その181、復学せよと母からの言いつけ
考えればドタバタしていて、色々な雑事に忙殺されていたが――
サキュバス関連の話で世間がやかましいと思っていたところ、
<学校のことで話があるし帰ってきなさい>
と、母から電話があった。
学校か……。考えれば、休学してから半年近く経っている。
「ベルタエルフの協力で、人手不足もある程度回復できたし。そろそろ学校に戻ったら?」
夕食の席で、母にハッキリそう言われてしまった。
「あなたみたいな若い子がいつまでも修羅場や鉄火場で働くのは問題なのよ」
言うなれば、学徒徴兵みたいなものだしな。母の気持ちもわかってしまう。
しかし、勉強……か。
合間合間に勉強をしていたし、魔法はナラカの修行で大きくレベルアップした。
松上少年に少しテストしてもらったところ、予習なしでそこそこの点数。
「でも、他の魔法少女はどうでしょう? みんな学生ですよ」
少女と言われるからには、みんな未成年だ。そんな子が怪物退治である。
「それは、数少ない天才肌の子だわ」
「ですね。私は別に天才ではないですし。でも、それ以外の子も色々働かされているんじゃあないですか?」
「そうね……。でも、学生生活を全部放棄してまで奉仕することではないわ」
「ははは……」
「笑わないで。心配してるのよ」
「……すみません」
母の苦言に、私は頭を下げるしかない。
「……もしかしたら、今の仕事が楽しかった……か、どうかはわかりませんけれど、ちょっと熱中しすぎてたかもしれません」
「自覚があるなら、けっこう。会社としても助かるけど、まだ未成年の娘をやたらにこき使うなんてわけにはいかないの」
「そうですよね……」
「研究施設のほうには、サキュバスやインキュバスの増員もあるから、手は足りるようになるはずです。いつまでもあなたが出張ってはダメ。いいわね?」
「はい……。え? サキュバスはいいとして、インキュバス?」
女性の淫魔に対して、男性の淫魔?
話としては前世から知っている。でも、こっちでは聞かなかった名前だ。
「能力的にはエルフ並だから、あまり贅沢も言ってられないのよね……」
母はちょっと疲れた顔で天井を見上げた。
「あんまり話したい話題ではないわね。とにかく、復学すること。いいですね?」
「……あ、はい」
その勢いに、私はうなずくしなかった。
まあ、緊急措置みたいなものだったし、頃合いとしてはちょうどいいか。
やれやれ、遅れを取り戻すために勉強しないといかんな――
前世で、社会人になってからも学生時代の夢を見たことも思い出す。
大抵テストが近かったりする設定で、
(全然勉強してない、どうしよう……)
と焦って目を覚ますことが多かったけど。あれはどういう心理が影響してたんだろ?
てなことを思いつつ、松上少年に連絡してから机に向かった。
こちらの世界で得られた良いものの一つとして……。
魔法を修行するために必須の瞑想法。
あれの応用で手早く集中的に勉強ができるというのがある。
瞑想の呼吸法を用いながら机に向かっていると、どんどん知識がしみ込んでくる。
忘れかけていた知識も補強されるし。
2時間ほど自習してから、ふとインキュバスのことを思い出す。
ちょっとした小休止のつもりで、ネット検索してみたのだが……。こら、あかんわ。
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