
勝彦は直ぐに金剛を追い払ったら、
いつもの様にネコパンチを浴びたが痛さに耐えて、
ある物で顔を隠し急いでドアの所に行った。
「すいません。遅くなってしまって」
ドアを空けて謝った。
「・・・・・・・・・・・・」
そして、二人が見つめ合った。
『あーーーーーーーーー∑(〇д〇;)!!
拳龍マスクだーーーーーー(゜д゜)!!』
二人とも同時にお互いを指差して言った。
そう。二人ともプロレスラーが被る拳龍マスクを被っていたのだった。