その94、蛇とヤギに混乱させられる
大型魔女狩りの他にも――
人間の女性魔法使い。
男性魔法使い
他種族の魔法使い。
そのタイプごとに法則とかあったりします。
「危ない!」
松上少年の声が轟き、不意に銃弾の雨がやんだ。
私はとっさに距離を取って、相手の様子を見る。
<魔力確認。距離――……>
けっこう離れた場所から、撃ってきたらしい。
視認できた相手を拡大してみると。
白いのだろうが、汚れのためにほぼ灰色のバスケットハット。
安物っぽいコートに身を包んだ、薄汚れた男が立っていた。
手には、マシンガンのようなものを構えている。
ちょっと拡大すると、銃には蛇の鱗みたいな文様が見えた。
って……。また、男の魔法使いか!?
そう思っていると、敵はまたも撃ってくる。
やや雑だが、際限なく撃ってくる銃弾には、ひたすら辟易。
反撃しようにも、隙が生じないのだ。
と、私を撃つ敵に、松上少年が仕掛けた。
杖を一回振るい、流星のような魔力の砲撃。
男はぬるりと方向転換して、銃撃をやめた。
しかし、何とも厄介な……。
そう思っていると、今度は松上少年を狙って撃ち始める。
が、松上少年も魔法の障壁を。
二重になった分厚い魔力が、しっかりと魔力の銃弾を防ぐ。
「よっし!」
その隙に、私は加速して突進する。
もうちょっと……!
そこまできた瞬間、いきなり不快な音……のようなものが襲ってきた。
何か、獣の叫び声みたいな衝撃が、空中の私にぶつけられる。
「があ!?」
きりきりと落下しつつ、私は歯ぎしりした。
<精神攪乱効果確認。防御。魔力反応――>
私が着地すると、また新たな影が見える。
「邪魔はさせないよー?」
ニヤニヤと笑うそいつは、銀色の角笛みたいなものを弄んでいた。
ヤギのような角。というか、ヤギの下半身。尻尾。
眠そうな目をした美人だが、覇気のない顔の女だ。
あれは……サテュロス?
半分人で、半分ヤギの異種族だ。
陽気だが欲望に正直で、色々だらしない性格とか聞いたが。
けど、何でそんなのがここにいる?
というか、何であの魔法使いを助けたのだ。
まずは、それを聞き出さないとな……多少手荒くても!
私は両腕をクロスさせて、サテュロスに近づく。
「しつっこいねー?」
サテュロスは踊るように身をよじって、角笛を吹き鳴らす。
途端に、さっき響いた獣の声みたいな音。
<精神攪乱効果確認。防御――>
これは……精神を混乱させる音か……?
防御とマスクがなければ、やばかったか。
そういえば、サテュロスはその手の幻惑や攪乱が得意だとも聞いた。
テロとか陽動・扇動には使えそうな能力だな……。
となれば、余計にほっとけない!
私は全身を覆う魔力を強化して、サテュロスに突っ込んだ。
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