その177、アマゾネス登場
「よう」
そう言って気安く入ってきたのは――ショートパンツに半袖シャツを着た筋肉娘。
アマゾネスの、ケライノ……。
「お前か……」
汗をタオルを拭いていた田中くんは微妙な顔をする。
「そう嫌な顔することないだろ、お前の訓練に付き合ってやるんだぜ」
「僕が呼んだんです」
「なんですと?」
松上少年の言葉に、田中くんは目を見開いた。
「君相手に魔法と格闘訓練ができる相手だからね。筋トレばかりでも困るし」
「そりゃあ、助かるけど……」
「お前、頑丈さはピカイチだけど、技のほうは力任せだからな」
「高校の授業で柔道を習ってたぞ」
ケライノに反論する田中くんだが、そんなものじゃ足しになるまい。
事実戦闘の際に、柔道の技なんて欠片も出なかったし。
とはいえ、このアマゾネスの力任せの脳筋であるのは同様だが。
しかし、これをきっかけにコネができれば助かるな……。
「では、休憩の後さっそくにやってみてください」
「ええ?」
「早いほうがいいでしょ」
「そうだけど……」
松上少年がせかすが、田中くんは気の進まないようだった。
「何だ、オレとじゃ不満か?」
「やりにくいネ」
ケライノが挑発するように言うと、ストレートに返す田中くん。
「おいおい。まさかオレが人間の女と同じみたいにやわだって思ってんのか」
「そういう問題じゃない」
「はァん?」
ハッキリしない田中くんに、ケライノは急にニタリと笑うと、
「おし。じゃあ、オレが夜のほうで相手してやる。経験しとけばやりにくいとか、青臭いこと言わなくなるだろ」
「……夜?」
「とぼけんなよ」
ケライノは田中くんに腕を絡ませ、その胸を押し当ていった。
おいおいおい……。
私は思わず松上少年を見る。
「学生の身分で問題あるんじゃない……?」
「アマゾネスの彼女なら、万が一の時も責任うんぬんは言いませんよ」
「そういう問題かなー」
松上少年はあっけらかんとしている。まあ、中身はオッサンだしな……。
しかし、この二人がくっつくと……。
まあ、それ自体は問題じゃないか? ないな。
「じゃあ、訓練とか任せるので、二人でがんばってください」
「あんまり羽目外さないようにねー?」
松上少年はさっさと退室していくので、私も後に続く。
「ちょ、ちょっとちょっと!?」
「いーだろ、仲良くしよーや? 悪いようにはしないって」
あわてる田名くんをケライノはガシッと捕まえる。
「ちょ、当たる当たる!」
「当ててんだよ、タコ」
アホな会話を聞き流し、私たちはトレーニングルームから去るのだった。
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