その4、スマホで色々調べてみると
いきなりピンチになったりします。
話してみた感じ、外見の印象とは逆だった。
まきめは文学少女っぽい外見に反し、積極的でおしゃべり。
エミリはややおっとりした感じで、話し方も柔らかだった。
「でも、最初は驚いちゃいました。黒羽さん、男性魔法使いなんて言い出すから……」
話すうちに、まきめは少しからかうように言ってきた。
「確かに、人間で男性の魔法使いっていないよねー?」
エミリも同じようにうなずいている。
確かに、改めて記憶に照合すれば、
『魔法使いになれるのは女性のみ。これ常識!』
という社会のようだった。
他種族にしても、存在はしても数はさほど多くない。
黒羽は家の関係で関わることが多かった。
なので、たくさんいるように錯覚していたきらいがある。
……これは、もしかしてあまり楽観できぬかもしれない。
「さっきはちょっと変なところ見せちゃいましたね。単純な疑問だったんですけど」
私はそう誤魔化して、笑ってみせた。
途端に、二人の顔が赤くなる。
自分じゃ肉眼で見えないが、黒羽は同性も認める美少女である。
「男性の魔法使いとかいたら、どうなっていたのかなと。子供っぽい疑問ですわね」
ちょっとお嬢様を意識して、私は口元を隠してまた笑う。
「うーんと。あ、あった」
エミリはスマホを取り出して、何か検索したようだ。
「えーと、男性の魔法使いについては色々と研究されてるみたいですよ。でも、色んな団体が反対してて、特に日本では法律で禁止されてます」
「ふむ?」
私も調べてみるが、なるほど、確かにそういうことらしい。
欧米やイスラム圏では魔法自体に対する風当りも強いみたいだ。
検索すると、『反魔法テロ』というのが初期ではかなり吹き荒れたらしい。
といっても、10数年も前のことだけど。
10代の女の子からすれば、過去の歴史かもしれないな。
日本は異世界とのゲートが最初に開かれ、最初に異世界人と接触した国でもある。
そして、最初の魔法少女……魔法使いが誕生したところでもあるのだ。
同時に現在地球上でもっとも魔法使いの多い国でもある。
というか、ほとんどの女性が魔法使いだと言えるか。
公認されるような資格ではなく、単に魔法が使えるだけなら――
ある程度の訓練と勉強をした女性なら誰でも魔法は使える。
ただし、前世のアニメみたいな派手な魔法は限られた人間しか使えないが。
私は試しにスマホを宙に浮かせてみる。
初歩の初歩たる念動力魔法だ。
こんなもので、意外と難しい。
紙よりも重いものとなると、それなりの集中力と精神力がいるのだ。
「黒羽さん、すごい! もうそれだけ念力が使えるなんて」
見ていたまきめは感動した声で言った。
この学校、公立路地屋魔法高校に入学できる生徒。
相応の資質を持った女子でも、初歩魔法ひとつ使うのに苦労する。
ゲームみたいに初期からファイヤーボールが使えたりするのは、まさに天才だろう。
色々厳しいもんなのだ。
と、私がいきなり教室が騒がしくなった。
みんな窓の外を見て、何か言っている。
何となく嫌な予感をおぼえながら、私も窓の外を見た。
そこには、宙に浮かんだ『魔女狩り』がいた。