その182、久しぶりの登校
インキュバスのことは置いといて……半年ぶりの校舎に、半年ぶりの教室。
何だか妙な気分を味わいながら、私は足を踏み入れた。
「あ……!」
「久しぶり!!」
入るなり、後藤まきめと吉田エミリが駆け寄ってくる。
「半年もどうしてたんですか!?」
「本当に来た……!」
まきめとエミリはそれぞれに言いながら、私の手を取ってくる。
一応、SNSなどで定期連絡はしていたから音信不通ではない。
それでも、こうして顔を合わせるのは半年ぶりだ。
「二人とも、変わりない?」
「自分じゃわからないけど、周りは色々変わっちゃったかも……」
「退学してった子も多いよ」
と、二人は教室を指すのだった。
なるほど……。
そういえば、遅めに登校してきたの割に人数が少ないようだ。
やはり、魔女狩りの暴れた後遺症があったのだろうか……。
するとまきめがそっと耳に口を寄せてきた。
「……あの、黒羽さんは大丈夫ですよね?」
「何が?」
「その……テロとか」
「ああ……。警備がしっかりしてきたからうちは大丈夫よ」
「そうじゃなくって、そっちじゃなくって、その……」
「……?」
どうもまきめはハッキリしない。奥歯に物が挟まったような感じだ。
「――黒羽さんには、変な勧誘とかなかった? 魔女党とかの……」
見かねたように、エミリも耳打ちをしてきた。
「魔女党? そんなものないけど……。まさか?」
「そういうのが、最近多いみたいなの。ガクセーウンドーか、しんないけど、学校にも行かず変なことやってる子もけっこういるんだ」
と、エミリは理解できない、という顔で言った。
確かにSNSで変な主張をしたり、吠えたりする連中も多いけど――
そうか……。
より危険な連中は、SNSで堂々と発信したりせず、水面下に行ってるのか……。
「忙しそうだから、メールとかでもあまり話さなかったけど……。うちでもけっこう揉めたりしたこともあったんだ。ダイノヘイムの子と喧嘩が起こったり」
「何でまた……」
「向こうは遅れてる、いいかげんに卵子オンリーに切り替えるべきだって」
卵子オンリー……すなわち、卵子同士で子供を作ることだ。
いち早く広まった魔法技術であり、魔女党のすすめていたものでもある。
魔女党はなくなっても、やはり下地は強いのか。
「……そんなのに乗る子が、多いの?」
「多いわけでもないけど、少ないってほどでも……。何か変な宗教みたいなノリでやばそうだと思うんだけどさ」
説明するエミリはつまらなそうだった。
多分、ほとんど興味がないのだろう。
なるほど……。モンスター召喚テロがおさまらないのも、こういう支持派がいるせいか。
面倒なことになってるもんだ……。
私が難しい気分で机に座ると、ガラッと教室の窓が開いた。
校庭に面したそこから、ひょいと入ってくるのは……蛇塚ラブ子。
彼女は今いち冴えない顔で、自分の席につくのだった。
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