その64、謎の蟹仮面・ナイスアシスト
そのうち巨大ヒーローもやってみたい今日この頃です。
その途端、もわもわと煙のような魔力が噴き上がった。
見る見るうちに、カメレオンの姿が現れていく。
「相殺魔法を撃ちこんでヤツのステルス能力……ふむ、魔法かな? とにかくそれを打ち消した。今のうちだよ?」
黒仮面はマントをわざとらしく広げて、ハッハッハと笑う。
何だか古い映画の吸血鬼みたいである。
「そのようで」
私は短く答え、鳥型ツールを呼び出した。
多少頑丈でも、こいつの一撃なら――!!
目論見通り、黒カメレオンはツールの爪で引き裂かれいく。
血のように噴き出す黒い魔力。
私はツールに飛び乗ると、魔力を込めた。
<攻撃機能。翼が刃となる>
よし、今回はこれだ!
魔力を帯びたツールの翼は金に輝きながら、拡大した。
私はそれを操りながら、地面をのたつくカメレオンを切り裂く。
ズタボロになったカメレオンは一瞬痙攣してから、黒い塵と消えていく。
ふう。
私が飛び降りると鳥型ツールは魔法空間に戻る。
「お見事」
着地した私に、仮面は手を叩いてみせた。
よく見るとこのフルフェイスの仮面、金色のマークが中央にある。
これは……蟹か?
「あんたは――」
「うーん。僕はですな」
黒い蟹仮面はもったいぶった態度で、黒手袋をはめた手を顎辺りに持っていく。
と、その時、
「不審者確保おおおおおおおお!!」
いきなり声がして、何かがこっちへ突っ込んできた。
まずい、警備員か?
蟹仮面はふわっと空中に浮かびあがり、私のほうへ向かってくる影。
そいつは、私に見知った人物で……。
「稲見さん、ダメだよ……!」
横から響くとヒロインの叫び。
私に飛びかかってきたのは、中岡稲見。
手にした短いメイスで、殴りかかってくる。
全然力も体重もかからん攻撃だったが。
メイスをつかんだ手に、小さく走る電流。
なるほど、麻痺の魔法を使ったのか。
もっとも、私には何にも感じなかったが。
「ダメだって……!!」
私の腰にしがみつく中岡を、ヒロインゆみかが必死で引っぺがす。
「……良い友人を持ってるね」
「ご、ごめんなさい!」
嫌味を込めた私の言葉に、中岡を羽交い絞めしたゆみかはうなだれる。
だが、相手にはしていられなかった。
今度は本物の警備員たちが、格闘用の魔法杖を手に取り囲み出す。
「ふん……!」
私は地面を殴り、魔力波で土煙を噴き上げた。
土煙は見事に周辺を隠してくれ、その間にさっさと逃げる。
ワープで戻った女子トイレから出る時、私は何とも言い難い疲労感をおぼえた。
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