その44、そしてみんなの杖がそろう
ヒーロー活動拡大の予感……?
そして。
「じゃあ、次は田中さんのを作りますので、ちょっと協力してください」
と、松上少年は色んな器具を田中くんにつけ始めた。
「ふむふむ……。なるほど、単純だけど、高濃度で……ふむふむ」
一人で納得しながら、少年はタブレットを操作し続ける。
何やら検査すること10分弱。
「よろしい、大よそ把握しました。では、作っていきます」
と、さっきよりもテンポ良く杖が作成されていく……。
全体的には、金属の棒を作っているように見えた。
というか、まるで刀鍛冶みたいである。
「最後は、あなたの協力がいります。この鎚で芯棒を打ってください」
「ただ打つだけか?」
「いえ。あなたのイメージする、理想の杖を思いながら」
「よっしゃ。わかった」
そういう次第で、田中くんはガンガンとリズム感良く打っていく。
いつの間にか二人の少年は汗だくになり、恍惚とした表情に……。
これ、大丈夫なのかな?
と、思っていると――
「…………。できました!」
どっかから冷たい風……冷気が吹きつけて、蒸気が舞った。
見ると、暗い金色に輝く棒と、先端には握りこぶしみたいなゴツゴツの結晶。
結晶は赤く輝き、強い存在感と魔力を放っている。
「ふーーーん? これが、俺の……かい?」
「ええ。握ってみてください」
松上少年に促された田中くん、ゆっくりと杖を取り、二~三度振るった。
その度、赤い粒子が飛び散って輝く。
「いやあ、苦労しましたよ」
汗をぬぐい、松上少年は言った。
「確かに……。見た感じ、どっちも私のより凄そうじゃない?」
荒い息の松上少年に、私は買い置きのスポーツドリンクを差し出す。
「まあ、あなたの場合は少し特殊ですからねー」
ドリンクを素直に受け取り、松上少年は困った顔。
「私は魔法『少年』じゃないしね?」
「でも、単なる魔法少女でもない」
「そうね。何だかよくわからないけど」
「強い魔力を持っているのはわかりますが、実に珍しい。中性的? いや、無性的というか、無属性というのか……。そのへんも知りたいと思ってるんですが」
「自分でもわからないからね。難しいね」
「そもそも、その杖はどうやって作ったんですか?」
「さあ? 貰いものだから」
「もらったって。どなたに……?」
「サラリーマン風のおじさん?」
「えええ?」
事実を事実のままに言ったのだが、少年は混乱したようだった。
「そんで。杖をもらってどうすればいいんだ? そもそも……」
これはどういう集まりなんだよ? と、田中くんがもっともな意見。
私は松上少年と顔を見合わせ、肩をすくめた。
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