その32、楽しい休日の途中で
疲れをいやすべく休日を楽しむ主人公たちですが……?
ちょうど折良く。
私は伝手から、映画の無料鑑賞券を数枚手に入れた。
金だのコネだのがある家はこういう時に良い。
私はそこから3枚だけもらい、後は使用人の希望者に配った。
そして、次の日曜日。
私とまきめ、エミリの3人はのんきな休日を過ごすつもりだった。
「映画、二人はどうだった?」
「すごい楽しかったです。私、あの俳優さんのファンで……」
「面白かったけど、ちょっと照れ臭かったかなあ……」
まきめは素直に喜んで、エミリは正直今いちだという感じ。
人気の俳優陣をそろえた、少女漫画原作のラブコメディ。
実は私も面白いことは面白かったけど、それほどのめり込みはしなかった。
何か、あくまで他人事という感じで。
次はお昼だが――
「よければ、お昼は私にまかせてくれない? 招待券があるから」
「おごり、ですか?」
「ちょっと言いかた!!」
目を輝かすエミリに、それをたしなめるまきめ。
そして、かくして。お店に行った後は。
「はええ……すごいお店ですねえ」
「メニューがよくわかんない……」
招待券は座席も指定で、個室。うーむ、ラグジュアリー。
料理はおすすめのメニューを頼むことにした。
みんな未成年なので、当然お酒はなし。
「おいし……! これ、すご……!」
「……!? ……。……。……。」
まきめは驚嘆し、エミリは無言で食べることに集中している。
私は料理よりも、二人の反応を見るほうがちょっと楽しかったり。
料理は十分に美味しかったけど、初めて食べるわけでもなし。
そして、お店を出た後、
「どっか、遊んでいこうか?」
「私、カラオケがいいなあー」
「ちょっと! ええと、黒羽さんはどこか行きたいところとか」
そんな感じで、午後も楽しくなろうという時――
「きゃはははははははは!」
甲高い少女の笑い声に、私はハッとして顔を上げた。
笑い声に感じる悪意。
それに反応してか、私は思わず変身ワンドを出しかけた。
見ると、箒に乗って女の子が3人飛んでいる。
……まあ、こういう光景自体は、この世界でありふれたものなのだが。
少女たちはビュンビュンと危険極まる飛行を繰り返していた。
そのうちに、魔力の弾丸を撃ち出して、ゴミ箱を吹っ飛ばしたり。
大した威力はなさそうで、人がケガするほどのものではないだろう。
だが、あんな真似されたら通行人はたまるまい。
「お前ら、何様のつもりだーーーーーーー!!!」
私が呆れていると、一人の少年が空飛ぶ箒少女たちに向かい、怒鳴っていた。
「バカヤロー! 降りてこい!!」
「やーっだよ! べーだ!!」
少女たちは嘲笑し、少年に向かって魔法弾を撃ち始める。
「いててててててて!!!」
まるで節分の鬼のごとく、少年はボロカスにされるのだった……。
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