その48、基本のできる田中くん
体調不良で少し更新休んでました……。
「おっと……」
いつの間にか時間がたっていることに気づき、私は顔を上げた。
見ると、白い地面に田中くんが大の字になっている。
上半身シャツだけになり、全身汗だくだった。
「ま、今日のところはこれくらいにしておきますか?」
それを見ながら、顎を撫でている松上少年。
「こんなんで、ホントに、魔法が使えるようになるのかよ?」
「試してみましょう」
汗だらけでつぶやく田中くんに、松上少年は笑いかけた。
「では、手のひらに魔力を集中して……ボールをイメージしてみて下さい」
「いめーじって……」
ブツクサ言いつつ、田中くんは手のひらを上に突き出す。
数秒後。
田中くんの手から、ぼんやりと光の玉が浮き上がった。
魔力の塊だ。
「へー……。ホントに効果あるのね?」
「彼は体力があるようですからね。おかげで早くできました」
「で、こいつをどうするんだよ?」
田中くんは起き上がりながら、ボールを見つめる。
「それが基本。後はそれをどういう風にコントロールするか、だね」
私は腰に手を当てて、クスリと笑った。
「ふーん?」
「まあ、次の段階は全身にくまなく行き渡らせるってとこかな」
「全身にね……」
ようやく呼吸を落ち着けた田中くんは目を閉じる。
と、光の玉は手のひらに引っ込んで――
やがて、田名君の体が淡く光り出すのだった。
「ほほー。基本値が高いので、もうそこまで行けましたか」
「これでどうなるんだ?」
田中くんの質問に、松上少年は嬉しそうに手に自分の杖を持った。
「だから。これでどうするんだよ?」
全身を発光させながら、尋ねてくる田中くん。
「できるだけ集中させて練度を上げるんです。やがて無駄な発光もしなくなる」
「光るだけで何にもできねーのな」
田中くんはつまらなそうだった。
まあ、気持ちはちょっとわかる。
「そうでもないんですがね。基本をしっかりしないうちは危険ですよ。柔道でも受け身を練習しないで乱取りしたら危ないでしょう」
「なるほど」
私にはよくわからない例えだが、田中くんには通じたようだ。
「さて、それでは今日は解散ということで……」
松上少年が言いかけた時だった。
私のスマホに着信が……いや、これは。
「どうやら、近くに魔女狩りが出たようですね」
松上少年が杖で地面を突くと、四角い画面に風景が映った。
これは……町の中央部あたりか!?
公園の付近を、翼を広げた魔女狩りが群がっている。
あそこは確か市立植物園の近くだったっけ……。
「行きますか?」
「……まあ、仕方ないけどね」
私は嘆息しながらも、鳥型ツールの魔力を確認した。
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