その5、アニメにない展開になる
ピンチが続きます。
不気味な鳥みたいな顔の、化け物。
それがマントとも翼ともつかないものを広げ、空中にいる。
いや、なんで?
私は思わぬ事態に混乱し、思わず今日の日付を確認した。
アニメでは、魔女狩りが現れるのは物語の終盤、劇場版である。
それが、何でこんな時期に現れるのだ。
記憶違いだったか……?
確認しようにも、前世の情報など再確認できるわけがない。
ど、どうしよう、どうしよう。
他の女子と同様、私は脅えることしかできなかった。
アタフタしていると、
「そこのお前! 何をしている!」
地上から、警棒を持った警備員が二人怒声をあげて飛んでくる。
飛行魔法を使える魔法使い。当然女性だ。
見るからに怪しい人とも何ともわからない相手だが、臆する様子はなかった。
それを頼もしいと思う反面、まずいんじゃあないか? とも思う。
記憶通りなら、魔女狩りに女性の魔法は効かないはずだ。
一人が取り押さえようとすると、
「************」
意味不明な声をあげ、魔女狩りは腕を振るってそれを弾き飛ばした。
「おとなしくしろ!」
途端に、もう一人の警備員の警棒から小さな稲妻が走る。
多分、動きを封じるスタンガンみたいな魔法だ。
だが、警棒と稲妻を食らっても、魔女狩りは微動だにしなかった。
逆に腕を伸ばして警備員を捕まえると、
「***」
虫でも叩き落すように、地面に向かって放り投げる。
これは、やばい……。
ていうか、早すぎる。
まだ準備も何もしていないの!?
「逃げて!!」
と、私は叫ぼうとした瞬間、くるりと魔女狩りがこっちを振り向いた。
これ……死んだ?
そう直感みたいなものを感じたと同時に、教室窓ガラス全てにひびが入る。
ぺたん、と私は尻餅をついた。
ガラスが砂のようになって砕け散り、外気が入ってくる。
嫌な風と共に、魔女狩りは教室へと侵入してきた。
「ぎゃあーーーーーーーー!!」
誰かが叫んだ。
まるで映画みたいなだな、と私は思った。
たちまち教室はパニックになり、生徒は我先にと廊下へ逃げ出していく。
「く、黒羽さん、立って! 急いで……!」
「……! ……!」
さっさと逃げればいいのに、まきめとエミリは私を引っ張って叫んでいる。
アニメでは悪役だったが、実は意外といい子なのかもしれない。
魔女狩りはパニックになっている教室をぐるぐる見回す。
やがて、這うように逃げている一人の女子を見た。
かと思うと、鳥とも獣ともつかない手が――
その指に生える爪がナイフのように鋭く大きくなった。
「先、逃げて、早く」
私はというと、引きつった声でまきめとエミリを突き飛ばすので精いっぱいだった。