その68、初心い少年は緊張するようだった
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しばらくしてから。
田中くんは河原で大の字になっていた。
冬でもないのに、全身からもうもうと湯気が立っている。
「おつかれさまでした」
私はスポーツドリンクのペットボトルを渡す。
秘密基地に置いてあったものを、小型の出入り口から取り出したものだ。
「……あんがとさん」
田中くんは応えたけれど、しばし荒い息を吐いてばかりだった。
やがてゆっくり起き上がり、一気のペットボトルを飲み干す。
「いやー、けっこうきつかった……」
「いつもこんなことしてるわけ」
「まあ、そんなとこ。やってみると面白くって」
「そういうものかしら」
「えー……あー」
「?」
起き上がった田中くんはジャージの上を着こみながら、何やら言っている。
何か言いたいらしいが、ハッキリしない。
「えーと、これ、スポーツドリンク、ごちそうさま」
「いえ。お粗末さま」
「えーと」
「うん」
「あの……その、あれですよ」
「何が?」
「いや、まあ、なんちゅうの? その、感謝をしているというか嬉しかったというか」
「それは何より」
「えー、うん。そいでまあ、こちらとしても、その、何かアレかなーと」
「……何が言いたいわけ?」
ハッキリしない態度に、私は少しイラっとするが。
だが、まあ精神年齢含めればだいぶ年下の少年だ。
ちょっと可愛くもある。
「あの、ほら、ねえ?」
「猫?」
「いや、猫じゃなくって。その、お礼? みたいな……」
「お礼なんて別にいいわよ。気にしないで」
「あのね、だから、まあ、お礼がしたくって」
「だから、良いってば」
「いや、こっちが良くないというか……。あのですネ」
「なに?」
「ウチデオチャデモノンデカナイデスカ?」
……。
何だか、宇宙人がしゃべっているような話し方だった。
「お邪魔していいの」
「いや、ぜんぜん! 大歓迎で!」
言って変な身振り手振りをする田中くんは呂律が怪しかった。
ああ、やっぱり、女の子にあんまり免疫ないのか。
しかし、今まではわりと普通に接していたと思うけど。
まさか、こっちを異性として意識しだしたわけではあるまいな?
そらぁ黒羽はすごい美少女だけどもさ。
「変なことしないでしょうね」
「し、しないっすよ。何言ってるんすか!? し、し、失礼だな!?」
……反論する田中くん。すごく動揺していた。
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