その201、アマゾネス怒って鉄球を振るう
サブ連載で歴史SF的なものを書きました。
こちらのほうもよろしく。
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「野郎、ぶっ殺してやる!!!」
「私は男じゃない!」
私は、朝から盛大に喧嘩を売られていた。
学校がしばし休みになり、ちょいと八郎くんの顔でも見てこようと思ったので。
研究施設『7番』へと出向いたのであるが――
いきなり、切れたアマゾネス・ケライノが鉄球を振るって襲いかかってきた。
「一体何の冗談よ!?」
「冗談だと!? てめえは冗談でオレの男をサキュバスに喰わせたのか!?」
「あ」
先日、岡田ユズルの代わりに田中くんを差し出してしまった件。
「おかげで北吉は一日腑抜けになったぞ!?」
「なんだ、一日ですんだの」
「何日も続いてたまるか!」
はあ……。サキュバスが手加減したのか、それとも彼のタフさゆえか。
どっちにしろ、予想通り性的不能になるようなことはなかったらしい。
「このままサキュバスが憑りついたらどうしてくれるんだ!!」
「他の男探せば? 強い遺伝子があればいいんでしょ?」
「ふざけんな! この地球であいつ並のヤツがそうそういるか!」
「そうなんだ」
タフだとは思っていたけど、田中くんは希少価値もあったらしい。
「あの場合は仕方なかったの。ごめんなさい」
「ごめんですめば、魔法はいらねえ!!」
ケライノは怒鳴って鉄球をぶん投げてくる。
私はそれを障壁で防ぎ、逃げ出す。
「待ちやがれ!」
「待てないよ!」
アホなやり取りだが、このままだと1000日くらい続きそうだ。
ちょっとコラまずいなあ……と思っていると、
「ふぎゃ!?」
いきなりケライノは鉄球を落としてぶっ倒れた。
見ると、指先に小さな魔法陣を展開させたヅカテ氏が立っている。
「この施設を壊す気か、君らは……」
呆れた顔で私を見るヅカテ氏。
「スミマセン……」
「まあ、話はさっきのやり取りで聞いたけど……。彼を差し出すとはなあ。一体どういうことなんだか? 詳しく聞きたいね」
「実はこれこれしかじか……」
私はしょうがなく、事の経緯を話したのだった。
「はあ、身代わりにねえ……。彼も運が良いのか悪いのか……」
「悪いんですか」
「そりゃまあ……。一応相手は魔族だからなあ。とはいえ、そうでもしなけりゃ、納得させるのも難しかったか……。今日本に来ているのは、人間を好むサキュバスだろうしな」
「あ。やっぱ、好みがあるんですか」
「そりゃ当然あるよ。でなかったら、わざわざ日本まで来やしない」
ヅカテ氏は頭を掻いて、嘆息。
「ははは……」
「しかし、サキュバスたちもテロ対策に追われて忙しい。そしてピリピリしてるだろうから。自然と餌を求めだすようになるわけか……。こりゃ面倒だ」
「ふうむ。ベルタエルフと奪い合いになるとか……」
「ありえるわなあ。とはいえ、ある程度の棲み分けができるだろう。問題は人間の女だなあ。またぞろ、テロに賛同するのが増えなきゃいいが……」
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