その55、パーティー会場での異変
今回で休んでいた日の分も取り戻しました。
会場に向かう車中でも、私は気にかかっていた。
消えた魔法格闘技の選手たち。
彼女らは、明日この市内で行われる試合のためにバスで移動していたそうだ。
が、今夜泊まるはずだった宿泊施設の駐車場で『消えた』。
ネットでは、破壊されたバスの画像や映像が流れている。
バリバリの若い格闘技選手で、全員Bランクの魔法使い。
そんな集団が消えた。
乗っていたバスは、窓が割れ、車体が歪んでいた。
まるで巨大な何かに襲われたように……。
しかし、現場では不審なものはも目撃されていない。
監視カメラも同様。
魔法によるサーチも無反応だったらしい。
一体、どうなっているんだか。
魔女狩りによるものだとしても、アレもモンスターの一種には違いない。
モンスターは独特の魔力を放ち、存在すれば必ず痕跡が残る。
より強力なものほどそれは強くなり、未熟な魔法でも探知しやすくなるそうだ。
モンスターによる人的被害が少なめなのも、そのへんが大きい。
『現在調査中なので、単独行動は控えてください』
松上少年からはそう連絡がきた。
まるで、子ども扱いだなと思うが、まあ今の私は未成年だ。
魔法を含めた技術や能力的には、あの天才少年に到底及ばない。
そんなこんなで。
私は会場につき、社交辞令の雨を歩くのだった。
母は所用で遅れるため、私に挨拶が飛び込んでくる。
「なにとぞ、ご両親によろしく」
無駄に洗練された挨拶の後、必ずついてくる言葉。
向こうからすれば、私は所詮ちょっと出来がいいだけの小娘にすぎないわけだ。
まあ、そんなことを気にしたり、ぼやいても詮無いことだが。
しばらくして、『挨拶』が途切れ、私は軽く喉を潤すことができた。
こういう時は未成年な身の上が悩ましい。
並ぶ上等な酒類を前に、密かにため息。
そして、オレンジジュースを手に取った時――
「……?」
一瞬、どこか不自然にコップが揺れたような気がした。
同時に感じる違和感。
何だろうかと隅っこに移動し、会場を見渡すが、
「特に何も、ない……か」
思わずつぶやいてしまう。
そういえば、だが。
会場を守る警備員には、南条大学のFA部員も多い。正確には卒業生だが。
格闘技に通じて、飛行魔法の訓練を重ねている。
魔法警備会社の社員としては、非常に適した人材だ。
特にうちの関連では、警備員の待遇・給料はかなりのもの。
時間的にはハードだが、その分十分な見返りを用意している。
なかなか魅力的な就職先らしい。
色々考えたり思い出していると、また違和感。
いや、これは……気配?
微かだが、何かが近くを移動しているような。
私はこっそりとワンドを手にして、できるだけ目立たない場所へ移動。
と、不意に会場の窓ガラスが砕け散った。
そして、警備員の体が宙に浮きあがる!?
よろしければ、感想や評価ポイント、ブクマをお願いします!
感想は一言でも歓迎!
あなたの応援が励みになります!