その167、田中家の騒動
男子たちの保護要請については、上のほうでも色々あったようだ。
何しろ、先の大トカゲ魔女狩りのせいでだいぶ被害が出たからな……。
その上にテロの連発、プラス現政権を攻撃する動きもマスコミで活発。
魔女党のやった不祥事は濡れ衣だ、誇大広告だと主張する自称・文化人も。
まあ、旧政権の時に好きかってやってきたご仁たちである。
これらを抜きにしても、保護要請はつまり、
『日本はテロから国民を守れません』
と言っているにも等しい。
事実、今のままでは守れないのだ。
あちこちに敵がいるし、一般国民にも賛同者がいる状態では。
それでも、狙われている男の子たちの安全を考えると……。
「頼むしかないわけだよねえ……」
「そうなりますなあ……」
私と松上少年はうなずき合う。
「色んな意味で資質のある男子たちを狙うテロは続くでしょう。なら巻き添えを恐れる人も出てくるというもの」
男子が厄介者扱いにされるわけか……。まったく嫌な話だ……。
何やかんやで、魔法資質者の男子たちは、ベルタエルフの保護を受けることとなった。
政府の動きとしては、厄介なものを追い払うという感じだ。
まるで難民……。
調査の結果によると、とりあえず魔力が認められた男子は全国でひとまず5千人。
実質はもっといるだろうと思われるが、そこまで調べが進んでないようだ。
また、
「年齢とか体質的に、確認できていない可能性もあります」
ということだった。
何らかの作用で魔力にロックされている状態か、低年齢のためまだ未覚醒か。
詳細な検査をすればわかるのだけど、今となってはあまり大っぴらにできない。
「向こうで学校を開けるように頼んでみるよ」
ヅカテ氏はそう言ってくれた。
ベルタエルフは、そのことに別段気にすることはないようだ。
「まあ……亜種とはいえエルフに魔力で対抗できる人間はそういないですからね」
松上少年は苦笑するばかり。
そして、だ。
私たちの仲間である田中北吉くん――彼にも、保護要請があった。
これは本人ではなく、彼が魔法少年だと知った家族が、
「未成年ですし……。安全のために……」
と、願い出てきたものらしい。もっともな話である。
しかし、
「仲間が必死になってるのに、俺だけ逃げるなんできないね」
そう言って、家族と喧嘩になり家を飛び出してきてしまった。
「まあ、ご家族の言い分がもっともなんですよねえ……」
「だよねえ……」
モンスター退治の協力者としても、彼はもう欠かせない。
けど、家族は息子に魔法の力があるといっても受け入れ切れてない様子。
あくまでも、平凡な高校生だという認識のようだった。
そうなると、さんざん戦ってきた自負のある田中くんはますます反発し、
「大人だけじゃなく、同じ高校生の女子だって駆り出されることもあるんだ。ますます逃げるなんてできないネ! ダメだって言うんなら絶縁してくれ!」
それはさすがに言いすぎだし、やりすぎだとうちの両親に頼み、仲裁役をお願いする。
これにより、何とか田中家の断絶は阻止できた次第。
それにしても、田中くんは熱い男だったんだなあ……。
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