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165/301

その165、誘惑を振り切るか?



「まあ、そのへんは恋愛の自由ということで」



 気を取り直したように、松上少年は愛想よく言った。



「結婚やら養子縁組をしたとしても、後々こちらの要請で男性たちに協力願うこともあるかと思われます。その時も、『ご協力』願えますよね?」


「そうですね……。故郷に時々帰省されたいと思う人もいるでしょうし」



 これに対して、コマサはあまりやる気のない対応だった。


 ひょっとして……そもそも帰ることを想定していない?



「あとですね。保護された男性の中には、非友好的だったりする人もいるかと思います。その辺りもどうか噛み砕いておいてください」


「ええ。もちろん。慣れない環境で心の荒れる人もいるでしょうから」



 こっちは、自信ありげにコマサはうなずいた。



「では、こちらは資料をまとめたものです。どうぞご確認を」


「はい」



 松上少年が資料をまとめた冊子を渡すと、コマサは静かに受け取る。


 そして、しばし冊子を黙読していたが、彼女の表情から思考は読みとれない。


 ただ、非常に熱心に読んでいることだけはわかった。



「確認いたしました。仲間とも念入りに協議しておきます」



 それから、いくつかの確認などをしてから、その場はお開きとなった。


 あらかじめ段取りをつけていたとはいえ、けっこうアッサリとしている。



「うまくいきますかね……」



 帰りの飛行艇で、私はヅカテ氏に言ってみた。



「まあ、保護だけは確実だと思うよ。彼女らは、男を大切にする」


「大切に、ね……」



 私は思わず皮肉めいた笑いが漏れてしまう。



「行ったはいいけど、そのままにならないと良いけど……」


「まあ、何だ。そのへんは個人の自由だろ」


「そうなんですけど」


「向こうへ預ける前に、色々面談などしておきましょう」



 腕を組みながら、松上少年は言う。



「気休めにはなるか」


「そうでもないですぞ」


「え?」



 反論され、私は松上少年を見た。


 少年の顔には、少し何かをたくらむような笑顔が浮かんでいた。



「黒羽さんは、保護された男子がみんな骨抜きになると思ってますな」


「それは、まあ……」


「確かに、そういう人も出るでしょうが、日本のことをまったく忘れるほどにはなりにくいと僕は思いますがね」


「……理由は?」


「不信感ですかね」


「それは……」


「この世界で、この日本で男性が女性に対する感情は総じて良くないということです。何しろ魔女党が暴れまくった10数年でしたからねえ。女性の好意や善意に対して、素直に受け入れられない下地があるんですよ」


「でも、それは日本……国への不信感でもあるんじゃない?」


「ええ。だから、いやらしい手段だけど、そこに付け込ませていただきます」


「……どうする気?」


「煽りましょう。君たちには力がある。努力すれば報われる。時代は変わった。だから今こそ君たちに出番だと――」


「……」



 派手な身振り手振りの松上少年に、私はちょっと20世紀の独裁者を連想した。









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