その43、松上少年は杖を作る
魔法少年お手製アイテムの作成!
「ほほう、これはこれは……!」
白い空間に入るなり、松上少年は感心しきった様子である。
「……これ、どこだ?」
一方、田中くんのほうは悪い夢でも見ているような顔。
「見事な魔法空間ですな。空間だけじゃなく、施設もお見事……」
松上少年は格納庫を見ながら、ウンウンうなずいている。
「しかし、これ。あなたが作成したものじゃないですね?」
「……何でそう思うの?」
「だって、これの作者にしてはあなたの魔法はどうもお粗末だ」
「悪かったわね。まだ習い出したばかりなのよ!」
ズケズケという松上少年に、私は思わず怒鳴ってしまった。
少年は、まったくもって堪えた様子はないが。
「とはいえ、こういう施設があるならありがたい。早速に我々の杖を作りましょうか。運んでほしいものがあるんで、手伝ってもらえますか?」
と、田中くんの袖を引っ張る松上少年。
「お、おおう……」
頼まれた田中くんは了承して、松上少年についていった。
私もちょっと中から覗いてみると――
部屋のどこにかくしてあったものやら。
男衆二人はいくつもの木箱をこっちに運び込んできた。
数にして7つほど。
大きさはバラバラだが、最大のものは棺桶みたいなサイズ。
「これ、何?」
「杖の材料です。短期間でこれだけ集めるのは苦労しましたよ」
言って、松上少年は格納庫に運んでいくのだった。
「ちょっと、隅っこのほうをお借りしますよ」
格納庫で箱を開けると、松上少年は何かを組み立てたりし始めた。
「手伝うか?」
「いえ、ここからはけっこう。なに、すぐできますよ」
そう言っているうちに、何をどうやったのか大きな木製の机がでんと完成した。
松上少年は机の上へ何やら載せていく。
何かの実験器具のような、大工道具のような……。
どうやら、魔法――魔術に用いるものなのは辛うじて理解できるが。
「魔法使いというのは、概ね杖を持っているものです。これは何故でしょうか?」
「魔力を効率よく使って、かつ体への負担を減らすためでしょ?」
うちの学校では入学前に予習するような知識。
「その通りです。さすがですね。最近は量産された廉価品が流通してますが、本来は自作するのが当たり前の道具なのです」
確かに、古代の魔法使いはそうだったとものの本にはあった。
いや、異世界のほうでは、今なお常識的なことか。
「しかし、専用の杖を作るには相応の知識と技術がなければいけない。僕は比較的早くそれを身につけましたが……」
言いながら、松上少年の手は止まらない。
木材を削り、何を鋳造し、鎚で叩く。
その見事な動きに、私も田中くんも時間を忘れるほどだった。
よく見れば、格納庫の設備もフル活用している模様。
「日本でもこれだけのものがそろう施設は、ないでしょう。実に助かりました……」
松上少年がそういった時には、机の上には見事銀色の杖が出来上がっていた。
長さは1メートルほどか。
先端に、双頭のドラゴン? の、意匠が施されている。
遠目からでも、魔力の波が伝わってくるような出来だった。
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