※おまけ『その後の地球にて』
このおまけでこの話も一応の完結となります。
次のメインもどうぞよろしく!
予定通りというべき……。
世界中の魔力を収束させて、日本列島は異世界に転移した。
この無茶によって、他国の転移は大幅に遅らせることできたわけである。
「我々は未来に、災厄を回避することができるだろう!」
と、アメリカ大統領は演説した。
何はともあれ、一時しのぎにはなったと言える。
しかし、当然ながら。
日本という国がなくなったことで世界は大きく揺らぐこととなった。
列島はじめ日本の国土が消えたことで、東アジアを中心に気候が変動する。
日本海は消滅して、太平洋がさらに巨大になった。
中国をはじめ東アジアは邪魔がなくなったと喜んで海に乗り出す。
しかし、そもそもが転移という邪悪な魔術によってなされたこと。
その反動というのは、決して小さくなかった。
日本列島のあった海域には無数の海棲モンスターが跋扈する地獄の入り口に。
船はたちまち襲われ、海の藻屑となっていった。
海中だけでなく、海陸両棲型のモンスターが次々に沿岸から這い上がってくる。
もはや海洋資源を採るどころではなくなってしまった。
海は安全ではなくなったということだ。
結局のところ、逆に陸地に閉じ込められる形になってしまった。
一向に減らないモンスターに業を煮やし、ついに中国は元日本海域に核を放つ。
その破壊は一時的にモンスターを減らしたかに見えた。
だが、大量の放射性物質と反応した魔素は、モンスターをさらに発生させる。
濃度を増した魔素によって、中国大陸は山海経の怪物たちがひしめくこととなった。
モンスターはどんどん増えていき、ヨーロッパやアメリカにも広がり出す。
藪蛇どころの騒ぎではなかった。
中国からどんどん難民が逃げ出すが、海はもはや地獄だ。
難民船があふれたことによって、かえってモンスターを引き寄せてしまう。
こうなると、いくら人道的にと言っても、難民に構っていられなくなる。
難民はモンスターを連れてくるのだから。
とはいえ、いくら入国拒否をしても、知ったことかと増える難民。
餌を求め、さらに増えるモンスター。
かつてのように、難民への優しい対応など――どの国もしていられなくなった。
大量発生するモンスターと共に、難民船も破壊せざるえなくなる。
そうなると逃げ場ない。
しかし。
地球上がダメなら絶望だというのは過去のことである。
この時代には、異世界ダイノヘイムという場所があった。
難民たちは無茶な転移魔法陣を乱発して、異世界へと逃げだす。
あるいは、先に転移した日本に逃げ込むつもりだった。
だが、そもそも異世界転移など人間の力で簡単にやれることではない。
そこには、優れた他種族による魔法の援助があったわけだ。
これがないということは、つまり失敗する可能性が大である。
ほとんどの場合、失敗魔法陣から生み出された土精によって潰されてしまう。
あるいは、単に地球上のどこかに転移する。
途中で失敗して、体の半分が別々の場所に跳ぶこともよくあった。
さらに、地球の7割は海である。
そうなると、7割は海中にそのまま放り出されてしまうのだった。
何とか陸地に転移できても、難民はどこでも厄介者である。
大抵はろくでもない結果に終わるのだった。
世界はより混乱して、人口はジリジリと減り続けることになる――
そして、またダイノヘイムを頼る羽目になるのだった。
ちょっとだけ関係のある新作です。
よければ読んでやってください。
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