その67、田中くんはトレーニングに励む
今後の構想を進めていますが、どうも暗い方向にいきそうです……。
困った。
翌日から、私はFA部周辺の調査を始めた。
といっても、あまり自力でやったものはない。
「フライングアーツに興味がわいたので――」
ということで、母に頼み込み家のコネなどを使った。
ほぼ人任せだけど、立場上あんまり嗅ぎまわったりできないのだ。効率も悪いし。
それでもまあ、大した進展もなく三日が過ぎてしまった。
やはり、偶然だったのか……? 私は体調不良気味だった。
どうにも鬱屈した気分が続いたせいかもしれない。
そういえば、田中くんはどうしているだろう。
松上少年曰く、
「今彼にあったトレーニングをやっている最中ですよ」
だ、そうだ。
何となく、彼も意見も聞いてみたくなった。
その日の放課後、連絡を入れてみたがつながらない。
以前尾行した時のことを思い出し、直接家に向かってみることにした。
我が家の周辺とは違う、少し寂しい住宅街。
そこへ向かう途中――
「ん?」
河川敷を上手に歩いている最中、下の方で掛け声を聞いた。
覗いてみると、腰にロープをくくりつけた少年は汗まみれで走っている。
ロープの先には複数のタイヤがくくりつけられていた。
どこかの運動部かと思ったけど、一人だ。
自主トレかしらん?
と、よくよく見れば、その少年は田中北吉くんではないか。
「おーい」
私が声をかけると、田中くんはキョロキョロした後、こちらを発見。
「ジンさんやーい」
「ジンさんって……」
刃光院の刃を取って、か。
何だか変な呼ばれ方だなあと思うけど、悪くはない。
「一体何してるの、こんなところで」
「いやあ、トレーニングだよ、トレーニング」
そういう田名君の腕には、松上少年の腕時計が。
正確には、『腕時計のようなもの』か。
「これはめて、トレーニングすると効果あるんだって。確かにその通りでさ、やればやるほど体力つくような実感あるんだわ」
と、汗をぬぐう田中くん。
上はスポーツ用Tシャツで、舌はジャージ姿。
そういえば、前より痩せた? いや、引き締まってたくましくなった感じだ。
「一体どれくらいやってるの?」
「腕立て、腹筋。スクワットを100回づつ、マラソン10kmを基本として……」
説明しだす田中くんだが……。
基本はまだいいとして、後半のものを加えると相当な量だ。
「それ、どれくらいの頻度で?」
「基本毎日」
「うえっ」
聞いてるだけでしんどくなりそうだった。
「ちょっとオーバーワークじゃないの……?」
「いやあ、全然。さいしょはちょっと筋肉痛もあったけど、もう慣れた」
「慣れたって……」
愉快そうに笑う田中くんに、私は力が抜けて笑ってしまった。
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