その41、パーティーにて……
謎の少年・松上太郎!
松上少年と出会ってから、翌日。
私は久しぶりに帰ってきた母と共にあるパーティーに参加していた。
魔法関係の業界による小規模なものだ。
これ自体は、前から予定されていたものであり、参加も予定通り。
なのだが。
「……」
「お姉さん、はじめまして」
パーティーで、蝶ネクタイをつめた松上少年と出くわしたのである。
隣にいる紳士は、松上氏。
大手電機メーカーの社長である。
日本で魔法の技術を組み込んだ電化製品を開発した功労者……らしいが。
「はじめまして」
「こんなきれいなかたに会えて、僕、感激です」
大人びた口調でお世辞を言う少年に、私は嫌味を言われた気分だった。
そりゃあ確かに、黒羽は美少女なのだ。なのだが――
「聡明そうなお子様ですね」
「い、いやあ、変にませているというか、ははは……」
世辞を返す母に対して、松上社長はどこかぎこちない。
まるで、息子におびえているようにさえ見えるけど。
「あ、お姉さん、あっちに美味しそうなスイーツがありますよ?」
「お母さん、ちょっと行ってきます」
手を引っ張る松上少年に付き合いながら、私は母に手を振る。
そっと振り向くと、母と社長は何か話しているようだ。
社長の顔色はあまり良くない。
時折、チラチラこちらを見ているようだった。
「……あなた、お父さんをいじめてるんじゃなくって?」
並んでいる果物からイチゴを選び、私は軽く言ってやった。
「孝行息子なつもりですがねえ」
「どうだか……」
そして、私たちは会場の隅っこへ移動する。
「まさか、ホントにあそこのご令息だったとはね……」
「お互い気苦労の多い家に生まれましたね」
「私はそうでもないけど」
お互い笑顔を作ったまま、私たちは棘を刺し合う。
「ねえ、黒羽さん。あなた、ひょっとして転生者じゃありませんか?」
「は?」
唐突な言葉に、私は一瞬笑顔を消してしまう。
「僕の場合、そうなんですよ。こことは違う歴史を歩んだ世界から、転生してきた」
「……。どっかの誰かの生まれ変わりってこと?」
「よしましょう、変な探り合いは」
「……はいはい」
「大人として生きた知識も記憶もある。けど、ま。それは大して役に立ちませんでしたがね。元は凡人だったんです」
「今は、違うと?」
「こう見えて、多少頭は働きます。そして……魔法も少々……」
「ふーん……。なら、私の代わりに色々やってくれないかしら? けっこう忙しいのよね」
「生憎、僕もそんなに暇でもないのです。いろいろ勉強することもありまして」
松上少年は相変わらずのこまっしゃくれた態度。
「しかし、お互いに協力すれば、悲劇的な可能性を少なくできるでしょう」
「わかりやすくおっしゃいなさいな。頭、いいんでしょう?」
「僕と協力して、魔女狩りの被害を少なくしましょうよ」
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