その170、久々の戦いに昂る
<警告。攻撃的魔力接近中――>
ヘルメットに響く警告。それを受けてから、私は反射的に身をかわした。
私がいた地点に、黒い影が音もなく着地する。
「お前は……!」
「ふん……」
思わず叫ぶ私を鼻で笑ったのは、鋏のような籠手をつけたあの女だった。
以前は、田中くんに助けられたけど……。
「今度は逃がさん」
鋏女は籠手を構え、ゾッとするような目つきでこっちを見てくる。
私は、ただ無言で構えた。
敵の殺気と魔力がひしひし感じられる。
レベルアップしただけ、より鮮明に相手のやばさがわかるようだった。
かと言って、逃げる気はない。
こいつは、逃げたら逃げた分だけ執着して追いかけてきそうな気配だ。
かなり、『素敵』な性格をしていそうだし、とっととケリをつけた良いだろう。
「特訓でもしてきたか……?」
鋏女は少し不快そうに眉を上げて、腰を落とした。
まあ、実際その通りだ。特訓した。時間にして2年ほどミッチリと。
「しゃああああ!!」
「ふん!!」
相手が構え、疾風のような動きでこちらに飛びかかってきた。
迷いなく、私の急所に鋏を突きこんでくる。
だが、動きは見えた。
私は真正面から片手で鋏を受け止めて、そのまま空いた手で脇腹に叩きこむ。
「ちぃ……!」
殴られた鋏女は転がって、距離を取ったかと思うと背中の翼を広げた。
何をするかと思うと、翼が大きく羽ばたく。
強い風と埃、それに魔力が伴って押し寄せてきた。
ヘルメットで視界をカバーしているから埃は平気だ。
だが、それらは魔力を受けてスーツの上に叩きこまれてくる。
小さいが散弾みたいな感じだった。
ダメージはほぼないが、動きは牽制されてしまう。
私がつい顔をかばった途端、鋏女は横に飛んでいた。
そうかと思うとたちまち跳躍して、真上から鋏を打ち込んでくる……!
「今度は、そう簡単に……!」
私は鋏をよけながら、カウンター気味に装甲をまとう拳を女に叩きこんでやった。
鋏女は悲鳴もあげずに空中に逃れ、翼を広げて回転する。
と、翼が巨大な刃物のようになって襲いかかってきた。
魔力で強化され、スピードを伴い、見るからに寒気のするような攻撃だ。
「この……!」
私は腕の装甲で受け止め、そのまま身を倒してスライディングした。
で――跳躍した鋏女の真下に、もぐりこみ、
「おりゃああああ!!」
腹にめがけて、螺旋状の魔力をまとうパンチをめり込ませた。
「が……!?」
鋏女は吐血し、べしゃりと地面に倒れ伏す。
うむ……。どうやら演技ではなく、本当にダメージを受けたようだ。
これを逃す手はないぞ……。
私は女の翼をつかんで、そのまま振り回して地面に叩きつけた。
翼が少しちぎれ、女は地面に顔面をぶつけて痙攣する。
やったか……? いや――……。
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