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162/301

その162、ヅカテ氏の『あて』



 世の中は、ザワザワとしていた。



 先日うちの研究施設を襲ったテロリストは、各所でモンスター召喚テロをしている。


 調べてみると、どうも発見してもわざ見逃す警官や市民もいるらしい。


 もっとも、モンスターのほうは壊すものや襲う人間が選ばないのだ。


 召喚の呪符を隠して、自分の住居を壊されたおばさんがニュースに出ていた。



「協力したのに!!」



 と、喚いている姿は見苦しいことこの上なし。


 自分の家じゃなきゃ壊されてもいいのか?



 男子のいる家庭では、保護を訴える声も多かった。



 逆に、



「家にいられると、こっちまで襲われるかも……」



 と、子供を疫病神扱いして施設に預けようとする親も。



「どうでしょう。うちらでこういう子供たちを預かっては?」



 ニュース記事や映像を空中に表示しつつ、松上少年は提案してきた。



「なるほどな。しかし、同時に襲われる可能性も高まるが……」



 どうするね? と、いう風にヅカテ氏は私を見る。


 ハッキリ言って……保護できる余裕はなかった。八郎くんだけで手いっぱいだ。



「保護はしてあげたいけど……どうかなあ。無理かなあ」



 とにかく、人も予算も場所も足らない。


 傾向からして、テロリストが男子を中心にを狙っているのは確実だ。



 なればこそ、最優先で保護はするべきなのだけど。


 訓練でパワーアップしても、ぜんぜん強くなった実感はない。



 こんな事態になると、むしろ余計に無力感が強まった気がする。



「魔法使いから男の子を守れて、保護できるような人材かあ……」



 そんな都合の良いものは存在しないとは思うけど――



 と、



「……もしかすると、当てがないでもない」



 ジッとニュース記事を見ていたヅカテ氏が、硬い声でそう言った。



「ええ?」



「ホンマですか?」



 私と松上少年は顔を見合わせ、ヅカテ氏を見つめた。



「ある意味、かなりやりにくい連中ではあるが……魔力にも長けているし、男子を善意で保護してくれるとは思う…………」



「まさか、サキュバスとか言わないでしょうね?」



 私は言ってから、それも悪くないかな? と、ちょっと思ってしまった。


 サキュバスならばハイレベルの魔法を操れるし、強い。その上比較的協力だ。



 ちょーっと『つまみ食い』をするかもしれないが、許容範囲ではなかろうか?


 年頃の少年たちにとっては、むしろ嬉しい状況かもしれない。



 無論嫌がる子もいるだろうけど、あくまで全体の傾向として。



「いや、ベルタエルフだ」


「エルフ? でも、エルフは……」


「いや、エルフ属でもちょっと系統の違う種族なんだ。エルフの近縁種だが、女しかいないという種族でね。地球では、ヴィルデ・フラウと呼ばれている」


「あああ……」



 何かを察したように、松上少年が膝を叩いた。



「普通のエルフとどう違うの?」


「彼女らは女しかいないから、人間の男をさらって夫にしたり、人間の子供を養子として自分たちの国に連れていくんだ」


「え」



 そりゃ、もしかして誘拐じゃないか……?


 私の視線に、ヅカテ氏は困ったように顔で肩をすくめるのだった。









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