その72、パーカー男の正体は
今日はちょっと早めに更新です。
両腕の刃をしまい、私は手を広げて言った。
「どけよ……! そのババぁ殺してやる」
「そんなことをして何になるんだ?」
「うるせえ!!」
痺れを切らしたのか、パーカー男は見え見えの動作で殴りかかってきた。
私はそれを難なくキャッチ。
拳の圧力から、実力のほどが知れる。
やはり、大した相手ではない。
「もう、よせ」
「はな……ぎいいいい!!」
私が少し力をこめると、パーカー男は悶絶して首を上下左右に振る。
と、深めにかぶっていたフードが脱げた。
カマキリみたいな逆三角形の顔をした、貧相な男だった。
年齢は、若いようだが。
「ひょっとして……山田のあんちゃん?」
そこに、田中くんの声が飛んできた。
視線を送ると、こちらに走ってくる姿が。
「君の知り合い?」
「いや、同じ近所のあんちゃんなんだけど……」
やってきた田中くんは困った顔をしている。
一瞬、パーカー男は血走った目で私やゆみかを睨む。
だが――やがて、諦めたように膝を崩した。
「うわ!? これ、まさかあんちゃんの!?」
田中くんは巨大黒カマキリを見ながら、アタフタ。
「何故、こんなことを?」
「そいつが、俺を馬鹿にするからだ……!!」
ゆみかの後ろにいる女を指し、パーカー男こと山田は吠えた。
「ひい!? は、早く、やっつけて! やっつけなさい……!!」
尻餅をついた市役所員は、手をバタつかせて叫ぶ。
「まだやるかい?」
「ぐ……」
私が拳を離しながら聞くと、山田はグッタリとうなだれた。
「こんなことをした以上、タダではすまないぞ」
そう言ったが、山田は無言。
「まあ、私も言える立場ではないがね」
少し笑いながら、私は肩をすくめる。何せテロリスト認定されてるしな。
ゆみかは微妙な表情だった。
「君は、彼をやっつけるかね?」
尋ねると、ゆみかは黙って首を横に振った。
「なんでよ!? 魔法少女でしょ!? やっつけなさいよ!!」
市役所員はゆみかのスカートにすがりつき、わめいている。
それを、ゆみかは何とも言いようがない顔で見返していた。
「これは君の使い魔か? なかなかのものだ。一体、どこで魔法を学んだ?」
「……」
「言えない。あるいは、言いたくないか」
「……」
「わかった。だが、君は私と来てもらうよ。このままにはできないからな」
「……どうする気だよ」
「少なくとも、殺したり傷つける気はない」
私は山田の腕を取って立たせようとする。
その時、青い手が、私の腕をがっしりとつかんできた!?
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