その187、限界に至ってしまう
魔力消費が大きいから、急いで決めなければ!!
私は黒い女に接近して、回し蹴りを放った。
「ふん……!」
黒い女はすばやく魔力で盾を編むが、盾もろとも蹴り倒す。
吹っ飛ぶところを追いかけ、その腹に魔力を込めた掌底を叩きこんだ。
衝撃プラス麻痺の魔法をこめた攻撃である。
「ぐう……!」
戦闘不能、前後不覚になるはずが、女は耐えて反撃してきた。
槍をかわし、私は蹴りで女の顎を撃ち抜く。
だが、浅い……。
当たる直前、女は自分から後ろに飛んだのだ。
私を手強いと見てとったのか、女はだんだん回避や防御に徹し始めた。
そうなると速度があり、機動力に優れるだけに捕まえにくい。
できるだけ細かく当てていくが、どれも決定打にはならなかった。
しかし、相手もノーダメージではない。少しづつだが、動きが精彩を欠き始めた。
「はあ!!」
私はさらにブーストして、膝蹴りを腹に打ち込んだ。
今度は、まともに入った。
「がはっ……!」
女はわずかながら空中に吐瀉物をまき散らし、動きを鈍らせた。
好機!!
私はそのまま一気にとどめをさそうとするが――
バチン……。
急に嫌な音がして、スーツの一部が弾けた。
途端に、魔力制御が緩んで相手を素通りしてしまう。
まずい……。ダメージで破損したのか!?
私はあわてて魔法で応急措置をすると、再度女と対峙する。
だが、力を込めた途端にスーツのあちこちから火花が飛び始めた。
なんだ……!!?
<危険。危険。魔力の過剰増幅。使用魔力の減速を推奨――>
はあ!? つまり、あんまり魔力を使うなってこと!?
そんなことを言ってる場合じゃないのに……!!
私があわてていると、体勢を立て直した女が魔力の槍を振るってきた。
回避するが、その間にもスーツは悲鳴をあげ続ける。
何てこと……。こんな時に故障……? するなんて。
とはいえ、まさかスーツを脱ぐわけにもいかない。
私は仕方なく魔力を抑えながら、戦うしかなかった。
そうなると、全力を出せない私はどんどん追い詰められ始める。
簡単にやられもしないが、勝つことができない……。
相手の攻撃をか防御するばっかりになってしまった。
これはまずい……。
優位に立っても女からは感情らしいものは読み取れなかった。
機械的に、私を追い込んでくるばかりだ。色んな意味で頭に来るな、こいつ。
どうする……?
私の脳裏に、『撤退』の文字が浮かんだ時だった。
「魔弾!!」
横から、魔力弾が飛んで女をのけぞらせる。
「私が相手……!!」
勇ましく叫びながら、そいつは杖から魔力弾を連射しまくる。
猫耳に、尻尾のはえたその美しい少女は……。
リリアンゆみかこと――坂本ゆみかその人だった。
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