その178、恋愛は自由である
田中くんとケライノはドタバタしながらも、訓練を続けていたようだ。
負荷リングをつけた田中くんを、ケライノがボコボコにしていることが多かったが。
それでも――殴られても蹴られても、田中くんは元気だった。
青痣だらけの顔でも、翌日には元通りになってしまう。後遺症もゼロ。
回復魔法をプラスしても、あきれるほどのタフネスと回復力だ。
「見ているほうが怖くなってくる……」
「よくあんなのが続くもんだよ」
警備員たちは、かなり引いていつも遠巻きに見ていた。
まかり間違っても、
「一緒にやろうぜ?」
などと誘われるのが嫌だからであろう。
私もあんなマゾ趣味みたいな訓練はごめんだけどな。
下手すりゃケライノが一方的に甚振っているようにさえ見える。
だが、日を追うごとに田中くんの動きはシャープになってきたようだ。
攻撃防御のバランスが整いだし、今まで一方的だったケライノとやり合えるように。
というか、アレ負荷リングつけてるんだよなあ……?
私も試しにつけてみたが、効果はありそうだがちょっとの訓練で疲れ果てる。
下手すれば、そのまま寝込んでしまいかねないだろう。
「これはかなり期待できそうですな!」
映像越しに訓練する二人を見ながら、松上少年は嬉しそうだ。
「しかし、アレって他の人ができるのかしら?」
「無理でしょうね。脳内麻薬でもドバドバ出ない限り」
「それって、田中くんがそうだってこと……?」
「医学的に調べてはいないですけど、あり得るかもしれませんね。人間は快楽が伴うとどんな無茶でもやるもんですから……」
と、まあこんな調子で生合叩く見守っていたけれど。
訓練の合間に、ケライノはやたらと田中くんに引っ付くようになった。
ベタベタすると言ってもいい。
田中くんは拒否しきれず、いつもヘドモドしている。
好意というよりは、ケライノのアレはほとんど性欲だわなあ……。
今までの日本では魔女党の弾圧のせいで、男性向けのエロスが壊滅状態だった。
だから、男の子はあんまりそういうものに免疫がないみたいである。
というか、男性の性欲イコール悪徳という風潮さえあった。
それは前世の世界でも、ある意味同じかもしれない。
ケライノには気の毒だが、こりゃ長期戦になるだろうな。
と、思っていると――
ある日の朝、私は偶然田中くんが寝泊まりしているフロアを歩いていた。
すると、部屋のドアが開いて全裸の田中くんがフラフラ出てくる。
何だか夢遊病者みたいで、頼りない足取りと顔つきだった。
「ちょ……! 服着なさいよ!」
私がたしなめたが、聞いちゃいなかった。いや、聞こえてなかった。
そのままフラフラ廊下を歩いて行って、階段からすっ転ぶ。
ドタドタと面白くないコントみたいな光景だった。
田中くんはシンボルをむき出しにしたまま、下でひっくり返っている。
「何をやっとるんだ……」
仕方ないので介抱してやる。幸い少し体を打っただけでケガはない。
それでも、頭とか打っているかもしれないので、人を呼んだ。
すぐに治癒と医療用サーチ魔法のおかげで、大事はないとわかる。
「君、何やってんの……。外だったら警察沙汰だよ」
「スミマセン……」
青菜に塩状態の田中くんを部屋に送っていくと……。
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