その154、異世界行チケット進呈
それから――
やれることもなくなり、後を松上少年などに任せ私は帰宅した。
私が戦力として使いにくくなっていることを、両親はどう思うか。
まあ、荒事は専門家に任せて後方支援しとけ、だろうな……。
私でもそう言う。
最初は魔女狩りなどの特殊性ゆえに私ごときが出張るしかなかった。
けど、もう相手は自然発生のモンスターではなくなっている。
悪意と知恵を持つ人間……魔法使いなのだから。
ただなあ。
戦力うんぬんで言うと、確かに硬く強い田中くんやチートな八郎くん。
そして、頭脳の松上少年などみんなよくできる。
特に荒事では、打たれ強くて回復力の速い田中くんが非常に頼もしい。
でも、だからと言って。
それで、後はおまかせ、ハイサヨウナラとはいきにくいわけで。
やっぱり人手が足らないし、私なんかでも欠けると損失が大きい。
だからこそ、坂本ゆみかの応援を頼んだのだけども……。
まいったなあ。
松上少年は、
「坂本さんの装備をパワーアップさせたいですなあ」
と、ヅカテ氏と共に何かするようだった。
もしかすると新しい杖か、それとも使い魔でもあげるんかな?
私だけではなく、全体の強化が必要とされちゃっている現状だ。
さあ、どうしたものだろう。
「……?」
部屋で漫然と考え込んでいた私は、何かの気配を感じてワンドを手にした。
「出てこい」
そう言った途端、空気は変わった。
時計の針が止まり、世界から『動き』が消失していく。
これは……。
「あああ。待った、待った」
何やらドタドタとあわてた声で現れたのは、あのサラリーマン風の男だ。
「またですか……」
「いやあ、スミマセン。たびたび」
男は衣服を払うようにしながら、頭を掻いて所在なさげにしている。
「もう、慣れましたけどね……。で、今度は何を持ってきてくれたんです?」
「えーと……。あ、これです」
男が出してきたのは、何かクレジットカードみたいなものだった。
銀色で、表には丸にアーモンドみたいな形のマーク? ……これは、眼だろうか???
「ナラカの第1階層にいける定期チケット、だそうです」
「? ナラカ? それ、なんです?」
「いわゆる、異世界ということになりますけど……。あなたがたの知るダイノヘイムではないです。また別の空間にある世界ですな」
「なるほど。そういうのがあっても不思議じゃない、か。それで……」
私は銀のカードを受け取りながら質問しようとすると――?
ボン!!
と、何か閃光が目の前に広がった。
かと思うと、私は自分の部屋からまったく見知らぬ場所に立っていて……。
「ここは……」
空には紫の曇天が無限に広がり、何も見えない。
周りは、草も木もない無限の荒野……。あるのは、石ころと土ばかり。
そう、まるで……地獄みたいなところだった。
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