その33、魔法使いが偉い世の中
魔法少女世界の闇……。
「やだ、もう……」
「黒羽さん、危ないよ、はなれよ?」
暴れる箒少女たちに、まきめやエミリはすっかり脅えている。
まあ、温室育ちのお嬢様たちだからしょうがない。
しかし、たち悪いな、あいつらは……。
魔法はこの世界に数多くの発展や問題解決をもたらした。
でも、光もあれば影もある。
人間で魔法を習得し、使うことができるのは女性のみ。
その事実は、色んなものを歪ませてもいた。
異常な女性至上主義者たちの増加である。
最初彼女らは、いわゆる萌えアニメだのエロ漫画だのを規制し始めた。
前世の世界でも、世間的に下に見られがちな分野である。
それらは声の大きく、強くなった政治家や運動家によって瞬く間に排除されてしまった。
今現在、普通の書店はもちろん、コミケや通販でも売られていない。
一応明確に禁止されているわけではないのだが――
それをすると、魔法使いの運動家たちに猛烈な嫌がらせを受けた。
そうなると出版社のほうでも、自粛せざる得ない。
また、コミケではそういったジャンルが強制撤去されたり。
他にも色んなものが嗜好品の中から消えていった。
が。オタク文化の中でもBLとかそういった女性の好むものは除外。
コミックでも、『男性が受け……』ならお目こぼしを受けるのだ。
なので、女装少年もの――いわゆる男の娘モノは生き残っている。
また、ショタものも同様。
理屈で考えればとんだダブルスタンダードじゃねーかと思うのだが。
ただ、近年ではさらに締めつけが強くなっているようで。
AVはみんな女性向けのものばかりになっているようだった。
また生き残ったショタ・女装も……。
女性が描き、女性が楽しむものだけが許されるようになってきている。
前世オタクだった者として、これはどうにも許しがたい。
しかし、それらはまだ良しとして。
いや、ぜんぜん良くはないのだが。むしろ極悪なのだが。
また別に問題となるのが、今目の前で暴れているような連中だ。
魔法に長けた者はエリート!
というのが、この社会の鉄板ルールみたくなっているけれども。
魔法に優れている者が、全員人格や知性に優れているわけではない。
ないのだ。
いわゆるDQN全開な性質のくせに、魔法の才能がある者。
そういう連中が、ああやって暴れるのだ。
また魔法使いは何かと優遇されるので、司法もぬるく、甘い。
同類同士の喧嘩でもえらい迷惑である。
それ以上に悪質なのは、魔法を使って人を攻撃して遊ぶああいう連中なのだ。
さらに、また悪質なのは。
被害者が男性であると、警察はもうほぼ知らん顔をさらすようになる。
下手に反撃……できないことがほとんどだが……すると、逆に被害者が悪いことに。
賠償金やら刑務所やらが待っているのだ。
それがわかっているから、あの手の連中は主に男性を狙う。
前に調べたが、小学生の男の子が大けがを負わされた事件でも、犯人は放免。
子供でもあっても、男性は――……ということらしい。
何とも言えん、嫌な世の中だと思いながら私は気分が悪くなった。
「……おやめなさい!」
ついに我慢できず、私は撃たれている少年の前に立った。
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