その188、ゆみか対黒いヴァルキリー
「無事ですか?」
「なんとかね。助かったよ……」
私のそばに来たゆみかは、ホッとしたような顔で少し笑う。
「その姿だと、やっぱりそのしゃべりかたなんですね」
「ん? あー……。そうだね」
今までの習慣みたいなものだろうか?
この変身スーツを着ている時は男性的な口調をついしてしまう。
まあ、公式の場で正体ばらしたわけでもないしな。ネット情報でも謎のままだし。
「新手……」
黒い女は魔力の槍を構えて、ゆみかを見た。
「スーツの具合が悪い。全力で戦えなくなってる」
「……わかりました。私に任せて?」
ゆみかはうなずくと、杖を構えて黒い女と対峙した。
猫耳魔法少女と、真っ黒な戦乙女――何ともシュールな光景だ。
そして、魔法合戦が始まった。
「魔爪!!」
ゆみかは魔力で杖を包んで虎の手みたいな形にした。
そして、黒い女とぶつかり合う。
何度も打ち合っては離れ、離れては打ち合う。
「散弾!!」
「ち!!」
ゆみかの魔力弾は精度が高く、威力もあるようだ。
大して黒い女の魔力弓は狙いをつけるのに時間がかかる模様。
と、いってもゆみかのそれと比べての話だけど。
女はついに弾を受ける体勢で突っ込み、強引に接近戦に持ち込もうとする。
黒い女……いや、少女とするほうが正しいのかな?
どうやら年齢は、少なくとも外見年齢は若いようだ。
高校生、あるいは中学生くらいかもしれない。
そんな少女があれだけの魔法を駆使できるのということは……。
よほどの才能を持ち、かつ訓練を積み重ねてきたに違いない。
そう思っていると、ゆみかが槍で弾かれ、押され始めた。
おっと、いかん。見てる場合じゃない
<魔力弾。連続発射――>
私は魔力弾をできるだけ狙いすまして連射した。
「くっ!」
黒い少女はすばやくかわして、こっちに槍を投げてきた。
危なっ……!!
私がかわすと、魔力の槍は下まで飛んでいき、下の道路を貫通して地中に消えた。
やっぱ、かなりの威力だな……。物騒な相手だこと。
「魔砲!!」
しかし、私の割り込みは無駄ではなかったようで。
その間にゆみかは魔力を充填して、大技を繰り出した。
「……!!」
魔力の砲撃を浴びて、黒い少女は声のない叫びをあげて吹っ飛んでいく。
やったか?
いや……。黒い翼を大きく羽ばたかせ、少女は停止した。
そして、巨大な魔力の矢を放ってきたものである。
待てよ……? 違う。これは……でかいんじゃない!?
魔力の矢は途中で分散して、無数の細かい矢となって襲いかかってくる。
私はあわてて魔力の盾でそれを防ぐ。
ゆみかも障壁を張っているが、矢は地上にも降り注ぎ、さらに被害を大きくした……。
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