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172/301

その172、避難は追放か?



 かくして。



 テロリスト襲撃というトラブルはあったが、男の子たちは全員無事に異世界に渡れた。


 ゲートの向こうでは、施設の前に巨大な飛行艇が用意されており、5千人全員が乗船。


 飛行艇のサイズは、クジラというよりも巨大な島みたいであった。



 私や松上少年も最後の見送りとして同乗することとなる。



「皆さん、ようこそダイノヘイムへ。私たちは、心より歓迎いたします。」



 ゆったりとした船室には大広間が用意され、いくつも丸テーブルが並ぶ。


 テーブルの上には、疲れがとれるベルタエルフの軽食がされていた。


 食べて飲むと、ホッと安心できる味。



 男の子たちもみんな安堵した表情で食事を楽しんでいる。



「何はともあれ、良かったということかな?」


「今回はね」



 松上少年は肩をすくめる。



「次は別のゲートから移動しますが、今度も襲われる可能性が高いですし」


「やっぱり、情報がもれてる……?」


「間違いなくね。多分政府関係者か、それに近しい人間から……」


「なんてこったい……」



 何とも悲惨な状況に、私は眩暈めまいがしそうだった。



「こういうデモをしている連中もいることですし」



 と、松上少年は手の平サイズの無音動画が展開させた。



 それには、



『犯罪者予備軍が追放されるのをお祝いします』



 というプラカードがいくつも並んでいる。



 また、



『日本人に野蛮な男は要らない』



 というプラカードも。



「な、なに、これ……」



「なにって、見たまんまですよ」



 憮然とした顔で松上少年は首を振る。何かを諦めたように。



「男子がダイノヘイムに送られることを歓迎する声です」


「それにしたって、これは……。彼らはテロの標的にされてる被害者なのに」


「でも、そうだとは認識しないのもいるんですね、これが」


「無茶苦茶だわ……」



 こんな主張がみんなに受け入れられるとしたら、もう駄目だ。



「インターネットではさらにすごいことになってます」


「見たくないわよ……」


「まあ、あまり精神的に良いものではないですねえ」


「だけど、こんなことってある?」


「そりゃあねえ。ナチスやらアメリカの日系人収容所やらをかんがみれば……」



 起こってしかるべきことだったのかも、と松上少年は皮肉げに笑った。



「これ、みんなは……?」



 思わず私は周辺の男の子たちを見る。



「まあ、ネットはつながっていますし、いずれは見る……でしょうね」


「日本に愛想尽かしたりしないかな……。私なら……」


「そこですよ」



 松上少年は困った顔で頭を指で押さえた。



「こんなことをする、あるいは許容する祖国なら、もはや未練はないとなりかねない。まさかこれほどのレベルだったとは……考えが甘かったかなあ……」


「……こんなのは、過激な一部、だよね……」


「そう願いたいですな」



 しばしの間、私たちは黙り込んで動画を見つめるばかりだった。









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[一言] ひとまず強敵は倒した、男の魔法使い候補達の脱出も成功したが…… 脱出した彼らが日本に愛想を尽かしただけなら良いのですが、松上くんの計画している「男達を煽って魔法使いに仕立てあげる」計画を利…
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