その18、ヒーロー活動は疲れるのだ
戦い終わって……?
まずい!!
私は立ち上がりながら、イメージする。
あの蜘蛛を一撃で倒せる魔法!
そして浮かんだのは――
「はっ!!」
私は気合を放ち、紫の炎をまとった跳躍。
空中に浮かぶと、回転しながら蜘蛛へと突進。
螺旋状の回転だ。
グルグルと景色が回る、回る、回る……。
けど、目標はハッキリと、淀みなく。
――黒翼火炎撃。
名前は適当につけた。
心の中で、叫び私は黒蜘蛛に激突する。
あっという間に真っ黒な巨体を貫き、燃え上がらせた。
「********************************……!!!」
大きな腹に穴のあいた黒蜘蛛。
空に向かって吠えながら、紫の炎に焼かれていく。
やば……。
これって、火事になるかな?
私は内心焦ったけど、その心配はなかった。
黒蜘蛛は消えていく同時に、炎も自然におさまっていく。
完全に消えたのを確認してから、私は空中に戻る。
――移動魔法陣。持続時間限界までわずか。
おっと、いけない。
ボヤボヤしていると帰りのワープができなくようだ。
私は紫の魔法陣を呼び出す。
「あの……!」
さて帰ろうかという時だった。
後ろから飛んでくる可愛い声。
振り向くと、リリアンゆみかが魔法の杖を抱きながらこっちを見ている。
「助けてくれて……ありがとうございます」
律儀に礼を言って頭を下げるゆみかちゃん。
ううーん。ヒロイン力高ぇー……。
私はつい、ええんやで? と言い返しかけてやめる。
ただ、背中を向けながら軽く手を振るのみ。
ちょっとキザっぽいかなあ?
でも、ダークヒーローっぽいこの姿にあってるでしょ。
そして私は魔方陣をくぐる。
もう一回ステルスを使って人気のない場所に。
「やれやれ、やっとかたづいた……」
私は言いようのない疲労感と共にため息。
お昼食べる時間あるかなー?
と、思いつつ歩きだして……――。
「う」
急に、目の前が真っ暗になった。
足元に力が入らず、へたりこんでしまう。
いかん、まずい、やばい……。
これ、マジでダメなヤツだ。きっと。
そう思いながらも、体は言うこと聞かずに横倒しに倒れてしまう。
で。何もわからなくなってしまい。
気づいた時は、病院のベッドだった。