その31、主人公は疲れていた
色々あって、疲れている主人公です……。
それからも、あちこちで魔女狩りが目撃されている。
いい加減にしてほしいが、やむ気配はない。
だから、まあ私は今日も学校の図書館で調査中……。
他種族の男性魔法使いの情報。
それに人間の男性魔法使いのことも。
しかし、県内一……いや、日本でも有数とされるここの図書館でも――
「収穫なしか……」
私は本を閉じ、ほうとため息。
いつの間にか、閉館時刻になってしまっていた。
「やっぱり、他種族の魔法使いに関しては資料が少ないですねえ……」
横で同じく本を読んでいたまきめは眼鏡をはずしながら言った。
エミリはうつ伏せになってZマークをたくさん出している。
つまりは寝ているのだが。
「あなたたちも、別に付き合う必要ないのよ?」
「いえ、大丈夫です……。勉強にもなるし……」
そう言うまきめだが、明らかに目に疲れが出ている。
「ふえ……? ごはん……?」
幼児みたいな寝ぼけ声で顔を上げるエミリ。
やれやれ……。
かくして、図書館を後にする私たちである。
「でも、黒羽さんはどうしてこんなに男性魔法使いのことを?」
「んー……それは」
「やっぱり、例のマスクヒーローのことが気になって?」
「うん?」
「ネットで話題になっているんですよ、ほら」
「あらま……」
どうやら、巨大蜘蛛やコウモリを倒した映像が拡散し続けているらしい。
「何か動画は削除されちゃう傾向あるんですけど、それでも広がってるみたいで……」
「物好きな……」
「えー、まさにヒーローみたいで格好いいと思うけど……」
「現実であんなカッコして暴れてたら、バカか異常者だわ」
言ってから、私は赤面してしまう。
我がことながら、今さらながら……。
すごく、恥ずかしいです。
変身していると気分が高揚して、そんなことは忘れてしまうのだけど……。
「黒羽さんはクールだなあ」
と、のんきな声のエミリ。
「ひ、人助けはいいんだけど、あのスタイルはね……」
言って私はネットを確認。
「うぐ」
その途端に、悲鳴を出しかけた。
『黒い仮面の魔法使いは、テロリストの可能性があるとして、警視庁は……』
人助けはしているけど、怪しさ爆発だもんなあ……。
私としても、もうやりたくはないけど、でも、そうもいかない気がする。
「はあ……」
私はとびきり大きなため息の後、
「ねえ、二人とも……。今度の休み、どこか遊びにいかない?」
そんな提案をしてみた。
「え?」
「うん、いいですねい」
まきめは驚き、エミリはふたつ返事。
「いや、何度も図書館に付き合わせちゃったから、そのお礼をかねて……ね」
「そうですか? えへへ……」
「どこ行く? どっか買い物とか……」
そんなわけで、その帰り道はガールズトークが大いに盛り上がった。
色んな意味で疲れているし、骨休めせにゃ……。
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