その82、ラミアの魔法少女
新たな魔法少女登場です。
蛇塚ラブ子。
ハッキリ変わった名前だ。まるでペンネームである。
「あ、あのー、蛇塚さんはエルフなんですか?」
教室中が唖然とする中、まきめが手を挙げて質問した。
「違う。私はラミア」
と、ラブ子はきれいな髪をかき上げた。
ラミア。
上半身は人間の女性で、下半身は大蛇――という姿の種族である。
伝承やゲームなどではモンスターとして扱われることも多い。
しかし、今目の前にいる少女は、2本の足を持って立っている。
「あの、ラミアって下半身は蛇って聞いたんですけど?」
「それは魔法で変化させてるの」
言うなり、ラブ子のスカートから下が暗い緑の鱗に覆われた蛇体に変わった。
一瞬の出来事である。
「うわ……!?」
「本当だ……」
驚く生徒たちに満足したのか、ラブ子はまた元の2本足に戻った。
靴やらソックスやらも、魔法で一瞬に生成・構築したのだろうか?
「まあ、色々あって向こう側……ダイノヘイムから来ました」
と、ラブ子は肩をすくめて自己紹介する。
どこか飄々としているというか、悪く言うとやる気のなさそうな態度。
しかし、肌に感じる魔力は確かなものだった。
それにしても、一番親交のあるエルフの数も少なくなっている昨今。
ラミアという種族が、何で日本に来たのだろう?
しかも、魔法学校に入学するとは……。
私が悶々と色々なものを抱えながら考えていると、不意に音楽が鳴った。
これは、スマホの着信か?
「あ、ちょっとスミマセン」
ラブ子はスマホを取り出して確認すると、
「用事が出来たんてちょっと失礼しまーす。片づいたらまた来るんで」
何か勝手なことを言いながら、外の見える窓のほうに歩いていく。
「ちょ、ちょっと……!?」
「偉い人との話はすんでるんで、ご心配なーく」
ラブ子はほぼ武市を無視して窓を開ける。
そして、ぴょんと外へ飛び出した。
「あ!」
誰が叫んだのだろう。
教室の生徒たちは一斉に立ち上がる。
だが、ラブ子は空中で光に包まれると、その衣装をガラリと変化させた。
黒を基調とした可愛いけど、スタイリッシュな衣装。
魔法少女のそれである。
変身したラブ子はくるんと一回転してから、風のように飛んで行ってしまった。
「まさか、魔法少女とは……」
私は一人着席すると、一瞬どうでもよくなって思考を停止した。
だが、私のメールにも着信が来てしまう。
嫌な予感を抑えながら開くと、魔女狩り発生の報せであった。
場所は、割と近くだ。
行かなければ、ならない……。だが、山田の一件を思い出すと気軽に出動もできない。
そう再々学校を抜け出すことも。
今回は、アレだ。もうしょうがない。
私は自分にそう言い訳して、メールを無視することに決めた。
よろしければ、感想や評価ポイント、ブクマをお願いします!
感想は一言でも歓迎!
あなたの応援が励みになります!