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その160、訓練の終わり



「頃合いか……」



 管理人に言われたことを反芻はんすうしながら、私は息を吐いた。


 呼吸を整え、魔力を体内で錬成し、全身の筋肉、細胞を把握する。



 そして、魔法リングをはずし、曇天の空に向かって飛んだ。


 体が、軽い。はやい。



 拳を握ると、力が充満していくのがわかった。


 魔力の障壁が多重に体を取り巻き、防御力を強化している。



「――魔力展開、集中……。キック!!」



 そのまま、紫の雲海に向かってロケットのようにキックしていった。


 魔力の嵐が雲を吹き飛ばし、一瞬周辺の雲は全て吹き飛び、紫の空が露わになる。


 思えば、スーツの補助なしで必殺技使ったのは初めてだな。



「けっこう、いけるようになったかもしれない……」



 拳を見つめながら、雲のない上空で私はつぶやいた。


 だんだん、周辺をまた雲が覆っていく。



「――そうだね。ぼちぼち帰るか」



 自分が納得できたし、ひとまずはこれでいいんじゃないかと思える。


 私は一人でうなずいて仮住居へと降りていった。



「帰るんだね」



 住居の前には、複数の段ボールと一緒に管理人が立っていた。



「ええ、いけるようになったと思う」


「うん。俺もそう思う。あ、これは余った食料やら水ね。全部持って帰って」



 管理人は微笑してうなずくと、段ボールを指して言った。



「かわいくないお土産になったなあ……」



 私は苦笑しながら、段ボールを見つめる。


 あっという間な気もするけど、密度の濃い時間だった。


 手鏡に移る私は全く年をとってない。でも、中身はかなり変わったんじゃないかな?



「でも、帰るってどうすれば???」


「心配ご無用」



 管理人が手を振ると、私の前に光るカードのようなものが――


 ああ、あのサラリーマン風の使者にもらったチケットだ。


 チケットはチカチカと明滅して、何かつぶやいているように見えた。



「帰ってから大変だと思うけど、まあがんばりなよ」


「ええ、色々ありがとう。……そういえば、ちゃんと名前を聞いてなかったかな?」


「俺には、名前ってあまり意味もないけどね……」



 管理人はどこか照れたように笑って、



「じゃあ」



 手を振った。



 その時、チケットから鋭い閃光がほとばしった。



「あ」



 声が出た時には、私は久しぶりの我が家……自分の部屋に立っていた。


 後ろには、残った食料品の入った段ボールたち。



 部屋は、前と何一つ変わっていない。携帯で日付を確認したが、同じく。


 何一つ変わっていない状況。



「夢、だったのかもしれない……」



 私は思わずつぶやいて、そっと右の手のひらを上にかざす。


 フッと、私の魔力を濃縮させた光球が浮かび上がった。



 高密度の高魔力。以前とは比較にならないもの。


 夢じゃなかったし、訓練の結果はしっかりと手の中にある。



 でも、まあ。



 久しぶりの家だし、今までさんざん訓練漬けの毎日だったし。


 とにかく、その日はぐっすり眠った。









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