その73、闇の妖精
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「……!?」
私はとっさに手を振り払うとしたが、できない。
つかまれた腕はまるで石にでもなったかのようだ。
「――こいつは、わたいの契約者だ。あまり勝手なことはしないでもらおうか?」
おちょくるような声と共に、手の持ち主はその全体像を現した。
扇情的な、水着みたいな独特の衣服。
長い耳。青黒い髪に、水色の肌。黒い目に赤い瞳。
そして、赤黒い角と、細長い尻尾。
悪魔。
全体的には絶世の美少女だが、いくつもの特徴が悪魔を思わせる。
でも、こいつは多分悪魔……ではない。
こういう身体的特徴を持った種族を資料で読んだことがある。
「ダークエルフ!?」
ゆみかが呆けたように叫んだ。
そう。
この悪魔的な特徴を持った美しい種族は、ダークエルフ。
私が前世で慣れ親しんだ物語なら、悪魔とか魔族という感じの姿。
だが、この世界ではダークエルフだ。
「山田、ずいぶんと苦戦しているなあ?」
からかうように言って、ダークエルフはちょいと指を振る。
その途端、カマキリ型魔女狩りを封じた私のロープが燃えて消え去った。
「まさか、いきなり、こんなヤツに……」
「やれやれ。こうなった以上は家にも戻れまいよ。わたいと一緒に来い」
ダークエルフはまた指を振る。
すると、山田の体が風船のように浮き上がった。
「待て」
「待てないね」
制止しようと近づく私に、ダークエルフはふっと手を振った。
瞬間。
目に見えない、強烈な力が私を横に跳ね飛ばした。
近くの住宅――そこの壁を叩きつられ、そのまま壁を砕いて庭に放り出される。
くそっ……!!
痛く……はあまり、ない。
けど、感じ取った相手の魔力に、眩暈がしそうだった。
私は壁を飛び越え、ふらつきながら道に戻る。
その時には、ダークエルフは魔法陣の中に消えようとしていた。
山田も一緒である。
「待って! その人をどうするつもりなの!?」
ゆみかが身を乗り出して叫んだ。
「どうするって。このままだと殺されるからな。保護するんじゃないか」
「殺すって……」
「男の魔法使いは殺す。それがお前らのやり方だろ?」
「そんなことしない!」
「お前はな。だが、他の連中はどうかな? 現実を飲み込めない馬鹿ぞろいじゃないか」
ダークエルフはそう嘲笑い、そのまま消えてしまった。
「えらいことになった……」
田中くんは魔法陣の消えた道路を見て、頭を抱えている。
と、遠くのほうでパトカーのサイレンが……。
それに、あの市役所員もいつの間にか消えているようだ。
「――これは意外な展開だ……」
私は自嘲気味につぶやき、パトカーの来る前に逃げ去ることにした。
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