その191、本物というか3次元と出会った感想
北海道のゲート施設襲撃事件。
その翌日も、私は気だるい体を押して学校に行った。
正直一日寝ていたかったが、体力に余裕がないわけではないし、復学したばかりだ。
もう車での送り迎えはやめてもらい、自分の足で登校。
いや、飛行魔法を使ったりしているから、自分の魔力というべきか。
少し気分を変えるつもりで、いつもより早く家を出て、違う道を選んだ。
ブラブラしていると、多少は気が晴れる気がするし。
それに――今手元にいつもの変身スーツはない。松上少年に預けたままだ。
常時持ち歩いていたから、何だか変な気分である。
また事件が起こらなければいいけれど……。
さすがに生身で事件現場に駆けつける気にはなれない。
私がぼんやりと歩いたり飛んだりしていると、ふと聞き覚えのある声。
見ると、遠くで高校生らしき男女が歩いている。
女子のほうはいつの学校……というか、知り合い。
坂本ゆみかその人であった。
で、男子のほうはというと、背丈はゆみかとそう変わらない。
栗毛色の髪をした、きれいな顔をした少年だった。
美少年と言うのは、ああいうのを言うんだろうな。
多少男臭さが足りないが、女性受けはいいかもしれない。
……って。
岡田ユズルじゃねえか!!?
ゆみかの幼馴染で、ゆみかにラブしている一途な男の子である。
男性向け同人では扱いの悪いことで有名だったあの子。
ふーん……。
現実で見るとあんな感じなのか、華奢というか女装が似合いそうだな。
ネットでも三次元でも、
『さっさと女装しろや!』
とほたえる腐った女子の方々もいたっけ……。
ゆみかは私に気づくと、ブンブン手を振ってきた。
私は無視するわけにもいかず、しょうがなく手を振り返す。
「黒羽さんも、今から登校ですか」
「ええ、まあ……」
私はできるだけユズルを見ないようにして、会話をする。
適当なところで切り上げたいが、ゆみかが離してくれない。
いかんな……。このままズルズル行くとやばい気がする。
「じゃ、じゃあお邪魔だろうからもう行くね?」
「え? 邪魔って、そんなことないですよ。ね、ユズルくん?」
ゆみかは確認するようにユズルを見るが、美少年は苦笑している。
「えと、ちょっと早めに学校いきたいから、じゃ!」
私は強引に振り切って、学校まで一直線に飛んだ。
冗談じゃねえや。縁起悪い……!
向こうに落ち度はないのだろうけど、嫌なもんは嫌だ。
アニメでも嫌なのに、現実のドロドロ恋愛なんぞに関わってられるか。
そうではなくっても、こっちは色々大変なのだ。
私が学校を目指して飛んでいくと――
ふわふわッと、光る球がやってきた。
これは……魔力、というか発光魔法の一種だろうか。
それは私に近づくと、シャボン玉のようにパチンと弾けた。
と、空の上で腕組みをしている少女がこっちを見ているではないか。
げ……。
蛇塚ラブ子……!?
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