表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
182/301

その182、久しぶりの登校



 インキュバスのことは置いといて……半年ぶりの校舎に、半年ぶりの教室。


 何だか妙な気分を味わいながら、私は足を踏み入れた。



「あ……!」


「久しぶり!!」



 入るなり、後藤まきめと吉田エミリが駆け寄ってくる。



「半年もどうしてたんですか!?」


「本当に来た……!」



 まきめとエミリはそれぞれに言いながら、私の手を取ってくる。


 一応、SNSなどで定期連絡はしていたから音信不通ではない。


 それでも、こうして顔を合わせるのは半年ぶりだ。



「二人とも、変わりない?」


「自分じゃわからないけど、周りは色々変わっちゃったかも……」


「退学してった子も多いよ」



 と、二人は教室を指すのだった。



 なるほど……。



 そういえば、遅めに登校してきたの割に人数が少ないようだ。


 やはり、魔女狩りの暴れた後遺症があったのだろうか……。



 するとまきめがそっと耳に口を寄せてきた。



「……あの、黒羽さんは大丈夫ですよね?」


「何が?」


「その……テロとか」


「ああ……。警備がしっかりしてきたからうちは大丈夫よ」


「そうじゃなくって、そっちじゃなくって、その……」


「……?」



 どうもまきめはハッキリしない。奥歯に物が挟まったような感じだ。



「――黒羽さんには、変な勧誘とかなかった? 魔女党とかの……」



 見かねたように、エミリも耳打ちをしてきた。



「魔女党? そんなものないけど……。まさか?」


「そういうのが、最近多いみたいなの。ガクセーウンドーか、しんないけど、学校にも行かず変なことやってる子もけっこういるんだ」



 と、エミリは理解できない、という顔で言った。



 確かにSNSで変な主張をしたり、吠えたりする連中も多いけど――



 そうか……。


 より危険な連中は、SNSで堂々と発信したりせず、水面下に行ってるのか……。



「忙しそうだから、メールとかでもあまり話さなかったけど……。うちでもけっこう揉めたりしたこともあったんだ。ダイノヘイムの子と喧嘩が起こったり」


「何でまた……」


「向こうは遅れてる、いいかげんに卵子オンリーに切り替えるべきだって」



 卵子オンリー……すなわち、卵子同士で子供を作ることだ。


 いち早く広まった魔法技術であり、魔女党のすすめていたものでもある。


 魔女党はなくなっても、やはり下地は強いのか。



「……そんなのに乗る子が、多いの?」


「多いわけでもないけど、少ないってほどでも……。何か変な宗教みたいなノリでやばそうだと思うんだけどさ」



 説明するエミリはつまらなそうだった。


 多分、ほとんど興味がないのだろう。



 なるほど……。モンスター召喚テロがおさまらないのも、こういう支持派がいるせいか。


 面倒なことになってるもんだ……。



 私が難しい気分で机に座ると、ガラッと教室の窓が開いた。


 校庭に面したそこから、ひょいと入ってくるのは……蛇塚ラブ子。



 彼女は今いち冴えない顔で、自分の席につくのだった。








よろしければ、感想や評価ポイント、ブクマをお願いします!

感想は一言でも歓迎!

あなたの応援が励みになります!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ