その83、ラブ子は『バイト』をしに来日したらしい?
モンスター娘って、色々難しい。
そして。
蛇塚ラブ子は、昼前に戻ってきた。
教室の窓から例の魔法少女衣装のまま、
「よいしょっとー」
と、自宅に戻ったような気楽さで。
「ただ今、戻りましたー」
変身を解きながら、ラブ子は授業をした教師に手を挙げて報告。
「あ、じゃあ……席に戻って?」
授業中の英語教師は引きつった顔で、そう言った。
色々しんどいだろうな、こんな生徒がいると。
わけのわからん迫力に、みんなはほぼスルーしていたのだが――
昼休み。
「あのー、蛇塚さん? お話とかいい?」
弁同箱を手に、エミリが話しかけていったのだった。
のほほんとしているが、けっこう度胸のある子なのである。
「うん。いいけど?」
「良かったー。あ、まきめに黒羽さんもいいかなー?」
「い、いいけど……」
「こっちもOK」
まきめはちょっと緊張しているようだったが、私は平静を装う。
そしてまあ。
4人で机を寄せ合い、弁当を広げることになったわけだが。
「蛇塚さん、さっきはどこに行ってたの?」
弁当の唐揚げを頬張りつつ、エミリが質問。
「あー、バイト?」
「バイトって……いいの? 学校の途中で……」
「そういう契約でやってるからね。学校にも話がいってるの」
「へー、どんなバイト」
「まあ、害獣駆除? ていうか、モンスター討伐だねえ」
「も、モンスターって……」
ちょっとまきめが息をのんでラブ子を見つめた。
「色々呼び方はあるけど、仕事のほうじゃ黒鳶って呼んでる」
「聞いたことない妖怪……モンスターね」
なんとなく予想はつくが、私は内心ギクリとしながらそう言っておく。
「ネットとかじゃあ、魔女狩りって言われてるね」
ああ、やっぱり。
「え。魔女狩りって魔法が効かないんじゃあ?」
エミリが驚いた顔ながら、唐揚げを食べ続ける。リスみたいだ。
「そりゃ種族特性みたいなもんっしょ。人間の魔法は効かないみたいだね」
「ああ、そっか。蛇塚さんは……」
「ラミアだからね」
と、ラブ子は笑う。
今気づいたが、ラブ子の弁当は半分近くがゆで卵で占められていた。
それを、まさに蛇みたいに喰うのだ。
「ま、一応人間の血は引いているけどさ?」
「そーなんだ? あ、じゃあ蛇塚っていうのは……」
「お父さんの苗字。半分は日本人なんだ、私」
なるほど。そういうことであったか。
「ま、ラミアは女だけの種族だから、父親はみんな他の種族だけど」
「ふーん……。じゃあもしかして、エルフとかドワーフも?」
そういう子もいるよ、とラブ子は笑い、ゆで卵を喰うのだった。
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