その54、あえて危難に進む魔法少女は止められない
「弱い雑魚モンスターならともかく、もしも危険なやつに出くわしたら、どうするつもり? 逃げればいい? Bランクの魔法使いでもやられることがあるのに、あなたたち素人に対処ができるのかしら? そういうのを無謀と言うのよ」
「そ、そうですね……」
「なら――」
「でも」
「でも?」
「でも、タダ知らん顔してるのは、無理です……」
「別に知らん顔しろとは言ってないわ」
「私、怪物に襲われました……。あの時はお面の人が助けてくれたけど……」
「……それは、運がよかったのよ」
「わかってます。今でも、思い出すと怖い。だけど、ジッとしてるのはもっと怖いんですよ。夜中に、あの時のことも思い出してゾッとする……」
と、ゆみかは視線を落とした。
「だから、自分でも何かしたい……。何もできないかもしれないけど、ジッとしてるのはただ怖いだけなんです。それは、耐えられないから」
そう言って顔を上げた時、ゆみかの目には強い光があった。
あ、これはあかんわ……。
私が何を言っても無駄だなと思い知る。
アニメでは序盤にモンスターなんかと出くわさなかった。
しかし、ここでは殺されかけている。
それがトラウマになって、トラウマがより過激な行動に出させるのだろうか。
あるいは、あえて恐怖に向かっていくことでそれを治療しているのかもしれない。
そう、無意識に……。
「……なら、勝手になさい」
諦めた私は、ため息と共に背中を向けた。
「ほっとけばよかったのに……」
私を待っていたまきめは不満そうに言った。
「そうかもね」
私は苦笑するしかない。
「でも、あの子魔法少女なんでしょ? もしかしたら、すごいことするかも」
そういうのはエミリ。
確かに、ゆみかは後々、魔法の力を開花させていくわけだが……。
必ずしも、それで幸福になるわけでもない。
……。まあ、魔女狩りの大発生で死亡ENDなんだけどね。
今のままだと……。
そして、私は迎えの車に乗り、家路につくのだった。
帰ると、少しお茶とお菓子を楽しんでから、宿題。
これがなかなか難しいが、黒羽の頭脳ではパパッとできてしまう。
前世のままなら、さぞかし相当苦労したろうなあ……。
それに魔法の基礎練習も欠かせない。
瞑想も欠かせない。
これをしなければ、多忙な日々にストレスでおかしくなるかもしれぬ。
あれこれやっているうちに、夜となってしまった。
今夜のパーティーに備えて、準備準備と……。
私が身支度をしながらテレビをつけていると――
<緊急速報です。南条魔法大学のフライングアーツ部部員が消息を絶ちました……>
フライングアーツ。
飛行魔法で飛びながら格闘をする魔法時代のスポーツだ。
よくわからんが、蹴ったり投げたりする総合格闘技らしい。
南条のFA部と言えば、プロも多く輩出しているところだが――
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