夏、夜、散歩
その場の思いつきで書いた自己満足の作品です。
詳細はありません。
「今日はなんだか気分がいい。」
僕はそう言って夜の静まり返った街へ繰り出す。
ここしばらくは雨続きだったし、雨が止んだら止んだで蒸し暑く、とても外出する気分にはならなかった。それこそバイトでも無ければ外出しない日々だったが、この時間はきっといいものになる。
そんな予感を胸に清々しい気分で歩を進めるが、突如に寒気に襲われる。さりげなく辺りを見回しても人影は無く、街灯が煌々と輝くのみだ。
気を紛らわそうとイヤホンを装着し、この雰囲気にあった選曲をして目的も無く歩き続ける。
再び寒気に襲われる。
やはり、辺りを見回しても人影は無い。
視界の端を何かが通り過ぎ、バッと振り向くとそこには猫がいた。
その猫はこちらを一瞥し、無害と見るやすぐに視線を外し悠々と歩き去る。
僕はその猫が見えなくなるまで見送り、再び歩を進めた。
10分程歩いただろうか。
辺りは近所であっても中々来る機会のない場所についた。
こんなものがあったのかと一人嘆息する僕。
少し遠くに視線をやると見慣れないコンビニの看板がある。
「こんなところにコンビニがあるなんて知らなかったな。」
そう呟きコンビニに向かう僕だったが、そこで先程見かけたであろう猫が居ることに気がつく。
何故かこちらをじっと見つめる猫。あまり目を合わせ続けるのも良くない、と、この前テレビで見たのを思い出し視線を外すと、いつ来たのか後に数匹、左右の少し離れたところに計十数匹の猫がいた。
普通であれば気味が悪く、すぐにでもその場を離れるのだが、不思議と嫌な感じはしなかった。
そして、そこでふと違和感を覚えた。
ここまで数十分も歩いて来たのに人っ子一人いない。時間帯もあるだろうがそれにしたって不気味だ。
何せコンビニの前まで来たのにも関わらず店員すら居ない。
途中に大きな通りもいくつかあったが、車が走っているような音さえしなかった。
そこで凍りついたように固まる僕だったが、先程見かけたであろう猫が近づいて来て、足元に体を擦り付け、付いてこいと言わんばかりにこちらを振り返り僕を一瞥した。
僕はその猫について行く事にして他十数匹を見回し、軽く手を振った。
するとそれに答えるように聞こえるか聞こえないか程の小さい声で鳴く数匹と、前に向き直り返事をするような先頭の猫。
そこから先はあまり覚えていないがその猫は結局、僕を自宅の近くの通りまで案内してくれて、去り際、名残惜しそうにこちらを振り返って甘えるような鳴き声をした後、颯爽と走り去って行った。
その後、僕が幸せな家庭を築いた後、息子たちがその時の猫によく似た捨て猫を拾って来て、新たな家族の一員になるというのはまた別のお話。