その300、エンドゲーム
とりあえず、これでこのお話もひとまず完結です。
今まで読んでくださりありがとうございました。
「なかなかこないですなあ……?」
「婚約者ってのがどんなのが見たかったのに」
と、松上少年始め、関係者も集まる会場で私は挨拶に忙しかった。
豪華な食事に手を付ける余裕とてない。かなり疲れる。
面倒くさいなあ、少々ウンザリしてきた頃だった。
会場の出入り口扉が大きく開かれる。
一同の視線がそこに集まると、スーツ姿となった例のあの人が立っていた。
が。何故かその隣には、『あの子』がいる。
例のあの人は、その子の肩を抱きながら喧嘩でもしに来たような顔で入ってきた。
みんなポカンとしていて、向こうの親御さんを見るとだんだん顔が青ざめていく。
例のあの人はマイクを取って、簡単な挨拶をした後、
「刃光院黒羽! お前との婚約はこの場で破棄させてもらう!!」
と、宣言した。
は?
一瞬の沈黙後、会場内は不穏と不安に満ちてざわめいた。
「なんだ? あれ?」
田中くんは料理が載った皿を手にしたまま、珍獣を見るような顔。
聞いていると、私が取り巻きを使って『あの子』をいじめていたと告発。
証拠でも出すのかと思ったが、口で言っているだけだった。
いや、知らんがな。
見ると、向こうの母親は泡を吹いて倒れそうになっている。
「わかりました」
しょうがないので、私は応えることにした。
「それならそれでけっこうです。ですけど、この場で侮辱されたことについては後から弁護士と相談してから正式に抗議させていただきます」
自分でも驚くほどに気分が冷めていた。
で、まあ、当然ながら会場は大混乱である。
その後――
当然ながら婚約は正式に破棄となった。
向こうはご両親そろって何度も謝罪に来て、青息吐息である。
例のあの人は、両親に捕まってどっかに連れて行かれた。
寺にでも預けられたのだろうか?
そいから。
あの子のほうもまあ協力者というか共犯というか、そういうことで揉めた。
色々あったが、結局学校はやめることになったようだ。
気づけば、いなくなっていた。
「まさに悪役令嬢でしたなあ」
ゴタゴタが大方終わった後、松上少年は笑って言った。
私の親もこれでこりたのか、結婚については言わなくなっている。
「これが小説なら、あなたは失脚しておうちのほうも没落となるわけですが」
「問題起こしたのはあっちでしょうが」
「まったくですな」
どっちにしても――こっちとしても願ったりかなったりではあったからな。
例のあの人はともかく、家同士は禍根を残したくない、と思った。
あっちの企業との連携は今後重要だと思われたからだ。
そういうわけで、謝る向こうに対しては、
「まあ、若さゆえの過ちというやつでしょう」
と、うちの親をいくらかとりなしてやったが。
<通信。救援要請あり――>
そんなバカ騒ぎがあろうなかろうが、ダイノヘイムはモンスターだらけだ。
私はいつも通りに変身して飛び出していくのだった。
最後のおまけ話を投下して更新終了の予定です。
おまけと新連載を同日に投下するつもりなので、どうぞよろしく。
8月初日予定――