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50/301

その50、追われる立場は嫌だなあと思う

いつの間にか50回に……。



「えらい目にあったわ……」



 格納庫にて。


 私は膝と両手を床につきながら、乱れる呼吸を整えていた。



「まあ、いずれはと思ってましたが、とうとうこうなりましたか」



 私の横に立ちながら、松上少年は空中に浮かぶ映像を見ている。



<ただ今、警視庁の特殊部隊により、仮面の魔法使いの逮捕が試みられ……>



 映っているのは、現在放送中のテレビだ。



「すげえな、今後はより精密な捜査と布陣で臨む……とか言ってら」



 田中くんはスマホでSNSやニュースサイトを見ているようだ。



「私よりも……魔女狩りのほうをどうにかすべきでしょうに……」


「それはすでに試したようですよ」


「え」


「ニュースになっていませんがね」



 松上少年が杖を突くと、映像が切り替わる。


 そこには、魔女狩りに発砲している警官、あるいは魔導警官の姿が。



「ご存じのように。魔女狩りに女性の魔法使いは無力です」


「だからって……」


「だから――現状唯一対抗できているあなたが重要なんですねえ」



 私の指を突きつけ、松上少年は皮肉げに笑う。



「それに、正体もね。女性なら、その特性をより研究するために拘束……本来貴重なサンプルでありますが、今の魔法研究機関のレベルでは……モルモットか、下手すれば解剖」


「うわ」


「男性なら、まあ密かに抹殺ですな。お偉方が生かしておくはずがない」


「……」


「幸いというべきか、否か。あなたは特殊な女性ですけどね」


「魔法を使える男ってのは、そんなにまずいものなの?」


「まずいでしょうねえ。少なくとも彼女らはそう考えている」


「頭痛くなってくる……」


「魔法は神が優れた女性にのみ許した奇跡の技。低俗で野蛮な男に許されるものじゃない」


「それじゃまるで危ない宗教だわ……」


「実際宗教ですよ。日本は魔女教の統べる宗教国家になりつつある」


「まったく……」



 私は精神的な頭痛を抑えながら、立ち上がった。


 すでに汗は引いていた。呼吸も整っている。



「ひょっとして、私たちって国家の敵?」


「ははは。そうなりたくはないですがねえ」


「そこまでの覚悟は正直なかったわ……」



 私は強い脱力感にへたりこみたくなった。



「ま、幸いというか、まだ完全に……というわけでもない。政府も一枚岩じゃない」


「けど、今は魔法使いの女性が総理大臣で……」


「そうですがね。正直あの人は客寄せパンダ、あるいはお神輿だ。政治家としての才覚は全くないと思いますよ……」


「パフォーマンスはうまいけどねえ」


「でも、それがどの程度通じているやら。実際男性はみんな冷めてますよ」


「あー、そういえばそんな感じか」


「そもそも、優れた魔法使いイコール優れた政治家や指導者じゃないんですけどね。優秀なる学者やスポーツ選手が良い政治家になれるかって考えればわかる。そういう人もいるけど」


「よくわからんけどさー。何とか俺らに味方してくれる政治家さんとか作れねえんか」



 横から、田中くんが口を出してきた。



「まさにその通り。そういうコネがあるのがもっとも良い」



 と、松上少年は楽しそうに笑った。







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