その153、パワーアップ
「襲撃してきた連中を見るに、どうやらキマイラ型の魔法使いが多いですなあ」
様々なデータを空中に表示しながら、松上少年は言った。
確かに。
蟹とコウモリやら、蜂とハエジゴクやら。亀とウツボやら、猫とヤモリやら。
「なかなか危ないことをしてますぞ」
不安定な魔力を示すデータを指しながら、松上少年は言った。
「連中は魔力そのものは上がっていたが、それを使いこなせていたかは微妙だな」
横でコーヒーを飲みつつ、ヅカテ氏の意見。
「大よそ、魔法使いは自分の魔力性質を表す『型』がある。使い魔にはその特徴がよく現れる。松上くんなら蟹。黒羽さんならオオガラスのようにね」
「それは基本的に変わることはないし、変えるべきものではない。しかし、これに別の要素をプラスして、より強化するというやり方もある。今回のテロリストがそれだ。大体モンスターというのは、普通の生物が複数合成したような姿が多い。このシステムを応用しているんだ。自分の魔力+別の魔力。最低でも倍にはなる。これは……そうだな。こちらの科学技術などで例えるならば、サイボーグのようなものだ。魔術サイボーグだね」
「うーむ。それって、やっぱり……」
「ああ、ダイノヘイムの技術だろうね。それもあまり穏やかではないタイプの」
「まいったなあ……」
私は気が重くなり、壁にもたれかかってため息。
あちらの魔法技術は進んでいる。それが悪用されて牙をむいてくるとなると――
「言っちゃアレだが、こんなのが相手では今に限界が来るな」
ヅカテ氏は困った顔ながら、ハッキリ明言した。
「それはとっくに来てますよ」
「うん。特に顕著なのが君だね」
「え?」
わたし? と、私は自分を指さしてヅカテ氏を見た。
「うん。君の魔法スーツ装備は独自技術で非常に優れているんだが……」
「だが……?」
「安定しており、完成度が高い分、拡張性は低い。強化や装備変換が非常にしにくい」
「あらら……」
「そうなると、だ」
「方法は二つです」
と、松上少年がⅤサインのようなものを突き出してきた。いや、Ⅴではなく2つか。
「一つは、スーツ一式を一から作り直すこと。もう一つは、あなた自身のレベルアップ」
なるほど……。
「それで、あなたのおすすめは?」
「うーん……」
尋ねると、松上少年とヅカテ氏は困った顔を見合わせあった。
「何というか……。そのどっちもどっち? かなあ」
「スーツはそれそのものが未知の魔法技術の塊だから、どうにもこうにも……。で、君自身のレベルアップは時間がどれくらいかわかんないと――」
「……」
「漫画やゲームならさくさくレベルアップするとこですがね。現実はそうはいかんわけで」
「1年2年と時間をかければ、黒羽さんは優秀だし、確実だが……」
「ことは急を要する、と」
「そういうこと」
「……」
これは、困った。
ここにきて、私はお荷物になるとはなあ……。いや、別にええねんけど……。
……。
良くはないか。
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